底辺ジョブ【清掃師】で人類史上最強~俺はドワーフ娘たちに鍛えてもらって超強力な掃除スキルを習得する~

名無し

文字の大きさ
59 / 61
第二章

清掃師、間違える

しおりを挟む
「アルファさん……大変言いにくいのですがぁ、見たことのある個所が散見できるのでループトラップであることが濃厚ですねぇ」
「そ、そっか。間違えたみたいだ……」

 翌朝、第二セーブポイントから幾つかある洞窟を選んで出発したわけだが、そこは明らかにループしていることがわかる構造で、ミュートが似た箇所を指摘してきたことで発覚した。

「みんな……ごめん……」

 わざとらしさを払い、本気で落ち込んでるように見せかけるのも忘れない。

「い、いやっ! アルファ君、たまには間違いだってある! 気にするなっ!」

 ロディが俺の肩を叩いてくるが、怒ってる感じじゃなくてむしろ安堵したような表情だった。まあ今日を入れてあと六日も猶予があるわけだから急がなくていいっていうのもあるんだろう。

「へえ、アルファが間違えるなんて珍しいね。むしろ、今までが凄すぎたから逆に安心したかも」
「わたしもっ」
「アルファさんも人間だったということですねえ」
「……」

 よしよし、これで俺に対してみんな過度に期待するようなこともなくなるだろうし、わざと道を間違えて正解だったと思える。

 というわけで俺たちは来た道を戻り、第二セーブポイントに帰還するとこれから登る洞窟を選び直すことになった。誰が道を選択するかは、どうやらジャンケンで決めるらしい。

「――わあい、勝ったー!」

 ジャンケンにおける負けパターンを払い、俺は偶然を装って意図的にシェリーに選ばせることにした。メンバーの中じゃこの子が一番素直そうだし、俺が不正解の道を選ばないように密かに干渉しても疑問を持たれにくいと判断したんだ。

「んー……こっちかなー」

 よし、俺が何をせずともシェリーが正解を選んでくれた。もし間違ってたら、その道が正解だと思う気持ちを払うつもりだった。

「シェリー、どうしてこっちを選んだのだ?」
「そ、それは……よくわからないけど、なんとなくそんな気がしたからだもん」
「えー、みんなっ! この通り、なんとなくというから絶対間違いだとは思うが、愚妹がやったことだと笑って許してあげてほしい!」
「うー、まだ登り始めたばかりなのに……ロディお兄ちゃんのバカッ!」
「バッ……バカとはなんだ! 撤回しろおぉっ……どわあぁっ!?」

 ロディがシェリーを追いかけようとして滑って転んだので笑い声が上がる。雰囲気は上々だな……っと、マリベルたちが何か言ってるってことで、胸ポケットに耳を近付けてみた。

「アルファよ、つけられておるぞっ!」
「アルファどの、くれぐれもご注意を」
「どうか、どうか気を付けてくださいまし、アルファ様っ」
「アルファしゃん、ファイトでしゅ。ユリムが一番心配してましゅからねっ」
「「「「ムムッ……!」」」」
「……」

 なんだ、俺をそこまで気遣ってくれるのかと感動したが、違った。誰が一番俺を心配してるのかで競ってただけだった……。まあ俺の力は知ってるだろうしそこまで心配するわけないしな。しかも、どうやら尾行してくるのはガーラント一人だけっぽい。

 ただ、オーガがいるとわかってるのにソロで来るわけだし、相当の覚悟、執念をひしひしと感じるから絶対に油断は禁物だ。それに、ガーラントのジョブ【聖騎士】ってかなり厄介なスキルがあるはずだから、本格的に妨害してくるとなると長期戦を余儀なくされるだろう。

「「「「「――おおっ……」」」」」

 やがて俺たちは、上方の出入り口から陽射しが降り注ぐだだっ広い空間に出た。そこまではピッケルの刃が必要なほど傾斜のきつい登り坂を越える必要があるわけだが、そんなことはまったく気にならなかった。洞窟内であるにもかかわらず周囲には背の高い木々が鎮座していて、目を奪われるほど美しいものだったからだ。

「「「「「……」」」」」

 眩い光が飛び込んでくる。遂に……遂に俺たちのパーティー《リファインズ》は『アント・ヘブン』の頂上までやってきた。多分、上空から俯瞰してみたら切り株のような形をしていることだろう。そこは多くの山々に見守られているかのような神聖な場所で、風もほとんどなく静まり返っていた。

 まもなく振動とともに頂上中央に光の柱が立ち、キラーアントよりずっと大きな蟻――ボスのクイーンアント――が出現する。いよいよだな……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

処理中です...