あの夏の嘘つき

suezu

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第2章 出会う

合コン?

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まだぶつぶつ文句を言う千尋の横で、啓介はご機嫌に店のドアを開けた。
千尋も続いて入ろうとした瞬間――後ろから、すっと肩に腕を回される。あの降臨した最高級のチャラ男、涼だ。
「千尋さんってかわいい名前ですね。顔もかわいいし。猫ちゃんみたい」
耳元で囁かれる。
「……はぁっ?」
猫ちゃんって俺のこと?
軽っ。初対面で肩に手を回すとか、距離感どうなってんだ。これ、かなり攻めたボディタッチ。具合悪い時に看護師さんに運んでもらうくらいの距離感。
こいつ。軽っ。
これか。これが本物のチャラ男ってやつか。
やべーな。外見だけモデル風かと思ったけど、内面まで軽くて薄くて、ペラッペラ。
しかも、香り。なんだこれ。ほんのり柑橘っぽい青い香り。香水?ヘアオイル?どっちにしても三次元でチャラい。
「今日はよろしくお願いしますね、千尋さん」
フフっと笑った涼は、目を細めずに、真っ直ぐ見てくる。するっと距離を詰めてくる自然さ。天然なのか、計算なのかは、よくわからないが、笑い方まで完成されてる。何しろ、動くたびにキラっと音がしそうなキラキラ感。夢の国のキラキラじゃなくて、ちょっと夜よりのキラキラながらの絶対にスクールカースト上位だったんだろう貫禄と余裕のオーラ。
絶対に気が合わない。
それが涼の第一印象だった。

思った通り、女子の視線が一斉に涼へと向いた。テンプレのような「キャー」こそ上がらなかったが、一瞬、息を吸った後で、目の輝きがうっとりとしたモードに変わった。涼は涼で、視線を浴びるのは慣れてるといったように、ゆっくり口角を上げて笑顔で視線に応えている。
 けっ。アイドルかよ。コイツ、自分に自信ありすぎだろ。合コンに出なくても、女が次々と溢れてくるだろう。なんでこんなところに来てんだよ。余裕ぶっこいてんじゃねーよ。

 おきまりの簡単な自己紹介の後、さっそく、女の子たちからの涼への質問が始まった。
「涼くんって背が高いね。何センチ?」
「最近、測ってないけど、185くらいですね。」
「すっごーい。理想的だよね。」
けっ、やっぱ、コイツ気に入らない。
「出身はどこ?やっぱり東京?」
「俺、中学に入るまでは東京だったんですけど、親の仕事の関係で中学からアメリカのカリフォルニアなんですよ、で、今も家族はそっちにいて、俺だけ東京で一人暮らしです。」
出たよ、帰国子女。それもカリフォルニアだって。コイツ、どんだけスペック積んでんだよ。チート野郎!
「涼くんってどこ住んでるの?」
「それは企業秘密です。」
オマエ、企業じゃねーだろ。
千尋はウーロン茶を飲みながら、心の中でつっこみを入れる。
「恋人とか、いる?」
「…うーん、内緒かな」
「そういうこと言う人って、たいてい、すごい美人の彼女がいるんだよね~」
「そうそう~」
女の子たちが口々にそう探りを入れ始めた。
「もしかして、一緒に住んでたりして」
「そんな感じする。年上の美人と一緒に住んでそう」。
「一緒に住んでるのは、冷蔵庫と電子レンジ…かな。」
「え~!うける。」

涼が恋愛リアリティショーの主人公のように中心で場を仕切っている。
「啓介、オマエがトークで盛り上げるんだろ。このままだと、アイツに全部、もっていかれるぞ。」
どうにか、涼中心の雰囲気を少しでも啓介に持っていこうと、千尋は隣に座っている啓介にそう小声で言うと、
「大丈夫、大丈夫。俺も考えてるから。最初から飛ばすとがっついてるみたいだろ。タイミングみて、俺も上げてくから」
啓介は平然と目の前のグラスの中の氷をくるくると回す。
「涼くん、バイトは何してんの?」
「知り合いのバーを手伝ったり、とかですかね。」
今度はバーか。ホントにコイツ、異次元に生息してんな。
「私、そのバーに行ってみたいな。ダメ?」
女の子の一人が甘えた声を出した。
「うーん。ぜひ、おいしいお酒をごちそうしたいけど。会員制だから、会員しか入れないんです。本当に残念だな。」
涼は首をかすかに傾げて、大きく瞬きをした。
あざとい。
絶対にコイツは残念だなんて思ってないだろ。
今のコイツの返事を翻訳すると「お前みたいなレベルの女が俺に近づけると思うなよ」ってことだろう。
お高くとまりやがってさ。
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