悪役令嬢とヒロインはハッピーエンドを目指したい

ゆりまき

文字の大きさ
94 / 247
第一章 リトア王国

美少女は目の保養です

しおりを挟む

公爵様がお帰りになった翌日から屋敷にはひっきりなしに人がやってきてはお父様に詳しく話を聞きたがり、不安をもらし、自らは潔白であるとくどいくらいに説明していった。
お父様は頻繁に王宮からも呼ばれ、屋敷には客人が待ち受けで休まる暇がないのではと私は心配だ。

どんなに忙しくてもいつもと同じに見えるからどのくらいつかれているのか分からないし。

お客様と話していらっしゃる応接間の前の廊下をウロウロしていると、やはり大忙しなはずのダミアンさんがワゴンを押しながらにこやかにやってきた。

「おや、マリー様。いかがされました?」

「ちょっと、お父様が心配で。ずっと働きづめだし。どうして皆さんお父様のところにいらっしゃるのですか?騎士団長は今はオーレル伯父様ですよね?」

ダミアンさんはニコッと笑ってから少し待っていてくださいね。
と言って応接間へ入っていった。

廊下に置かれた長椅子に座って待っているとのんびりした足取りでこちらへ近づいてくる足音が聞こえてきた。
顔をあげるとサラサラと輝く腰まである金髪にヘアバンドをつけ、桃色のドレスを着た美少女が近づいてくる。

「のんちゃん!」

笑顔の私の隣に彼女、リノア・エシャルロットが座り呆れた顔をした。

「なんか、この姿で来るほうが嬉しそうだよね?」

アロイスは自宅とこの屋敷を自由に行ったり来たりしていて、王宮でリーク王子と会ったあとはリノアの姿のままやって来る。

初めてこの姿を見た時はびっくりしたけどその美少女っぷりが逆に見事すぎて目の保養として楽しませてもらっている。
姿より私を悩ませたのは呼び名だ。
やっとのんちゃんからアロイスと呼び慣れたのに、この姿の時は絶対にアロイスと呼ばないようにと言われてしまったのだ。
悩む私にアロイスはリノアだからのんちゃん呼びで大丈夫と言ってくれた。
呼び慣れた愛称に美少女、テンション上がらないほうがおかしいでしょ。
だって、完璧に女の子に見えるから気軽に腕をからませたり抱きついたりできるし。
のんちゃんにもそう言ったらなんだか微妙そうな顔をされたけど。

ニコニコする私にのんちゃんがジトッとした眼差しを向けていると扉が開きダミアンさんが出てきた。

一瞬おやっという表情をしたけどすぐに笑顔に戻り室内に一礼してからそっと扉を閉める。

「リノア様、いらしていたのですね。
マリー様、お待たせいたしました。中庭にお茶の準備をいたしますので。」

私たちは手を繋いでダミアンさんの後に続いた。

中庭に出ると何故か使用人たちが数名集まっていて、聞き慣れない子供の声とディルの困っているようなか細い声が聞こえる。

「どうしました?」

ダミアンさんの一言で人垣が割れ、ディルの姿が見えた。見知らぬ男の子に腕をガッチリと掴まれている。

「ディル、どうしたの?」
「リーク様!何故ここに…」

のんちゃんの声にこちらに背を向けていた男の子が振り返った。

ま、まぶしい…
シミひとつない真っ白な肌に太陽の光でできているようなキラキラの金髪はクルクルした巻き毛で見開かれた瞳はとびきり晴れ渡った空の色。
前世でみた宗教画のキューピットか天使みたいだ。

「リノア…と、誰だお前?」

口を開いたら全然天使じゃなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

悪役令嬢のビフォーアフター

すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。 腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ! とりあえずダイエットしなきゃ! そんな中、 あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・ そんな私に新たに出会いが!! 婚約者さん何気に嫉妬してない?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

処理中です...