あの夏の嘘つき

suezu

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第11章 痛み

触れる

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ピコッという音とともに、涼がリモコンで部屋の灯りを少し落とした。
「そこに座って」
涼に言われ、ベッドのふちに腰を掛けると、涼が千尋のパジャマのボタンをはずし始めた。
もしかしたら、涼だって初心者かもしれない。
何度も経験あるようなことを雰囲気を出しているが、手の震えは隠せていなかった。

「面倒だろ。こっちのが楽」
下までボタンを外すのは手間がかかるだろうと、涼が三つ外してくれたところで、自分で首からすっぽりと脱いだ。
「あ、最後まで外したかったのに」
涼が少し不満げに言う。
「なんで、面倒だろ」
「俺、千尋さんのことは、全部、丁寧にやりたいんだ」
「…そんなもん?」
かといって、脱いじゃったものはしょうがない。
今更、パジャマを着るわけにはいかず、上半身裸のままベッドに横になる。
「寒くない?」
「全然、寒くない」
そういったのに、涼が暖めるように抱きしめてきた。
「寒くないって」
「もっと触れたいだけ」

 そういうと、涼も寝たままの姿勢でパジャマにしていたTシャツを脱ぐ。初めて見る涼のカラダだ。
細いと思っていたのに、きっちりと、そして控えめに、整った筋肉がついている。
”鍛えてます”っていうのではなく、すっと優しい筋肉だ。
鎖骨のラインが、白く三日月のように浮き出ていて、その下にある胸板も腹も筋が入っているのに、しなやかだ。
「……すげーな」
素直に漏れた声に、涼がきょとんとする。
「何が?」
「涼の筋肉。筋肉まできれいなんてさ」
「千尋さんのほうがずっときれいだと思うけど」
そう改めて言われてしまうと、自分の貧相な身体がみっともなく見える。涼のカラダをみた後だったら、絶対に脱いだりしてなかった。
涼の裸の上半身が千尋にピタッとくっついてくると、あのさわやかで少し甘い香りが鼻腔に届く。
「涼っていい匂いがするなって最初から思ってたんだ。これってシャンプーの香りだったんだな。ジャスミンシトラス。もう覚えた。」
「今日は千尋さんも同じ香りだよ。」

触れ合った皮膚で涼の体温を感じた。触れ合う皮膚は最初の少しねっとりとした違和感を薄れていき、カラダの境界線がわからなくなってくるようだ。
「体温が同じくらいだ。」
「そうかな。俺のほうが高いと思うよ。ねっ」
涼はカラダを傾けると、千尋に唇をあわせ、舌を入れてきた。
「うっ。」
深く舌を絡ませられて少しえづいてしまいそうになる。
簡単に唾液が口の中にあふれ、口元からシーツを滴り落ちた。口の周りが唾液でベタベタだ。
これって、拭うものなのか、それとも、そのまま、垂れ流しておくべきなのか?まるでわからない。
「なんで冷静になってるんですか?」
涼の舌が今度は千尋の耳をなめる。
「うっ、…べたべただなって」
耳の奥でグチュリと音がして、首筋にかけてキーンと少しの電流が走った。
「セックスって、全身がべたべたになるってことだよ」

セックス。涼の口から初めてそのワードが出てきた。
今からセックスするんだって、わかってるのに、実際にその言葉を聞くだけで頭の中の思考が止まる。
未知。ほんと、未知。

「……じゃあ、触れるね」
涼が律儀にそう前置きをして、そっと千尋の腰に腕を回し、千尋のパジャマのズボンに指をかけ、静かに脱がそうとする。がくがくとその指先が大きく震えている。
 やっぱり、涼も初心者かもしれない。当たり前だ。まだ20歳だ。
リードするなんて言って、安心させようとしてくれているのだろう。
緊張している人を見ると緊張がほぐれるとはよく言ったもので、涼の顔も指先も見つめられるようになってきた。
パジャマと下着を一緒に脱がせられ、下半身が心もとない状態になる。
わかっていてもこうして向き合うのは思ったよりもずっと恥ずかしくて、無防備になった両足を摺り寄せる。
「涼。オマエも早く脱げよ。俺だけじゃ、恥ずかしいだろ」
「…うん」
涼も器用に足を動かして下着を脱ぐと、そのまま千尋を胸に抱きしめた。
やばいやばい。
足が全面的にくっついてる。まずい。反応してしまいそうだ。
もじもじと腰を離そうと動かすと、逆に涼が片足を千尋の足に絡めてくる。ふともも同士が絡まりあっている。
この体勢じゃ、反応するなってほうが無理。
いいのか?もういいのか?もう、反応していいのか?
 抑えようとして抑えられるものじゃないけど、俺一人だけじゃ恥ずかしいし、と涼の身体をうかがう。
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