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第1章 チャラ男の理由
大学デビュー
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しかし、大学のスタートは大失敗だった。
入学式の前日、緊張のせいか発作で倒れて入院。そのまま半月も休んでしまった。
もう友達グループとか固まってるよな。レポートも一緒にやる人いないだろ。
……もう友達グループとか固まってるよな。レポートとかも一緒にやる人いないだろ。
――やばい。大学生活、またボッチ確定か?
最悪な気持ちで教室に入ると、いきなり声をかけられた。
「よぉ。お前、ずっと休んでた小宮だろ? 俺、高橋啓介。基礎ゼミと第二外国語、同じクラスなんだ。よろしくな」
「よ、よろしく……」明るく声をかけてきてくれたのが啓介だった。
「やっと来たな。入学早々二週間もサボる奴って、どんなヤツだよって話題になってたんだよ」
「……サボる?」
健康な大学生男子には、病気という想定が最初からないのだろう。
「でな。クラスで噂になってた二択はこれ。――無理して大学入った引きこもりの陰キャか、遊びまわってるチャラ男か」
「えっ?」
何なんだ?その極端すぎる選択肢。
「で、俺はチャラ男説に一票。ほら、やっぱそうだろ?」
啓介が勢いよく肩を叩いてくる。
いやいや、絶対に陰キャの方だろ。どこをどう見たら、チャラ男に見えるんだ?
病み上がりで顔色悪いのを隠すためのバケットハット?
それとも親父がくれたパワーストーン付きブレスレットのせいか?
あるいはネットで調べた「大学デビューおすすめコーデ」で選んだ、黒白でぐるぐるっとした柄のシャツのせいか……?。
……ああ、どれも怪しい。
「隠すなって。雰囲気でわかるんだって。まあ、これから仲良くやろうぜ。」
「…えっ? あっ、ああ。」
その瞬間、頭の中で雷が落ちたみたいにひらめいた。
チャラ男! チャラ男で通せばいいんだ!
そうだ。チャラ男だと思われればいいんだ。そうすれば、休んでも早退しても、誰も詮索してこない。自然に流せる。
問題は、チャラ男って具体的にどういうんだっけ?
千尋の脳内データベースがすごい勢いで、マンガやドラマの知識から「チャラ男」を探し出す。
えーと。チャラ男は下の名前で呼ぶ、これが絶対に抑えなくちゃならない基本。そして、距離感ゼロで、それからボディタッチが多めな気もする。
「俺のことは千尋って呼んで。これからよろしくな、啓介。」
啓介の肩をポンポンと叩いてみた。
チャラ男って、たぶんこういうノリだろ。たぶん。
こうしてチャラ男としての千尋の大学生活が始まった。
きっと本物のチャラ男にしたら、千尋の「偽装チャラ男」はすぐに見抜かれてしまうだろう。
しかし、千尋の学部は「理工学部」だ。男子学生率90%。それもほとんどが真面目な理系男子。
だから、偽装チャラ男はなかなか気づかれないし、心根が優しい理系男子たちは、千尋の言葉を全部間に受けてくれる。
友だち同士の飲み会に誘われると、
「ごめん。この後、女の子と約束してんだよね。次は必ず行くわ。」
軽く手を上げて、へへへっと笑顔を作る。そうすれば、みんな騙されてくれる。ちなみに女の子との約束は、通院して看護師さんに点滴してもらう、ってことだ。
「お前、軽すぎ。」「今度、合コンをセッティングしてくれよ~」
そんな声に背を向けて大学を出てから、軽い足取りまでも偽装して駅へ向かう。
電車の中、吊革を握る手が、少し震えている。熱があるようだ。でも、よかった。声をかけてもらえた。大学では友人関係がうまくいっている。
チャラ男キャラは、何かと都合がよかった。
「あいつはチャラいから」で片づけられるから、講義を休んでも、誰も体調のことなんて疑わないし、無理に詮索もしてこない。
多少、洋服代がかさんで、ピアスの穴を開けるのにビビったけど、チャラ男というキャラ設定っていうか、仮面があったから、大学生活はそれなりにうまくやってこられた。
そして今、4年生。卒業まであと半年。
就職活動はうまく進んでいないが、どうにかここまではやってこれた。
たぶん、自分なりにはうまくやれている。
友だちだっている。どうにかこうにか、みんなと同じペースで進めていた。
入学式の前日、緊張のせいか発作で倒れて入院。そのまま半月も休んでしまった。
もう友達グループとか固まってるよな。レポートも一緒にやる人いないだろ。
……もう友達グループとか固まってるよな。レポートとかも一緒にやる人いないだろ。
――やばい。大学生活、またボッチ確定か?
