悪役令嬢とヒロインはハッピーエンドを目指したい

第三章 魔法学園

事件発生です

どうしたことだろう。もう3日もイライザに会えていない。

体調は回復して学園にも通っているみたいだけどなかなか会えないのだ。
お昼を一緒に食べようと探してもいつも見つからないし、寮の部屋を訪ねてもまだ帰っていないかもう休んでいるからと断られる。

おかしいな～もしかして避けられてる？いやいや、イライザなら嫌だと思ったら言いにくるはずだし。たまたまタイミングが悪かったんだよね。

リークとイライザのことはあまり噂にはなっていないみたい。代わりに私は何故か遠巻きにされたりなんだか冷たい視線を向けられてる気がするけど…

セーラやルルもそれは感じてるみたいで何か噂をたてられてる様子もあるけど私たちが聞いても誰も話してくれない。

なんだか居心地が悪くて嫌だな～ルルとセーラが一緒にいてくれるから耐えられるけど一体何なんだろう？

モヤモヤした気持ちのまま授業を終え淑戦部に向かおうと嬉々として立ち上がろうとした時、ハフスさんが通路を塞ぐようにして立ちはだかった。連れている友人の数が前よりだいぶ増えたみたい。

「ルルシア皇女様、もうおかげんはよろしいんですか？」

意地の悪い笑みから心配して言っているわけではなさそうだ。

「何のこと？」

ルルは興味なさそうにカバンに教科書をしまう手を休めずに返事をする。

「まぁ、思い出したくもないことかもしれませんよね。自国から連れていらした侍女に襲われるなんて。
皇族の中では一番低い立場なせいで日頃抑圧されていた鬱憤がたまっていらしたんでしょうが、自国ではとれないような態度でやりたい放題ついに耐えかねたのでしょうね。
でも、失礼を承知で申し上げますが貴女の使用人といえど彼らも人間です。
もう少し人間らしい扱いをしてあげれば反撃されるなんてことは起きないと思いますわ。かわいそうに主人の首を締めるなんてよっぽど追い詰められていたんでしょう。
今少し寛大なお心を持って処分を検討されては…」




我慢できなかった。私の目の前でペラペラとルルを辱めるハフスさんが。事情を知らない人たちの前で事実を歪めて広めようとしていることが。
ルルが顔色は変えずに固く固く手を握りしめ震えていることが。

バシン！

机を叩いて立ち上がる。

「何も知らないくせに！！！」

セーラーやルルが止める声が聞こえた気がするけどそれをかき消すほどの甲高い悲鳴が響き渡った。

「やめて！許して！魔法を使わないで！」

長い悲鳴の後悲しげにそう叫ぶとハフスさんがしゃがみ込んだ。

話に加わっていなかったクラスメイトたちも何だ何だ？と集まってきて震えるハフスさんを取り囲み、誰だかわからないけど突き飛ばされて私は通路の端に弾き出される。

「ちょっとどういうこと？」「また魔力をかさにきて今度はロベリアをいじめてるんだって。」「最低。」「ちょっと魔力が強い希少魔法持ちだからって調子に乗ってるんでしょ。」「こんな奴と同じクラスなのマジ勘弁。」「誰か先生呼んでこいよ～」
「またこいつが籠絡させてる殿下たちが来たらうやむやにされるぜ」


冷たい目、目、目。突き刺さるような言葉。
スッと血の気がひいた所に

「何を騒いでるんだ！」

小太りな初めて見る先生と困惑した顔のカミル先生がクラスに入ってきた。

しゃがみ込んでいたハフスさんが驚くべき早さで立ち上がりカミル先生の胸にすがりつきすすり泣き始める。

一体何が起こってるの？