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第7章 高層ビルで花火をみる
花火大会
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「これは…想像以上」
「…そうだね」
そろそろ夏休みも終盤に近付く頃、夏休みにふたりでやりたいことの残りの花火大会に出かけてみたが、電車を降りたホームで会場に向かう人混みをみて、唖然としてしまった。
ホームから人が溢れて、出口の先には、押し寄せる人の波が見える。
混んでるとは知っていたが、人が溢れすぎている。
「やっぱ、人気あるんだな、花火って」
思わずそう口からこぼれると、隣の涼がすぐに振り返る。
「花火が小さくてもいいですか?」
きっと、花火が小さく見える場所でもいいか、ということだろう。
「俺はいいけど、涼はいいの?近くでみたいんだろ?」
花火大会へ行きたいといったのは涼のリクエストだ。
「そうだけど、でも、こんなに混んでるんじゃ、近くよりも遠くで静かにみるほうがいいな。会場に着く前に疲れ果てちゃうよね」
千尋が「だよな」と頷くと、
「じゃ、こっち。ちょっとあてがあるんだ」
はぐれないようにと、涼が千尋の手をとり、人混みを逆行して反対側のホームから都心へ向かう電車に乗った。
向かったのは都会のオフィス街だった。花火大会とはかなり離れた場所だ。
週末の夜ということもあり、ビルの灯りはまばらで、静かな気配が漂っている。
オフィス街を歩いて、涼は慣れたように、大きな高層のインテリジェントビルに入っていく。
このあたりでは一番大きなビルで、商業施設とオフィスが入った有名な高層ビルだ。外資系やスタートアップも多く入るビルで千尋は、名前は知っていたが、ビルの中に入るのは初めてだった。
広いエントランスは天井まで届くガラス張りの窓から夜の街の灯りがみえ、中央には大ぶりの葉を茂らせた観葉植物がいくつも植え込まれ、小さな庭のような一角をつくっている。まるで都会のビルの中にだけ許された、緑の静かなオアシスのようだった。
平日なら、多くの人でにぎわうのだろうが、休日夜は下層階にあるレストランや店舗もクローズしているらしく、都会のど真ん中なのに、ひっそりとした空間が広がっている。
迷うことなく涼はエレベーターホールへと向かい、最上階の少し下のフロアのボタンを押した。
降りた先はこのビルのレストランフロアらしい。休日で多くの店が閉まっている中で、フロアの隅で、有名なコーヒーチェーン店だけが店を開けていた。
「こっちの席にしよう。」
客がまばらな店内は冷えすぎなほど冷房がきき、静かな音楽が流れている。
「ほら、あっちの方角をみて。見えるでしょ。」
涼が指す方向を見ると、ビル群を抜けた先の空に花火が上がっているのが見えた、
「見える見える。すげー」
小さな花火というのはこういうことだったのか。
離れた高い場所からの花火は、音もなくパッと開く。
赤、オレンジ、紫。パッと散る花火もあれば、枝垂れていく花火もある。
庭先で父親と線香花火をしたことがあるくらいで、千尋にとってはこれが初めての「大きい花火」だ。
「こんな距離からでもこんなに見えるんだな。あれ、相当高くまで上がってるんだろ」
地下鉄で数駅分、ざっと2キロは離れているはずなのに、ビルの谷間から大輪がはっきりと開いて見える。
「…そうだね」
そろそろ夏休みも終盤に近付く頃、夏休みにふたりでやりたいことの残りの花火大会に出かけてみたが、電車を降りたホームで会場に向かう人混みをみて、唖然としてしまった。
ホームから人が溢れて、出口の先には、押し寄せる人の波が見える。
混んでるとは知っていたが、人が溢れすぎている。
「やっぱ、人気あるんだな、花火って」
思わずそう口からこぼれると、隣の涼がすぐに振り返る。
「花火が小さくてもいいですか?」
きっと、花火が小さく見える場所でもいいか、ということだろう。
「俺はいいけど、涼はいいの?近くでみたいんだろ?」
花火大会へ行きたいといったのは涼のリクエストだ。
「そうだけど、でも、こんなに混んでるんじゃ、近くよりも遠くで静かにみるほうがいいな。会場に着く前に疲れ果てちゃうよね」
千尋が「だよな」と頷くと、
「じゃ、こっち。ちょっとあてがあるんだ」
はぐれないようにと、涼が千尋の手をとり、人混みを逆行して反対側のホームから都心へ向かう電車に乗った。
向かったのは都会のオフィス街だった。花火大会とはかなり離れた場所だ。
週末の夜ということもあり、ビルの灯りはまばらで、静かな気配が漂っている。
オフィス街を歩いて、涼は慣れたように、大きな高層のインテリジェントビルに入っていく。
このあたりでは一番大きなビルで、商業施設とオフィスが入った有名な高層ビルだ。外資系やスタートアップも多く入るビルで千尋は、名前は知っていたが、ビルの中に入るのは初めてだった。
広いエントランスは天井まで届くガラス張りの窓から夜の街の灯りがみえ、中央には大ぶりの葉を茂らせた観葉植物がいくつも植え込まれ、小さな庭のような一角をつくっている。まるで都会のビルの中にだけ許された、緑の静かなオアシスのようだった。
平日なら、多くの人でにぎわうのだろうが、休日夜は下層階にあるレストランや店舗もクローズしているらしく、都会のど真ん中なのに、ひっそりとした空間が広がっている。
迷うことなく涼はエレベーターホールへと向かい、最上階の少し下のフロアのボタンを押した。
降りた先はこのビルのレストランフロアらしい。休日で多くの店が閉まっている中で、フロアの隅で、有名なコーヒーチェーン店だけが店を開けていた。
「こっちの席にしよう。」
客がまばらな店内は冷えすぎなほど冷房がきき、静かな音楽が流れている。
「ほら、あっちの方角をみて。見えるでしょ。」
涼が指す方向を見ると、ビル群を抜けた先の空に花火が上がっているのが見えた、
「見える見える。すげー」
小さな花火というのはこういうことだったのか。
離れた高い場所からの花火は、音もなくパッと開く。
赤、オレンジ、紫。パッと散る花火もあれば、枝垂れていく花火もある。
庭先で父親と線香花火をしたことがあるくらいで、千尋にとってはこれが初めての「大きい花火」だ。
「こんな距離からでもこんなに見えるんだな。あれ、相当高くまで上がってるんだろ」
地下鉄で数駅分、ざっと2キロは離れているはずなのに、ビルの谷間から大輪がはっきりと開いて見える。
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