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第1章 はじまりの村
第1話 狼狽
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「うっ、うぅ……」
俺の視界を覆う光が消える。
頭に手を当てて、ゆっくりと起立。
先ほどの強烈すぎる光の余韻が体のバランスを崩す。
「く、くそ……なんだったんだ……」
だがそれもつかの間、徐々に俺はバランスを整え周囲を確認する。
「……なにこれ、森?」
そこは俺の部屋ではなかった。
唐突な状況変化の中、俺が思い浮かんだ言葉でその景色を言うならば──森。それが周囲の状況だった。
時間は夜……なのだろうか。
ほぼ光は無く、周りには木、木、木。足元には膝下まで伸びた草の数々。
「……え? え?」
まず思ったことは、夢。そう、夢だった。
俺は普段部屋の中にいる。というか、いつも部屋の中にいる。
外にまともに出た事など殆どない。それなのに、こんな場所にいるのはおかしい。
おかしいのだが──
「どこだよ……、どこだよ、ここっ!」
あまりにも感触がリアルだった。
闇に覆われていても分かる、瞳にうつる景色の質感。
少し鳥肌がたちそうな肌寒さ、鼻をくすぐる草の匂い。その全てが現実的なものだった。
だからこそ、俺は頭をかかえこむ。
「おい、誰かいるのか、おい!」
混乱。動揺。狼狽。
言葉にできない焦りが俺の心臓の鼓動を早める。
何がなんだかわからない。
何故この場所にいるのか、そもそもここはどこなのか。
と──
ガサッ、ガサ……メキッ
「うっ!?」
俺は動きをぴたりと止める。
いや、止めるというより止められたという方が正確か。
──何の音だ、嫌な予感しかしない……
自分の背後から聞こえた、草の揺れにしては妙な音。
振り返りたくはない。ないのだが……
おそらく、自分に降りかかる危機を察知しようとする生存本能なのだろう。
俺は何かに引っ張られるかのように、ゆっくりと後ろに振り替える。
「─────っ!!!」
声が出なかった。……いや、出せなかった。
そこにいた存在は俺の想像を遥かに超えていた。
大蛇と見間違うような細長いフォルム。
いや、うねうねとうねるそれは、むしろ大蛇であってあった方が良かったかもしれない。
左右から延びる無数の足、頭と思われる部分から左右に大きく伸びる牙。体を覆う鎧の如き甲殻。
この森にわずかに降り注いでいる月と星の光で、その姿が見えてしまう。
「あ、あ……」
一言で言えば大きなムカデ。それがその正体だった。
しかしそのムカデは俺の知っているものよりもはるかに大きい。
あまりに巨大すぎて大きいという言葉で形容するのが適切な存在なのかも不明だが、とにかく自分の身長より大きいことは確かだ。
上半身を起こしたそのムカデの胴体の半分ぐらいをきりとったとしても頭の位置が自分の視線より上になる。
こんな巨大なムカデがこの世に存在するなんてことは俺の常識ではありえない。
完全に思考が停止しそうな中、とりあえずとれた行動は足を一歩さげることだけ。
「夢、夢だよな……夢……」
違う、夢ではない。俺の本能がそう告げている。
逃げろ、このままでは死ぬ。俺の本能がそう叫んでいる。
「う、うわあああああああああああああああ!!!!」
その後は、無我夢中だった。
何が起きているかわからない。
だが、そんな中でも一つだけ俺の中で明確な行動の指針ができた。
逃げること。
とにかくあの、この世のものとは思えないような異形から逃げること。
背を向け、全力で走る。
──死ぬ、死んでしまうっ!
いや、死ぬとかいうより以前に、そもそも生理的に受け付けない。
インターネットで見るような閲覧注意とつけられた画像なんかよりも遥かにグロテスクな見た目。
自分の脳では処理することができない圧倒的な生理的嫌悪感。
「だれかあああああああ、だれっかああああああ」
走りながら、とにかく叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。
後ろから響いてくる草を分ける音。
間違いない。あの異形は自分を追っている。
「たすけてえええええええ、たすけ、たすけてええええええええっ!」
視界が涙でにじむ。
心臓の鼓動が気持ち悪い程早くなる。
そんな状態で走ればどうなるか──言うまでもない。
「ぐぁっ」
俺は足元のバランスを崩しそのまま倒れこむ。
急いで体勢を整えようにするも恐怖でひきつり体がうまく動かせない。
「う、あ……」
その間に、そのムカデは俺の近くまで寄ってきていた。
あんなに走ったのにもうこんな近くまでいる。その事実が俺の絶望感を更に増した。
「な、なんで……」
なんでこうなったのか、俺は理解できなかった。
いつものようにネトゲをやり、いつものように狩りをして、何の変哲もない日を送るはずだったのに。
──いや、むしろそれが原因なのか?
まともに働かず親に迷惑をかけ、社会から無能の烙印を押された自分だからこそ、こうなっているのか。
これが天罰というものなのか。
「う、あ、う……」
もうだめだ。起き上がることもできない。恐怖で体が動かない。
──死ぬっ!
