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第二章
清掃師、再び選択を迫られる
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「……」
タイムリミットはもうすぐそこまで迫ってきている。そんな中、俺は苛立ちや焦りといった雑念を【一掃】してとにかく集中した。ガーラントの仕掛けたトラップは秀逸だ。簡単には破れない……。
おそらくジェイクたちの入れ知恵もあったんだろう。スキル自体も、その中身も【スキルバリア】があるので【一掃】で払うことができない。ガーラントやクイーンアント自体を払おうとしても、解除されない限りそこから動けないというスキルの仕様を破れないので通用しない。ダメージ自体もスキルの一部なので弄ることは不可……。
やつはそんなことまで視野に入れているんだ。本当によく考えているし、【聖騎士】がいかに防御に特化したジョブなのかがよくわかる。だが……どんな賢明な思考も、優れた仕様も、神がかったスキルの前では塵と化すんだ。それを今、見せつけてやる……。
「――なっ……?」
ガーラントの顔から、余裕そうな笑みが消えていくのがわかる。それもそのはずだろう。やつらを纏っていた【スキルバリア】を含むスキルの光が一気に薄らいでいったのだから……。
「……い、一体、何を……した……」
ガーラントの目が虚ろになっていることからわかるように、俺はやつの精神力を払ったんだ。俺は知っていた。というか基本的な知識なんだが、スキルというものは精神力に依存するということを。それで自然にスキルが解除されたというわけだ。
「スッ、スキルが解除されたぞっ! 今だああぁっ!」
おおっ、ロディが投石すると、またしても女王蟻のコアに命中し、俺たちは祝福の光を受けてあっという間に登山者ギルドへ転移したのだった。
「「「「「――よっしゃああぁぁぁっ!」」」」」
しばらくみんな呆然としていた様子だったが、ほぼ同じタイミングで歓喜の声が上がった。
「……ま、負けたのか、俺が……。う、うぅ……ちく、しょう……」
あくまでも【一掃】は一時的なものであったため、すぐに目を覚ましたガーラントがうずくまり、赤い顔をしわくちゃにして床を殴っていた。
「ガーラント……立つのだっ……! みっともないぞっ!」
「……ロ、ロディ……俺に復讐できてさぞかし嬉しいだろうが……ククッ……結局、お前らも一緒だ。誰かを苦しめることでしか上に立つことなど――」
「――バカヤロオオオオオォォッ!」
ロディの叫び声がこだまし、周囲が静まり返る。
「あのな、よく聞くのだ。私たちに余裕があったということもあるが、賭けの件はなかったことにしてほしいと受付のほうに頼んであるっ!」
「え……えっ……?」
ガーラントが信じられないといった顔でロディを見上げていた。
「正直……ガーラント、私は君のことが嫌いだが、元同僚でもある君が、そんな惨めな姿を晒すのは見たくないっ……!」
「……ロディ、負けたよ、完敗だ。色んな意味で……。いい仲間を……持ったな……」
「うむっ! ガーラント、君も私のように心を入れ替えれば、きっといい仲間に巡り合えるさっ!」
ロディとガーラントががっしりと握手し、周りから拍手と歓声が沸き起こった。リーダーが大事な話があると切り出し、ガーラントを許そうと言い出したときは正直甘いと思ったが、この光景を見てるとこういうのもありだと思えるな。
……お、胸ポケットがざわめいてる。
「ア、アルファよ……わしも感動したぞっ……!」
「わ、我もだ、アルファどの……」
「アルファ様……ぐすっ、わたくしもですわ……」
「ふわあ……ねむねむう……あ、ユリムも感動したれふう」
「「「嘘つきユリムッ!」」」
「ばれまちたあ」
「あはは……」
違う意味で涙ぐんでるユリムはともかく、マリベル、ルカ、カミュはいずれも感激した様子で涙ぐんでいる。ドワーフたちを泣かせるなんて、投石の件もそうだしやっぱりロディって持ってる男だよなあ。
「コホンッ……ところで、アルファよ」
「ん?」
「わしらの誰かを嫁に迎えるのは前提としてじゃな……」
「……」
なんだ? なんか凄く嫌な予感が……。
「あの男なら、アルファを……いや、アルフェリナの婿として認めてやってもよいっ」
「えっ……? マリベル、何言ってんだ?」
「我もマリベルどのに同意だ。あの男は、アルファどのには劣るが魅力的である……」
「お、おい、カミュまで、冗談だろ……?」
「アルファ様、わたくしもマリベルとカミュに同意しますわっ」
「ちょっ。ルカもかよ……」
「ユリムもでしゅう」
「ユリムも……って、全員かい!」
俺は胸ポケットをしばらくスルーすることに決めた。まだざわついてる様子だが、時間が経てば落ち着くだろう――
「――アルファ君っ!」
「わっ……!?」
「な、なんだ、そんなに驚いてっ。近いうちに『アント・ヘブン』の登頂を記念してお祝いしようかと思うのだが、その席にアルフェリナさんも是非呼んでほしい。みんなで祝いたいのだ……」
「それ、あたしも賛成っ! リーダーといちゃつくところ、見たいかも……」
「わたしもー。ロディお兄ちゃんがデレるところ見たーい」
「うふふっ、楽しみなカップルですねぇ」
「てっ、てててっ、照れるじゃないかっ! なあ、アルファ君!? わははっ!」
「……あは、は……」
