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第2章 出会う
大学生の遊びとは?
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千尋は心の中で毒気ついていると、ふと涼の視線がすっと横から差し込んできた。
「千尋さんはバーとか行きますか?どのあたりで遊んでるんですか?」
「俺?」
今ここで俺にふるか?ってか、遊ぶって何?大学生が遊ぶってなんだ?
「えーと、俺は…」
バーなんて行ったことないし、どう答えたらいい?
正解がわからない。遊ぶと言えば家でオンラインゲームかな、なんて正直には言えない。
「遊びでやることなんて、一つにしかないだろ。」
自分でも白々しいと鳥肌が立ちそうなくらいに思わせぶりに「フフっ」と笑ってみせる。思わせぶりすぎる返答だと思ったが、嘘はついていない。自分の頭の中では、大きなモンスターを狩るゲームのイメージが繰り広げられているが、どう考えるかは受け取る人次第だ。
ナンパかセックスか飲みか、ってきっと想像してるのだろうか。正解はゲームだけどね。
案の定、隣の啓介が盛大に吹き出した。
「お前、その言い方、それじゃ本当にただのチャラ男だって。」
「うっせーよ。俺はなんも言ってないだろ。」
言葉の裏を考えない素直な啓介にはいつも感謝だが、啓介が頑張らないから、このイケメンやろうの独壇場になってんだぞ、ととりあえず、啓介を横にらみする。
「そうかなぁ。俺には、千尋さんってチャラいっていうよりも、しっとりした静かな雰囲気に思えるから、一人でバーで飲んでるのも似合いそうです。すぐに誰かに口説かれそうだけど」
「へっ?」
せっかく、啓介がありがたい方向へと会話を流してくれたのに、こいつがまた余計なことを言う。
バーなんて行ったこともないし、何なら、人生で今までアルコールも飲んだことがないのに、バーが似合うわけないだろ。それに口説かれるって何だ?
「そういえば、千尋もバーでバイトしてるんだったよな。」
啓介が千尋の背中をトンと叩く。
「バー?俺が?」
あれ、そんなことを言ったことあるっけ?いろんな誤魔化し方をしてるけど、あとで収拾がつかなくなるから、基本的に嘘はつかないようにしているが。
「違ったっけ?ああ、そうだ。千尋のバイト先はカフェだった。でもお酒も出すって言ってたじゃん。」
そうだ、確か、前にバイトの話になった時に、「カフェでバイト」とはぐらかしたことを思いだした。
バイトっていうか、たまに、自分の家で父親の手伝いをしてるってだけだが。
「バーじゃなくて、本来はカフェっていうのか…まあ、そんなかんじ」
千尋の自宅の一階で父親がカフェをやっている。カフェっていう言葉から連想されるような店じゃないが、経営者の父親本人がカフェだと言い張るので、一応、そういうことにしている。まあ、下町にありそうな「喫茶店」だ。
千尋の病気が完治するものではなく、生涯付き合っていくものだと病院で告げられてすぐに、父は会社を辞めて家の1階を改装してカフェを始めた。いつでも千尋のそばにいられるようにしたのだろう。
もともとはおしゃれなカフェを目指したらしいが、下町の商店街の真ん中という場所柄、商店街のおじさん連中が入り浸るようになり、そのうちに誰かが焼酎のボトルを置いておくようになって、カフェというコンセプトからかなり離れた店になってしまった。メニューには堂々と「焼きそば」と「チャーハン」と書かれているし、時折、商店街の貸し切りでカラオケ大会も開かれている。
「千尋さんがカフェでバイトしてるって、なんかすごいわかる!」
「うん、クールに見えるし。女子高生に人気のイケメン店員って感じ」
女の子たちの話が今度はいきなり千尋の話題になってきた。
きっと、頭の中ではオシャレなカフェで爽やかに働く“理想のバリスタ”が展開されているんだろう。――現実は全然違うけど。
女の子たちの話が涼から離れると、すかさず、啓介が女の子たちの話の輪に、割り込んでくる。
「いやいや、それが、違うんだって。千尋はクールキャラじゃないんだよ。今は黒髪で黒づくめの服でシックにまとめてるけどさ、1年の頃は金髪で派手な格好してて、めっちゃチャラかったんだよ。リアルでやばい人にしか見えなかったから」
……そうだった。
1年の時に思いきって金髪にしたことがある。チャラい路線で行こうと決意した時に、簡単にチャラく見える方法と思って金髪にしたんだっけ。
その威力は想像以上で、地味な男子が多い理工学部の中で、またたくまに「イカレてる」「危ないヤツだチ」と思った以上の反響だった。
「千尋さんの金髪、見たかったな。もうやらないんですか?」
そう言いながら、涼がメニューを差し出してきた。
次のドリンクを選べってことだろう。さりげなく気がきく。
「金髪はもう二度とやらない。ブリーチが痛すぎて、俺には無理。」
「確かに。地肌、死ぬほど痛いですよね」
涼のハイトーンの髪も当然ブリーチしてるはずだ。でも傷んでる様子はない。
自分が金髪にした時は、髪が痛んで爆発するかというくらいにまとまらなかったのに、こいつのは逆にしっとりしてる。努力してるんだな、イケメンを保つのを大変だな、と涼の横顔を盗み見ると涼が気づいて視線があった。
「千尋さんはバーとか行きますか?どのあたりで遊んでるんですか?」
「俺?」
今ここで俺にふるか?ってか、遊ぶって何?大学生が遊ぶってなんだ?
