底辺ジョブ【清掃師】で人類史上最強~俺はドワーフ娘たちに鍛えてもらって超強力な掃除スキルを習得する~

名無し

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第二章

清掃師、対策を講じる

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「んー……こっちかな」

 今までと同じく、俺が正解のルートを選んで洞窟内を登り始めたわけだが、もうみんなすっかり信じてるのか誰も異論を唱えなくなった。

 それはそれで、俺が何か特殊な力を持ってると思われそうで怖いな。変に目立ちたくもないし、次は何か対策を立てておくとしよう。

「凄い。サミットメーターを見てもホント順調だから、あたしたちまた正解の道を選んじゃったみたい……」
「さすが、幸運の女神を妹に持つアルファ君だっ……! それに比べて……」
「ロディお兄ちゃん、なんでわたしを見るのよ? どうせまた愚妹とか言うつもりでしょ……」
「よくわかったなっ!」
「うー……!」
「うふふ、シェリーさんも未熟なリーダーさんをしっかり支えてるわけですしぃ、充分幸運の女神さんですよお」
「えへへ……」
「ミュ、ミュートッ、未熟なリーダーとはなんだ、失敬なっ……!」
「「「はいはい」」」
「ぬ……ぬうぅっ! そんな小ばかにするような目で私を見るんじゃなああぁいっ!」
「あはは……」

 相変わらずの空気だが悪くはない。しかしそんな良好な雰囲気であるにもかかわらず、どうにもが付きまとってるんだよな。これは出発前にも薄々感じてたものだ。

 お、胸ポケットもざわついてるみたいだし、彼女たちからも意見を頂戴するとしよう。

「おお、アルファよ、お主も感じたのではないかの?」
「ああ、マリベルたちもか」
「うむ。それも今朝からじゃ」
「……」

 じゃあ、やっぱり朝食のときにスパイがロディの発言を聞いてて、ガーラントたちに俺たちの現状が伝わった可能性が高そうだな。となると、これから登頂させまいと妨害してくることも普通にありうる。

「アルファどの、なるべく気を付けることだ」
「ああ、カミュ、そうさせてもらうよ」
「ガンガン不埒な輩をあしらってくださいましね、アルファ様っ」
「あはは、もちろんだよ、ルカ」
「ユリムのためだけに頑張ってくだしゃい、アルファしゃんっ」
「が、頑張るよ、ユリム」
「「「ユリムッ……」」」
「こ、怖いのれしゅうー」
「……」

 ポケット内では俺たちより一足先に戦闘が発生したらしい。



 ◇◇◇



「じゃ、じゃあ……あのの言ってることは本当で、ゴミ拾いのアルファってやつが神がかってるってことなのか……?」

 登山者ギルドの一角にあるテーブルを囲んでいたのは、ガーラントら《ホーリーグレイル》の者たちと、アルファたちについてよく知っているというレイラとクエスの二人組だった。

「ああ、そうさ。『アバランシェ・ブレード』の自然現象まで払いのけた男だからね」
「うんうん。みたいだよ?」
「……い、いくらなんでもバカげている……」
「リーダーに同意ぃ」
「まったくです。こんなの相手にする必要なかったのでは?」
「「はあ……」」

 ガーラントたちの呆れ果てた様子に対し、レイラとクエスがお返しとばかりに溜息をつく。

「あっそう。あくまで信じられないって言うならこれでお開きにするかい? あたいらは一向に構わないけどね」
「僕も――」
「――い、いや、待て、待ってくれ。確かにバカげてるように感じたが……そういえば思い当たる節はある。そのアルファとかいうやつに、俺は触れられてもいないのに手を払いのけられたことがあって、一体どういうことかと思っていた……」
「リーダー……大丈夫かぁ?」
「気のせいでは? ガーラントさん」
「いや……ダグラス、メリル。これは現実だ。実際に俺たちは追い詰められてるしな。パシリのロディなんかになんとかできるわけもないと思ってたが、これでようやくわかった。アルファっていうゴミ拾い野郎が裏で糸を引いてたってわけだ……」

 すっかり目の色が変わったガーラントたちの様子に対し、レイラとクエスが顔を見合わせてニヤリと笑う。

「そ……それでお前たちの望みはなんだ? レイラ、クエスとやら」
「簡単なことさ。あたいらをパーティーに入れるだけでいいよ」
「そうそう。ジェイクも含めて、ね」
「ジェイク……? ま、まさかあの狂人か」
「そうそう。ダメかい?」
「いや……別に構わないが……」
「リ、リーダー、それ本気で言ってるのかぁ?」
「ガーラントさん……正気ですかね?」

 信じられないといった顔で立ち上がったダグラスとメリルに対し、ガーラントが気まずそうにうなずく。

「仕方ないだろう……。だが、無条件で受け入れるというわけにはいかない……」
「ま、そうだろうね。もちろんこれは仮契約みたいなもんさ。もしあたいらが本当にアルファたちを食い止めることができたら、正式なパーティーメンバーとして受け入れてもらうよってことでっ」
「そうそうっ」
「「「……」」」

 ガーラントたちはしばらく苦い顔を見合わせて何やら小声で呟いたあと、レイラとクエスに向かって小さくうなずいた。

「わかった……レイラ、クエス。そっちの話に乗らせてもらう」
「よしっ、そうと決まったら善は急げだよっ」
「だねぇ」

 レイラとクエスはしてやったりの表情で笑い合うのだった。
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