なんてこった。この、またしても選択を迫られてる感。正直、今まで経験してきたどの戦闘よりも切羽詰まってるかもしれない……。
タイムリミットはもうすぐそこまで迫ってきている。そんな中、俺は苛立ちや焦りといった雑念を【一掃】してとにかく集中した。ガーラントの仕掛けたトラップは秀逸だ。簡単には破れない……。
おそらくジェイクたちの入れ知恵もあったんだろう。スキル自体も、その中身も【スキルバリア】があるので【一掃】で払うことができない。ガーラントやクイーンアント自体を払おうとしても、解除されない限りそこから動けないというスキルの仕様を破れないので通用しない。ダメージ自体もスキルの一部なので弄ることは不可……。
やつはそんなことまで視野に入れているんだ。本当によく考えているし、【聖騎士】がいかに防御に特化したジョブなのかがよくわかる。だが……どんな賢明な思考も、優れた仕様も、神がかったスキルの前では塵と化すんだ。それを今、見せつけてやる……。
「――なっ……?」
ガーラントの顔から、余裕そうな笑みが消えていくのがわかる。それもそのはずだろう。やつらを纏っていた【スキルバリア】を含むスキルの光が一気に薄らいでいったのだから……。
「……い、一体、何を……した……」
ガーラントの目が虚ろになっていることからわかるように、俺はやつの精神力を払ったんだ。俺は知っていた。というか基本的な知識なんだが、スキルというものは精神力に依存するということを。それで自然にスキルが解除されたというわけだ。
「スッ、スキルが解除されたぞっ! 今だああぁっ!」
おおっ、ロディが投石すると、またしても女王蟻のコアに命中し、俺たちは祝福の光を受けてあっという間に登山者ギルドへ転移したのだった。
「「「「「――よっしゃああぁぁぁっ!」」」」」
しばらくみんな呆然としていた様子だったが、ほぼ同じタイミングで歓喜の声が上がった。
「……ま、負けたのか、俺が……。う、うぅ……ちく、しょう……」
あくまでも【一掃】は一時的なものであったため、すぐに目を覚ましたガーラントがうずくまり、赤い顔をしわくちゃにして床を殴っていた。
「ガーラント……立つのだっ……! みっともないぞっ!」
「……ロ、ロディ……俺に復讐できてさぞかし嬉しいだろうが……ククッ……結局、お前らも一緒だ。誰かを苦しめることでしか上に立つことなど――」
「――バカヤロオオオオオォォッ!」
ロディの叫び声がこだまし、周囲が静まり返る。
「あのな、よく聞くのだ。私たちに余裕があったということもあるが、賭けの件はなかったことにしてほしいと受付のほうに頼んであるっ!」
「え……えっ……?」
ガーラントが信じられないといった顔でロディを見上げていた。
「正直……ガーラント、私は君のことが嫌いだが、元同僚でもある君が、そんな惨めな姿を晒すのは見たくないっ……!」
「……ロディ、負けたよ、完敗だ。色んな意味で……。いい仲間を……持ったな……」
「うむっ! ガーラント、君も私のように心を入れ替えれば、きっといい仲間に巡り合えるさっ!」
ロディとガーラントががっしりと握手し、周りから拍手と歓声が沸き起こった。リーダーが大事な話があると切り出し、ガーラントを許そうと言い出したときは正直甘いと思ったが、この光景を見てるとこういうのもありだと思えるな。
……お、胸ポケットがざわめいてる。
「ア、アルファよ……わしも感動したぞっ……!」
「わ、我もだ、アルファどの……」
「アルファ様……ぐすっ、わたくしもですわ……」
「ふわあ……ねむねむう……あ、ユリムも感動したれふう」
「「「嘘つきユリムッ!」」」
「ばれまちたあ」
「あはは……」
違う意味で涙ぐんでるユリムはともかく、マリベル、ルカ、カミュはいずれも感激した様子で涙ぐんでいる。ドワーフたちを泣かせるなんて、投石の件もそうだしやっぱりロディって持ってる男だよなあ。
「コホンッ……ところで、アルファよ」
「ん?」
「わしらの誰かを嫁に迎えるのは前提としてじゃな……」
「……」
なんだ? なんか凄く嫌な予感が……。
「あの男なら、アルファを……いや、アルフェリナの婿として認めてやってもよいっ」
「えっ……? マリベル、何言ってんだ?」
「我もマリベルどのに同意だ。あの男は、アルファどのには劣るが魅力的である……」
「お、おい、カミュまで、冗談だろ……?」
「アルファ様、わたくしもマリベルとカミュに同意しますわっ」
「ちょっ。ルカもかよ……」
「ユリムもでしゅう」
「ユリムも……って、全員かい!」
俺は胸ポケットをしばらくスルーすることに決めた。まだざわついてる様子だが、時間が経てば落ち着くだろう――
「――アルファ君っ!」
「わっ……!?」
「な、なんだ、そんなに驚いてっ。近いうちに『アント・ヘブン』の登頂を記念してお祝いしようかと思うのだが、その席にアルフェリナさんも是非呼んでほしい。みんなで祝いたいのだ……」
「それ、あたしも賛成っ! リーダーといちゃつくところ、見たいかも……」
「わたしもー。ロディお兄ちゃんがデレるところ見たーい」
「うふふっ、楽しみなカップルですねぇ」
「てっ、てててっ、照れるじゃないかっ! なあ、アルファ君!? わははっ!」
「……あは、は……」
なんてこった。この、またしても選択を迫られてる感。正直、今まで経験してきたどの戦闘よりも切羽詰まってるかもしれない……。
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