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第一章 リトア王国
クルートさんの意外な姿を目撃しました
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リークとアリアドネ様、のんちゃんが無事に帰るとなんだか急にしんと静まり返った感じがして落ち着かない。
ディルもちょっと寂しそうだ。
私たちがのんちゃんたちを見送って部屋から出ると廊下の奥を誰かが曲がっていく影が見えた。
私とディルはうなずきあって小走りで廊下を駆けそっと角から覗き込むとクルートさんの背中が見えた。
お父様より更に忙しいはずなのにいつも通りピシッとした背中だ。
…っと思ったら急にその場にしゃがみ込んだ。
え?大変!どうしたんだろう?
慌てて駆け寄ろうとした私たちより早くお父様が反対側からやって来てしゃがみ込むクルートさんの前に立った。
「立て、クルート。そうなると分かっていて何故やめなかったんだ。」
クルートさんは苦しそうにぎこちなく頭を上げお父様を見た。
「どうしても誘惑にあらがえなかったのです。ああ…胸が苦しくて死にそうですが絶対に今死ぬわけにはいかない。」
はぁ、とお父様のため息がここまで聞こえてくる。
「そなたも彼女も何故こちらが必死に立てた計画を崩壊させようとするんだ。そなたたちの為の計画と言っても過言ではないというのに。全く。あと少しの辛抱だろう?」
クルートさんはゆっくりと立ち上がりお父様に深く頭を下げた。
「申し訳ない。ですが、ギリギリ踏みとどまって声をかけることはしませんでした。」
「当たり前だ。そなたたちが共にいる所を誰かに見られでもしたら計画が狂う。」
「あぁ、ですがアラン隊長。彼女は…
ひと目見た彼女は…私の思い出の中の姿から更に美しさが増していました。
慈愛に満ちた眼差しを私たちの息子に向け、優しい仕草で背を押していた。
美しい女性から母となり更に柔らかさと輝きが増して。
女神です。そうとしか思えない。歳を重ねるごとに輝きが増すのでは私の心臓がこの先持ち堪えるのか心配になってきました。」
「私もそなたのことが心配だよ。本当に。」
「それに、私たちの息子は彼女によく似て賢そうな絵画から迷い出てきた天使のようでした。」
お父様に背中を押されクルートさんは歩き始めながらもずっと話していた。
私とディルはそっと頭を引っ込めて見つめあった。
「聞こえた?ディル。」
「はい、クルートさんがあんなにたくさん話していらっしゃるところを初めて見ました。」
「私も初めて見た…」
なんか、イメージが崩れたけど…
アリアドネ様とリークを大切にしてくれそうだからまぁいいかな?
ディルはクスクス笑っている。
「アロイス様がいらしたら呆れた顔をしたでしょうね。」
「本当にね。」
私たちはクスクス笑い合いながら歩きはじめた。
「リークもいい子だし。友達が増えて嬉しいね、ディル。」
ディルはじっと私を見てから明るい笑顔でにっこり微笑んだ。
「本当に、スリジェ家へ来ることができて嬉しいことばかりです。」
私も笑顔になりながら、なんとなく遠慮していたディルとの間にあった壁がなくなってきたことを感じた。
きっとこれからもっともっと仲良くなれるだろう。
「私もディルが来てくれて毎日楽しいよ。」
私たちはつかず離れずクスクス笑い合いながら庭園へと駆け出して行った。
ディルもちょっと寂しそうだ。
私たちがのんちゃんたちを見送って部屋から出ると廊下の奥を誰かが曲がっていく影が見えた。
私とディルはうなずきあって小走りで廊下を駆けそっと角から覗き込むとクルートさんの背中が見えた。
お父様より更に忙しいはずなのにいつも通りピシッとした背中だ。
…っと思ったら急にその場にしゃがみ込んだ。
え?大変!どうしたんだろう?
慌てて駆け寄ろうとした私たちより早くお父様が反対側からやって来てしゃがみ込むクルートさんの前に立った。
「立て、クルート。そうなると分かっていて何故やめなかったんだ。」
クルートさんは苦しそうにぎこちなく頭を上げお父様を見た。
「どうしても誘惑にあらがえなかったのです。ああ…胸が苦しくて死にそうですが絶対に今死ぬわけにはいかない。」
はぁ、とお父様のため息がここまで聞こえてくる。
「そなたも彼女も何故こちらが必死に立てた計画を崩壊させようとするんだ。そなたたちの為の計画と言っても過言ではないというのに。全く。あと少しの辛抱だろう?」
クルートさんはゆっくりと立ち上がりお父様に深く頭を下げた。
「申し訳ない。ですが、ギリギリ踏みとどまって声をかけることはしませんでした。」
「当たり前だ。そなたたちが共にいる所を誰かに見られでもしたら計画が狂う。」
「あぁ、ですがアラン隊長。彼女は…
ひと目見た彼女は…私の思い出の中の姿から更に美しさが増していました。
慈愛に満ちた眼差しを私たちの息子に向け、優しい仕草で背を押していた。
美しい女性から母となり更に柔らかさと輝きが増して。
女神です。そうとしか思えない。歳を重ねるごとに輝きが増すのでは私の心臓がこの先持ち堪えるのか心配になってきました。」
「私もそなたのことが心配だよ。本当に。」
「それに、私たちの息子は彼女によく似て賢そうな絵画から迷い出てきた天使のようでした。」
お父様に背中を押されクルートさんは歩き始めながらもずっと話していた。
私とディルはそっと頭を引っ込めて見つめあった。
「聞こえた?ディル。」
「はい、クルートさんがあんなにたくさん話していらっしゃるところを初めて見ました。」
「私も初めて見た…」
なんか、イメージが崩れたけど…
アリアドネ様とリークを大切にしてくれそうだからまぁいいかな?
ディルはクスクス笑っている。
「アロイス様がいらしたら呆れた顔をしたでしょうね。」
「本当にね。」
私たちはクスクス笑い合いながら歩きはじめた。
「リークもいい子だし。友達が増えて嬉しいね、ディル。」
ディルはじっと私を見てから明るい笑顔でにっこり微笑んだ。
「本当に、スリジェ家へ来ることができて嬉しいことばかりです。」
私も笑顔になりながら、なんとなく遠慮していたディルとの間にあった壁がなくなってきたことを感じた。
きっとこれからもっともっと仲良くなれるだろう。
「私もディルが来てくれて毎日楽しいよ。」
私たちはつかず離れずクスクス笑い合いながら庭園へと駆け出して行った。
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