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第一章 リトア王国
クルートさんを引き留めます
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誰かに見咎められないギリギリの急ぎ足で玄関に到着した時、見慣れた姿のクルートさんが玄関でダミアンさんと話していた。
「それでは王宮へ行ってみます。」
そんな声が聞こえて私は大慌てでクルートさんを引き留める。
「クルート(さん)待って。」
「これは、お嬢様、お坊ちゃま、アロイス殿。国王陛下との謁見は無事に終えられたそうで。このたびはご婚約おめでとうございます。ディル様もスリジェ辺境伯家の後継ぎとしての養子縁組おめでとうございます。」
婚約!アイリーンたちにも言われたけどこうしてお祝いを言われると実感しちゃう。
赤くなった頬を覆い身悶えしていると、
「ゆっくりとお話ししたいのですがアラン辺境伯に急ぎの用で呼ばれておりまして…
王宮へ行って参ります。」
「待って待って、そのお父様に頼まれてクルートを引き留めておくように頼まれてるの。」
「引き留め?」
クルートさんは眉をひそめて私たちを見る。
「何故そんなことを…やはり気になります。少しだけ…」
また出て行こうとするクルートさんの前に急いでまわり込んだ。
「お待ちください。クリアフォルト王弟殿下。」
両手を広げて言い放った私にクルートさんは目を丸くした。
「何故…アロイス殿。あなたですね?」
私の隣に移動してきたアロイスに鋭い視線が向けられる。
「まぁ、そうですね。でも殿下の話になったのは僕からではないです。」
クルートさんはじっと黙ったままアロイスを見つめている。
「アリアドネ様からですよ。」
その瞬間パッと目を閉じて何かを飲み込むように息をつめてからクルートさんはゆっくりと目を開いた。
「そうですか…」
一瞬クルートさんの辛そうな顔が見えた。
無表情以外の顔を見たのは初めてだ。
「どうやら、大人しく待っていた方がいいようです。
馬を厩舎に入れてくるので。」
そうだ、ペガサス!
「あの、見せていただいても?」
「あぁ、どうぞ。」
クルートさんはどこかうわの空で返事をしていたけれど私たちは嬉々として後に続いた。
玄関からそう遠くないところに先ほどの馬が大人しく立ってこちらを見ている。
翼はなくなっているけど綺麗な馬だ。
「そういえば、先程は何故変装を解いていらしたのですか?」
アロイスの問いにようやくクルート様はこちらに顔を向けた。
「やはり見えていましたか。変装したままだと彼が飛んでくれないんですよ。目くらましをかけていたけれど、この屋敷の敷地内に張り巡らされた防御魔法のせいですね。」
「そうか!昔父上が面白がってやたらとかけまくった防御魔法が綻びもせずに無駄に張り切って発動してるからですね。」
エシャルロット公爵様ったら何やってるんだろう…
彼といいながらポンっと背中に手を置かれた馬は値踏みするように私たちを眺めた後、ディルにグイグイ近づいていき、パクッとメガネに噛みつきプイッと放ってしまった。
「わぁ、」
びっくりしたディルがのけぞって尻もちをつきそうになった時、さっとクルート様が近づきディルを腕に支え、反対の手で放られたメガネをつかんだ。
「失礼、大丈夫ですか?」
「は。はい。」
真っ赤になったディルは体勢を立て直し返されたメガネを両手で受け取り胸元で握り締めた。
二人の背景に薔薇が咲き誇って見えたのは私の錯覚だろうか…
「彼は人の外見にうるさくてね。わざと地味に見せていたり、隠そうとしていたりすると気に入らないらしく私もこの姿だと背中に乗せてくれないのです。
あなたも、メガネがない姿の方が良いと思われたんでしょう。」
確かに、メガネをかけていないディルを初めて見たけど目がぱっちり大きくてまつ毛も長い。
普段から可愛いのに、更に魅力が倍増している。
さすがヒロイン。
「いや、違うから。」
