底辺ジョブ【清掃師】で人類史上最強~俺はドワーフ娘たちに鍛えてもらって超強力な掃除スキルを習得する~

名無し

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第二章

清掃師、迷う

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「――以上ですう!」

 たった今、【鑑定師】のミュートによってボスについての的確な説明があった。

 クイーンアントは普通のキラーアントより大柄だが非常に移動速度が速く、強さは『アバランシェ・ブレード』のボスより上のA+。

 脚は至って鋭く粘着質で、一度捕まってしまうと逃れるのは難しく、生きたまま延々と引き摺られるか少しずつ食われるという悲惨なことになるという。

「みっ、みみみっ、みんな、いいかあ! 絶対に捕まってはダメだああぁぁっ!」

 ロディの酷く動揺した声が、ボスに捕まることの残酷さをよく表してる。

「まずはじっくり避けて、焦らずに弱点を狙って!」

 サーシャが声を張り上げる。

 まさしくその通りで、クイーンアントの弱点はキラーアントと違って腹部の下方に見える土色のコアであり、これを叩くには懐に入らなければならないのだが、そのタイミングはボスが忙しなく動き回ったあとにようやく訪れるんだ。

『――ギョルルッ……』

 離れすぎると蟻酸を飛ばしてくるので、ほどよい距離で避けているとやがて女王蟻が動くのをやめた。一旦停止するのは休憩のためというのもあるが、仲間を増やすべく産卵するためでもあるのだ。

「今だよっ……!」

 シェリーが叫び、それを合図にして俺とロディを除くメンバーが一斉に飛び込み、コアに向かって各々攻撃を開始する。

 ここで大事なのが、卵も忘れずに潰しておくことだ。キラーアントだけでなくフライアントも産まれるので、よっぽど攻撃力に特化したパーティーじゃない限り、長期戦に備えてリスクを回避しておく必要があった。

「――ボスさんの体力、もう少しでなくなりますうっ!」
「「「「おおっ!」」」」

 動き始めたら回避に専念し、止まったら卵を含めて攻撃するということを繰り返すうち、次に止まったときには倒せるというところまで追い詰めることに成功した。もうすぐだ――

「――そこまでだっ……!」
「「「「「なっ……!?」」」」」

 やはりというべきか、最悪のタイミングで現れたのはガーラントで、動きを止めたクイーンアントを俺たちから守るように立った。

「ガッ……ガーラント……! 卑怯だぞっ!」
「卑怯だと……? ふっ、それは負け犬の遠吠えというもの。この世は強い者が勝つのではない。勝った者が強いのだっ……!」
「つべこべ言わずにどいてよ! このままだとボスに殺されちゃうわよ……!?」
「はぁ……無知というのは怖いものだな……? 今の俺は【リフレクトシールド】を使用しているというのに」
「……」

【リフレクトシールド】……聞いたことがある。確か【聖騎士】の代表的なスキルで、それが解除されるまで動けなくなるが、防御力が跳ね上がってダメージを一切受け付けなくなり、逆に相手の攻撃を反射することで少しずつだがダメージを与えることができるようになるんだ。

『――ギョルルッ!』

 クイーンが動き出し、ガーラントを攻撃し始めた。つまり、このままだと少量の反射ダメージであっても、クイーンの体力の少なさを考えるとガーラントに先に倒されてしまうことになる。

「じゃ、じゃあ女王のほうをこっちが先に倒しちゃえばいいんだわっ!」
「ふっ……やってみろ。やれるものなら、な……」
「このっ……! き、効かない……!?」

 これはもしかしてか? ボスを攻撃したサーシャが驚きの声を上げる中、ロディがはっとした顔になった。

「けっ……【献身】だっ……!」
「おっ、ロディちゃん、せいかーい」

 ガーラントが不敵な笑みを浮かべる。やはりそうだったか。【献身】とは、見えない紐のようなもので対象と自身をつなぎ、自分にかかっている効力を対象にも適用するというもの。つまりクイーンアントにも【リフレクトシールド】がかかっているため、ダメージをまったく与えることができず、逆に攻撃することでこっちがダメージを受けてしまうということだ。

「【傀儡】も【藁人形】も効かないよー!」

 シェリもお手上げの様子。方向を変えても女王はガーラントを攻撃し続けている。おそらく、やつは【プロボケーション】という挑発スキルも使っている。これによって、ボスのターゲットは死ぬまでガーラントになるというわけだ。

「ボ、ボスさんの体力、極小ですう!」
「……」

 ミュートの発言に心を抉られそうになる。まずいことになった。クイーンアントは現在進行形でガーラントに体力を削られ続けている上、俺たちの攻撃は一切通じない。さらにまずいことに【聖騎士】のスキルの中には【スキルバリア】というものがあり、それは自身スキルに対する他者のあらゆる干渉を受け付けないという効果があるんだ。

 これはすなわち、神スキル【一掃】であっても【スキルバリア】で守られたガーラントとクイーンのスキルに対しては一切手を出せないということを意味していた。

「ククッ……どうする? どうやら、俺の勝ちのようだな。ロディちゃん、それに、ゴミ拾いのアルファ君……頑張れ……頑張れー! ハッハッハ!」

 ガーラントの勝ち誇ったような高笑いが響き渡った……。
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