あの夏の嘘つき

suezu

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第6章 揺れる

揺れる気持ち2

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でも、あの時の女の子たちは、みんな涼に興味を持っていた。せっかくの出会いだから、どうにか次につなげたい、そこで終わりにはさせないって思っているのだろう。
もはや記憶からも薄れている合コンが、まだ水面下で続いていて、女の子たちの涼への好意が、今も涼を狙っている。
モテるやつだから、当たり前のことなのに、自分の近くにいることが馴染んできたから、涼がそんなスペシャルなやつだということを意識しなくなってきていた。

海と涼。それにサーフィン、と要素を追加してイメージする。
やっぱり似合うな。明るめの髪をかき上げた時に落ちる雫、サーフボードと並んでも引けを取らない高身長。アイツ。海でもチート能力、全開すぎるだろ。

「海かあ。やばいよな」
それに引き換え自分にとっては、夏の海なんて、一番、縁がない場所だ。
炎天下で暑そうだし、砂浜まで暑くて、休むところないなんて無理。
その上、自分の水着姿なんて想像もつかない。こんな貧弱な体を人前にさらすっていうのも見る側見られる側、双方にいいことないし。ってその前に水着なんて持ってないし。

「そうそう。やばいよ」
啓介がにやっと笑いながら繰り返した。何を考えているのかはすぐにわかる。
「海だよ。水着だよ。女の子たちと水着でふれあいだよ。やばいよ。だからさ、俺たちも一緒にサーフィンに行こうぜ。」
啓介が無邪気に誘ってくる。
いやいや、無理。自分の体力では到底持たない。
「俺は……いいかな」
「なんで?千尋も行こうよ。水着の女の子たちと一緒にいられるチャンスなんてそうないし」
「いやいや、俺のキャラ的には、冷房の利いた部屋でアイス食ってる方が、女子にウケると思うんだわ。ほら、俺って白い肌で日陰のプリンス系のイメージで売ってるわけだし。海で汗だくとかってアピるの、俺の方向性とは違うんだよね。」
 とりあえず、無理やり、とってつけたような言い訳をでっちあげる。
「なんだよ、その謎理論。いいからさ、千尋、一緒に行こうよ。俺ら、学生最後の夏休みだぞ。水着女子とぴたーっと触れ合おうよ」
「啓介、お前な。そんなゲスいことを考えている暇があったら、就活しろよ。」
「ゲスいって。水着の女の子を嫌いな男なんていないだろ。」
そんなことないよ。俺、水着女子なんて興味ないし。このスケベ野郎がよ~
頭の中で思い切り言い返してみても、全然、すっきりしない。
その夜、とりあえず、涼にスマホでメッセージを送るだけは送った。
『今日、大学で啓介に会ったんだけど、涼に話があるんだって。啓介に連絡してくれ。』
女の子が海へ行きたいと言っているらしいから、という一文を最後に付け加えてみたが、それはすぐに消した。

きっと啓介が説明したほうがいいだろう。千尋から伝えるとややこしくなるかな、と思っただけのはずが、なぜか、心のどっかで「俺って、実はちっちゃいヤツなのかも」と思ってしまう。
送信ボタンを押してからも、なんとなく落ち着かない。
いや、別に涼が女の子たちと海に行こうかどうしようか、俺には関係ないけどね。
でもさ、ちょっと気になるっていうか。
画面の右下にある小さなチェックマークをじっと見つめる。
既読にならない。いつもだったら、すぐに既読になって、すぐに返事がくるのに。
10分以上たつのに、何も変わらない。
「忙しいんだろ、きっと。」
そう頭で分かっていても、何度も確認してしまう。
涼は何してるんだろう?
アメリカからお母さんが来たからって、スマホのチェックが出来ないほど忙しいのか?それとも、誰かとどこかで遊んでいるのかもしれない。
勝手な想像だけが、広がっていく。
きっと、涼は千尋の何十倍、いや、何百倍も広い人間関係を持ってるし、人好きがする陽キャだし、誰かとどっかで会って、飲んでるっていうほうが本来が普通だ。
だから、返信が遅いくらいなんだよ。
そう思うのに、自分でも驚くくらい、スマホが手放せなかった
ただ「OK」とか、スタンプ一個とか。それだけでいいから、早く送れよ~と、スマホに向かってイラついてしまう。
ふう…
思わず洩れた自分のため息の大きさにびっくりした。
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