俺の視界を覆う光が消える。
頭に手を当てて、ゆっくりと起立。
先ほどの強烈すぎる光の余韻が体のバランスを崩す。
「く、くそ……なんだったんだ……」
だがそれもつかの間、徐々に俺はバランスを整え周囲を確認する。
「……なにこれ、森?」
そこは俺の部屋ではなかった。
唐突な状況変化の中、俺が思い浮かんだ言葉でその景色を言うならば──森。それが周囲の状況だった。
時間は夜……なのだろうか。
ほぼ光は無く、周りには木、木、木。足元には膝下まで伸びた草の数々。
「……え? え?」
まず思ったことは、夢。そう、夢だった。
俺は普段部屋の中にいる。というか、いつも部屋の中にいる。
外にまともに出た事など殆どない。それなのに、こんな場所にいるのはおかしい。
おかしいのだが──
「どこだよ……、どこだよ、ここっ!」
あまりにも感触がリアルだった。
闇に覆われていても分かる、瞳にうつる景色の質感。
少し鳥肌がたちそうな肌寒さ、鼻をくすぐる草の匂い。その全てが現実的なものだった。
だからこそ、俺は頭をかかえこむ。
「おい、誰かいるのか、おい!」
混乱。動揺。狼狽。
言葉にできない焦りが俺の心臓の鼓動を早める。
何がなんだかわからない。
何故この場所にいるのか、そもそもここはどこなのか。
と──
ガサッ、ガサ……メキッ
「うっ!?」
俺は動きをぴたりと止める。
いや、止めるというより止められたという方が正確か。
──何の音だ、嫌な予感しかしない……
自分の背後から聞こえた、草の揺れにしては妙な音。
振り返りたくはない。ないのだが……
おそらく、自分に降りかかる危機を察知しようとする生存本能なのだろう。
俺は何かに引っ張られるかのように、ゆっくりと後ろに振り替える。
「─────っ!!!」
声が出なかった。……いや、出せなかった。
そこにいた存在は俺の想像を遥かに超えていた。
大蛇と見間違うような細長いフォルム。
いや、うねうねとうねるそれは、むしろ大蛇であってあった方が良かったかもしれない。
左右から延びる無数の足、頭と思われる部分から左右に大きく伸びる牙。体を覆う鎧の如き甲殻。
この森にわずかに降り注いでいる月と星の光で、その姿が見えてしまう。
「あ、あ……」
一言で言えば大きなムカデ。それがその正体だった。
しかしそのムカデは俺の知っているものよりもはるかに大きい。
あまりに巨大すぎて大きいという言葉で形容するのが適切な存在なのかも不明だが、とにかく自分の身長より大きいことは確かだ。
上半身を起こしたそのムカデの胴体の半分ぐらいをきりとったとしても頭の位置が自分の視線より上になる。
こんな巨大なムカデがこの世に存在するなんてことは俺の常識ではありえない。
完全に思考が停止しそうな中、とりあえずとれた行動は足を一歩さげることだけ。
「夢、夢だよな……夢……」
違う、夢ではない。俺の本能がそう告げている。
逃げろ、このままでは死ぬ。俺の本能がそう叫んでいる。
「う、うわあああああああああああああああ!!!!」
その後は、無我夢中だった。
何が起きているかわからない。
だが、そんな中でも一つだけ俺の中で明確な行動の指針ができた。
逃げること。
とにかくあの、この世のものとは思えないような異形から逃げること。
背を向け、全力で走る。
──死ぬ、死んでしまうっ!
いや、死ぬとかいうより以前に、そもそも生理的に受け付けない。
インターネットで見るような閲覧注意とつけられた画像なんかよりも遥かにグロテスクな見た目。
自分の脳では処理することができない圧倒的な生理的嫌悪感。
「だれかあああああああ、だれっかああああああ」
走りながら、とにかく叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。
後ろから響いてくる草を分ける音。
間違いない。あの異形は自分を追っている。
「たすけてえええええええ、たすけ、たすけてええええええええっ!」
視界が涙でにじむ。
心臓の鼓動が気持ち悪い程早くなる。
そんな状態で走ればどうなるか──言うまでもない。
「ぐぁっ」
俺は足元のバランスを崩しそのまま倒れこむ。
急いで体勢を整えようにするも恐怖でひきつり体がうまく動かせない。
「う、あ……」
その間に、そのムカデは俺の近くまで寄ってきていた。
あんなに走ったのにもうこんな近くまでいる。その事実が俺の絶望感を更に増した。
「な、なんで……」
なんでこうなったのか、俺は理解できなかった。
いつものようにネトゲをやり、いつものように狩りをして、何の変哲もない日を送るはずだったのに。
──いや、むしろそれが原因なのか?
まともに働かず親に迷惑をかけ、社会から無能の烙印を押された自分だからこそ、こうなっているのか。
これが天罰というものなのか。
「う、あ、う……」
もうだめだ。起き上がることもできない。恐怖で体が動かない。
──死ぬっ!
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