最悪な気持ちで教室に入ると、いきなり声をかけられた。
「よぉ。お前、ずっと休んでた小宮だろ? 俺、高橋啓介。基礎ゼミと第二外国語、同じクラスなんだ。よろしくな」
「よ、よろしく……」明るく声をかけてきてくれたのが啓介だった。
「やっと来たな。入学早々二週間もサボる奴って、どんなヤツだよって話題になってたんだよ」
「……サボる?」
健康な大学生男子には、病気という想定が最初からないのだろう。
「でな。クラスで噂になってた二択はこれ。――無理して大学入った引きこもりの陰キャか、遊びまわってるチャラ男か」
「えっ?」
何なんだ?その極端すぎる選択肢。
「で、俺はチャラ男説に一票。ほら、やっぱそうだろ?」
啓介が勢いよく肩を叩いてくる。
いやいや、絶対に陰キャの方だろ。どこをどう見たら、チャラ男に見えるんだ?
病み上がりで顔色悪いのを隠すためのバケットハット?
それとも親父がくれたパワーストーン付きブレスレットのせいか?
あるいはネットで調べた「大学デビューおすすめコーデ」で選んだ、黒白でぐるぐるっとした柄のシャツのせいか……?。
……ああ、どれも怪しい。
「隠すなって。雰囲気でわかるんだって。まあ、これから仲良くやろうぜ。」
「…えっ? あっ、ああ。」
その瞬間、頭の中で雷が落ちたみたいにひらめいた。
チャラ男! チャラ男で通せばいいんだ!
そうだ。チャラ男だと思われればいいんだ。そうすれば、休んでも早退しても、誰も詮索してこない。自然に流せる。
問題は、チャラ男って具体的にどういうんだっけ?
千尋の脳内データベースがすごい勢いで、マンガやドラマの知識から「チャラ男」を探し出す。
えーと。チャラ男は下の名前で呼ぶ、これが絶対に抑えなくちゃならない基本。そして、距離感ゼロで、それからボディタッチが多めな気もする。
「俺のことは千尋って呼んで。これからよろしくな、啓介。」
啓介の肩をポンポンと叩いてみた。
チャラ男って、たぶんこういうノリだろ。たぶん。
こうしてチャラ男としての千尋の大学生活が始まった。
きっと本物のチャラ男にしたら、千尋の「偽装チャラ男」はすぐに見抜かれてしまうだろう。
しかし、千尋の学部は「理工学部」だ。男子学生率90%。それもほとんどが真面目な理系男子。
だから、偽装チャラ男はなかなか気づかれないし、心根が優しい理系男子たちは、千尋の言葉を全部間に受けてくれる。
友だち同士の飲み会に誘われると、
「ごめん。この後、女の子と約束してんだよね。次は必ず行くわ。」
軽く手を上げて、へへへっと笑顔を作る。そうすれば、みんな騙されてくれる。ちなみに女の子との約束は、通院して看護師さんに点滴してもらう、ってことだ。
「お前、軽すぎ。」「今度、合コンをセッティングしてくれよ~」
そんな声に背を向けて大学を出てから、軽い足取りまでも偽装して駅へ向かう。
電車の中、吊革を握る手が、少し震えている。熱があるようだ。でも、よかった。声をかけてもらえた。大学では友人関係がうまくいっている。
チャラ男キャラは、何かと都合がよかった。
「あいつはチャラいから」で片づけられるから、講義を休んでも、誰も体調のことなんて疑わないし、無理に詮索もしてこない。
多少、洋服代がかさんで、ピアスの穴を開けるのにビビったけど、チャラ男というキャラ設定っていうか、仮面があったから、大学生活はそれなりにうまくやってこられた。
そして今、4年生。卒業まであと半年。
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たぶん、自分なりにはうまくやれている。
友だちだっている。どうにかこうにか、みんなと同じペースで進めていた。
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