「えーと、俺は…」
バーなんて行ったことないし、どう答えたらいい?
正解がわからない。遊ぶと言えば家でオンラインゲームかな、なんて正直には言えない。
「遊びでやることなんて、一つにしかないだろ。」
自分でも白々しいと鳥肌が立ちそうなくらいに思わせぶりに「フフっ」と笑ってみせる。思わせぶりすぎる返答だと思ったが、嘘はついていない。自分の頭の中では、大きなモンスターを狩るゲームのイメージが繰り広げられているが、どう考えるかは受け取る人次第だ。
ナンパかセックスか飲みか、ってきっと想像してるのだろうか。正解はゲームだけどね。
案の定、隣の啓介が盛大に吹き出した。
「お前、その言い方、それじゃ本当にただのチャラ男だって。」
「うっせーよ。俺はなんも言ってないだろ。」
言葉の裏を考えない素直な啓介にはいつも感謝だが、啓介が頑張らないから、このイケメンやろうの独壇場になってんだぞ、ととりあえず、啓介を横にらみする。
「そうかなぁ。俺には、千尋さんってチャラいっていうよりも、しっとりした静かな雰囲気に思えるから、一人でバーで飲んでるのも似合いそうです。すぐに誰かに口説かれそうだけど」
「へっ?」
せっかく、啓介がありがたい方向へと会話を流してくれたのに、こいつがまた余計なことを言う。
バーなんて行ったこともないし、何なら、人生で今までアルコールも飲んだことがないのに、バーが似合うわけないだろ。それに口説かれるって何だ?
「そういえば、千尋もバーでバイトしてるんだったよな。」
啓介が千尋の背中をトンと叩く。
「バー?俺が?」
あれ、そんなことを言ったことあるっけ?いろんな誤魔化し方をしてるけど、あとで収拾がつかなくなるから、基本的に嘘はつかないようにしているが。
「違ったっけ?ああ、そうだ。千尋のバイト先はカフェだった。でもお酒も出すって言ってたじゃん。」
そうだ、確か、前にバイトの話になった時に、「カフェでバイト」とはぐらかしたことを思いだした。
バイトっていうか、たまに、自分の家で父親の手伝いをしてるってだけだが。
「バーじゃなくて、本来はカフェっていうのか…まあ、そんなかんじ」
千尋の自宅の一階で父親がカフェをやっている。カフェっていう言葉から連想されるような店じゃないが、経営者の父親本人がカフェだと言い張るので、一応、そういうことにしている。まあ、下町にありそうな「喫茶店」だ。
千尋の病気が完治するものではなく、生涯付き合っていくものだと病院で告げられてすぐに、父は会社を辞めて家の1階を改装してカフェを始めた。いつでも千尋のそばにいられるようにしたのだろう。
もともとはおしゃれなカフェを目指したらしいが、下町の商店街の真ん中という場所柄、商店街のおじさん連中が入り浸るようになり、そのうちに誰かが焼酎のボトルを置いておくようになって、カフェというコンセプトからかなり離れた店になってしまった。メニューには堂々と「焼きそば」と「チャーハン」と書かれているし、時折、商店街の貸し切りでカラオケ大会も開かれている。
「千尋さんがカフェでバイトしてるって、なんかすごいわかる!」
「うん、クールに見えるし。女子高生に人気のイケメン店員って感じ」
女の子たちの話が今度はいきなり千尋の話題になってきた。
きっと、頭の中ではオシャレなカフェで爽やかに働く“理想のバリスタ”が展開されているんだろう。――現実は全然違うけど。
女の子たちの話が涼から離れると、すかさず、啓介が女の子たちの話の輪に、割り込んでくる。
「いやいや、それが、違うんだって。千尋はクールキャラじゃないんだよ。今は黒髪で黒づくめの服でシックにまとめてるけどさ、1年の頃は金髪で派手な格好してて、めっちゃチャラかったんだよ。リアルでやばい人にしか見えなかったから」
……そうだった。
1年の時に思いきって金髪にしたことがある。チャラい路線で行こうと決意した時に、簡単にチャラく見える方法と思って金髪にしたんだっけ。
その威力は想像以上で、地味な男子が多い理工学部の中で、またたくまに「イカレてる」「危ないヤツだチ」と思った以上の反響だった。
「千尋さんの金髪、見たかったな。もうやらないんですか?」
そう言いながら、涼がメニューを差し出してきた。
次のドリンクを選べってことだろう。さりげなく気がきく。
「金髪はもう二度とやらない。ブリーチが痛すぎて、俺には無理。」
「確かに。地肌、死ぬほど痛いですよね」
涼のハイトーンの髪も当然ブリーチしてるはずだ。でも傷んでる様子はない。
自分が金髪にした時は、髪が痛んで爆発するかというくらいにまとまらなかったのに、こいつのは逆にしっとりしてる。努力してるんだな、イケメンを保つのを大変だな、と涼の横顔を盗み見ると涼が気づいて視線があった。
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