すかさずアロイスから否定され私は飛び上がった。
「ついに心の声まで読むように…」
「読んでないから。顔見てりゃ分かるから。」
また呆れられてしまった。
「それでは王宮へ行ってみます。」
そんな声が聞こえて私は大慌てでクルートさんを引き留める。
「クルート(さん)待って。」
「これは、お嬢様、お坊ちゃま、アロイス殿。国王陛下との謁見は無事に終えられたそうで。このたびはご婚約おめでとうございます。ディル様もスリジェ辺境伯家の後継ぎとしての養子縁組おめでとうございます。」
婚約!アイリーンたちにも言われたけどこうしてお祝いを言われると実感しちゃう。
赤くなった頬を覆い身悶えしていると、
「ゆっくりとお話ししたいのですがアラン辺境伯に急ぎの用で呼ばれておりまして…
王宮へ行って参ります。」
「待って待って、そのお父様に頼まれてクルートを引き留めておくように頼まれてるの。」
「引き留め?」
クルートさんは眉をひそめて私たちを見る。
「何故そんなことを…やはり気になります。少しだけ…」
また出て行こうとするクルートさんの前に急いでまわり込んだ。
「お待ちください。クリアフォルト王弟殿下。」
両手を広げて言い放った私にクルートさんは目を丸くした。
「何故…アロイス殿。あなたですね?」
私の隣に移動してきたアロイスに鋭い視線が向けられる。
「まぁ、そうですね。でも殿下の話になったのは僕からではないです。」
クルートさんはじっと黙ったままアロイスを見つめている。
「アリアドネ様からですよ。」
その瞬間パッと目を閉じて何かを飲み込むように息をつめてからクルートさんはゆっくりと目を開いた。
「そうですか…」
一瞬クルートさんの辛そうな顔が見えた。
無表情以外の顔を見たのは初めてだ。
「どうやら、大人しく待っていた方がいいようです。
馬を厩舎に入れてくるので。」
そうだ、ペガサス!
「あの、見せていただいても?」
「あぁ、どうぞ。」
クルートさんはどこかうわの空で返事をしていたけれど私たちは嬉々として後に続いた。
玄関からそう遠くないところに先ほどの馬が大人しく立ってこちらを見ている。
翼はなくなっているけど綺麗な馬だ。
「そういえば、先程は何故変装を解いていらしたのですか?」
アロイスの問いにようやくクルート様はこちらに顔を向けた。
「やはり見えていましたか。変装したままだと彼が飛んでくれないんですよ。目くらましをかけていたけれど、この屋敷の敷地内に張り巡らされた防御魔法のせいですね。」
「そうか!昔父上が面白がってやたらとかけまくった防御魔法が綻びもせずに無駄に張り切って発動してるからですね。」
エシャルロット公爵様ったら何やってるんだろう…
彼といいながらポンっと背中に手を置かれた馬は値踏みするように私たちを眺めた後、ディルにグイグイ近づいていき、パクッとメガネに噛みつきプイッと放ってしまった。
「わぁ、」
びっくりしたディルがのけぞって尻もちをつきそうになった時、さっとクルート様が近づきディルを腕に支え、反対の手で放られたメガネをつかんだ。
「失礼、大丈夫ですか?」
「は。はい。」
真っ赤になったディルは体勢を立て直し返されたメガネを両手で受け取り胸元で握り締めた。
二人の背景に薔薇が咲き誇って見えたのは私の錯覚だろうか…
「彼は人の外見にうるさくてね。わざと地味に見せていたり、隠そうとしていたりすると気に入らないらしく私もこの姿だと背中に乗せてくれないのです。
あなたも、メガネがない姿の方が良いと思われたんでしょう。」
確かに、メガネをかけていないディルを初めて見たけど目がぱっちり大きくてまつ毛も長い。
普段から可愛いのに、更に魅力が倍増している。
さすがヒロイン。
「いや、違うから。」
すかさずアロイスから否定され私は飛び上がった。
「ついに心の声まで読むように…」
「読んでないから。顔見てりゃ分かるから。」
また呆れられてしまった。
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