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第一章 リトア王国
アロイス様の改良はすごいです
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ふかふかキノコはグラグラすることもなくしっとりスベスベフワフワなのに弾力がしっかりあって、二度と立ち上がれない気がしてきた。
「座り心地はどう?」
少し不安そうなアロイス様に私は親指を突き出した。
「最高です!身体がすごく軽くなった気がする。もうここから立ち上がりたくない。」
お祖母様はキノコと私を交互に眺めている。
「マリー、これは何の仕草なの?」
恐る恐る親指を立てて突き出すお祖母様はなんだか可愛らしかった。
「あー、素晴らしいと相手の方を称賛する時に私たちの間で使っているのです。」
そう、とお祖母様はなんだか寂しそうに答えてから私の頬に手を当てる。
あれ、何か私とアロイス様だけの合図と思って寂しがってるのかな?今度お祖母様にもやろうかな。
「真っ青だった顔色が見違えたわ。このキノコは?」
お祖母様は私の頬から手を離しキノコをそっとつついている。
「魔の森に生えている毒素を出すキノコを改良して遊んでいたら毒素や毒気を吸ってくれる便利キノコになったのでその胞子をいつも持ち歩くようにしてるんです。
座れば身体はもちろん精神的にも毒を取り除いてくれます。」
お祖母様は感心したような表情でキノコの傘を撫でている。
「アロイス様は本当に素晴らしい力と知識をお持ちなんですね。」
優しさに満ちた声はいつものツンツンしたお祖母様らしくなくて私はハッとしてお祖母様の手をキノコから離して握りしめた。
お祖母様のツンツンが毒気と間違えて吸い取られている。
その手を握ったままピョンっとキノコから降りると羽が生えたように身体が軽く感じられ、元気が満ち溢れている。私はちょうど伯父様の牢から離れてこちらへ近づいてきたお父様とダミアンさんを笑顔で迎えた。
「マリーベル。ずいぶんと元気なようだ…」
お父様はキノコに目をやってちょっと呆れたような顔をした。
「ちゃんと片付けておけよ?」
お父様の言葉にアロイス様が慌ててキノコをもぎ倒し瞬きする間にどこかへしまったようで見えなくなった。残念。あのキノコ欲しかったのにな~
お父様はグレーのマント集団にも話を聞きに行くらしく一緒に行きたいという私の訴えはみんなの反対にあい取り下げられ先に屋敷へ戻ることになった。
馬車へ向かう私たちから離れ公爵様は勝手に父にくっついて行ってしまった。
暗い廊下の向こうからお父様のため息が聞こえる。
見送られながら要塞を離れる時も見送り以上にたくさんの視線を感じて怖かった。
まさか要塞にいる何十人もの騎士団の団員がこっそりとこちらを見ようと物陰からも覗いていたとは全く気付いていなかったのだ。
「あの団長がにこやかにマリーベル様を抱いて歩いていらしたんだろ?俺も見たかった~」
「にこやかなんてもんじゃない。あれは絶対デレデレしてたな。あんな可愛い娘さんならそれも仕方ないが。」
「にこやか⁈デレデレ⁈どちらにしても珍しすぎるだろ。
明日は嵐になりそうだな。」
常日頃、厳しいお父様しか見ていない騎士団の方々はレアなお父様の姿に大いに盛り上がっていたらしい。
「座り心地はどう?」
少し不安そうなアロイス様に私は親指を突き出した。
「最高です!身体がすごく軽くなった気がする。もうここから立ち上がりたくない。」
お祖母様はキノコと私を交互に眺めている。
「マリー、これは何の仕草なの?」
恐る恐る親指を立てて突き出すお祖母様はなんだか可愛らしかった。
「あー、素晴らしいと相手の方を称賛する時に私たちの間で使っているのです。」
そう、とお祖母様はなんだか寂しそうに答えてから私の頬に手を当てる。
あれ、何か私とアロイス様だけの合図と思って寂しがってるのかな?今度お祖母様にもやろうかな。
「真っ青だった顔色が見違えたわ。このキノコは?」
お祖母様は私の頬から手を離しキノコをそっとつついている。
「魔の森に生えている毒素を出すキノコを改良して遊んでいたら毒素や毒気を吸ってくれる便利キノコになったのでその胞子をいつも持ち歩くようにしてるんです。
座れば身体はもちろん精神的にも毒を取り除いてくれます。」
お祖母様は感心したような表情でキノコの傘を撫でている。
「アロイス様は本当に素晴らしい力と知識をお持ちなんですね。」
優しさに満ちた声はいつものツンツンしたお祖母様らしくなくて私はハッとしてお祖母様の手をキノコから離して握りしめた。
お祖母様のツンツンが毒気と間違えて吸い取られている。
その手を握ったままピョンっとキノコから降りると羽が生えたように身体が軽く感じられ、元気が満ち溢れている。私はちょうど伯父様の牢から離れてこちらへ近づいてきたお父様とダミアンさんを笑顔で迎えた。
「マリーベル。ずいぶんと元気なようだ…」
お父様はキノコに目をやってちょっと呆れたような顔をした。
「ちゃんと片付けておけよ?」
お父様の言葉にアロイス様が慌ててキノコをもぎ倒し瞬きする間にどこかへしまったようで見えなくなった。残念。あのキノコ欲しかったのにな~
お父様はグレーのマント集団にも話を聞きに行くらしく一緒に行きたいという私の訴えはみんなの反対にあい取り下げられ先に屋敷へ戻ることになった。
馬車へ向かう私たちから離れ公爵様は勝手に父にくっついて行ってしまった。
暗い廊下の向こうからお父様のため息が聞こえる。
見送られながら要塞を離れる時も見送り以上にたくさんの視線を感じて怖かった。
まさか要塞にいる何十人もの騎士団の団員がこっそりとこちらを見ようと物陰からも覗いていたとは全く気付いていなかったのだ。
「あの団長がにこやかにマリーベル様を抱いて歩いていらしたんだろ?俺も見たかった~」
「にこやかなんてもんじゃない。あれは絶対デレデレしてたな。あんな可愛い娘さんならそれも仕方ないが。」
「にこやか⁈デレデレ⁈どちらにしても珍しすぎるだろ。
明日は嵐になりそうだな。」
常日頃、厳しいお父様しか見ていない騎士団の方々はレアなお父様の姿に大いに盛り上がっていたらしい。
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