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第13章 背中に手を回す
背中に手を回す
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「じゃさ…」
次の言葉を言っていいのか、ちょっと迷った。まだ、これからのことを涼に何も聞いていない。
だから、口にするのに、少し勇気が必要だった。
「じゃさ…また、二人で作ろう。」
涼も一瞬、とまどったように間が空いた。
「……いいの?千尋さん、また、一緒に作っていいの?」
面白いくらいにわかりやすく涼が目を輝かせてうれしそうな顔をするので、思わず吹き出しそうになった。
「一緒に作ろう。なんだっけ。コルビジェ?だっけ。そんなデザインでさ。」
「あ、コルビジェ風ね。じゃ、さっそくデザインを考える。」
うれしそうに笑いながら、涼が遠慮なく千尋の肩に頬をすり寄せてくる。きっとこれからも、昔の二人のままでいられる。
うれしくて、うれしくて、でもちょっとくすぐったくて、胸がふわっと熱くなった。
その感情の懐かしさに、目の裏も熱くなる。
「でもさ、涼は動いて、そのくらいは動いて大丈夫なのかよ?」
手術をしてからきっと2年くらい。どの程度まで涼の身体が戻っているのか、まだ、聞いていなかった。
「全然大丈夫。それに、きちんと自分で節制して無理はしない。それは千尋さんと同じだよ。」
そう言いながら、涼は自分の心臓に手を当てた。
きっとそこには大きな傷が残っているはずだ。
モデルを夢見ていた涼が、その傷をどんな気持ちで受け止めたのかと思うと切なくなる。
でも、乗り越えて一歩進んでるんだ。
「あっ。そういえば、前に涼は自分のカラダを使って生きたいって。それってモデルをやりたいってことだったんだな」
「ああ。確かそんなこと言ったね。…でも、あの時は、モデルじゃなくても、自分の身体を動かして仕事が出来るくらいの健康になりたいって、それがその時の願掛けみたいなものだったんだ。」
「……よかったな。願掛けがきいて」
でも、これからも人生が続いていって、毎日、自分の身体のご機嫌をうかがいながら生きていく。
時々、すごくイライラして、イヤになって、でも投げ出せないそんな日々が続くことも千尋はよく知っている。
けれど、きっとそんな日々も、涼は楽しいものにしていくのだろう。
その隣で千尋も一緒に笑っていたいと思う。
そんなこと、涼の前では絶対に言わないけど。
「あの時、『カラダを使う』って言ったら、千尋さんがエッチな想像したんだよね。かわいかったな。あれ」
「してねーよ。勝手に人の頭ん中を想像すんなよ」
「いや、絶対に想像してたよ。顔が赤かったし」
フフフっとからかうように涼が笑う。あの頃のままの笑顔だ。
「ねっ。千尋さんが想像したみたいなこと、しようよ。」
涼が千尋の背中に手を回してきた。
「だから、想像してねーし」
「だって、会いたかったでしょ。俺は毎日毎日、会いたくて仕方なかった」
「仕方ねーなー」
千尋は、そっと涼の背中に腕を回して、力を込めた。
会いたかったに決まってるだろ。
それ以外のことなんて、何も考えられなかった。
でもさ、そんなこと言わない。絶対に言ってやんない。
だからかわりに、もっとぎゅっと涼を抱きしめた。
涼の背中は、昔より少しだけ力強くなっていて、でも変わらず、千尋にとっては一番落ち着く場所だった。
了
次の言葉を言っていいのか、ちょっと迷った。まだ、これからのことを涼に何も聞いていない。
だから、口にするのに、少し勇気が必要だった。
「じゃさ…また、二人で作ろう。」
涼も一瞬、とまどったように間が空いた。
「……いいの?千尋さん、また、一緒に作っていいの?」
面白いくらいにわかりやすく涼が目を輝かせてうれしそうな顔をするので、思わず吹き出しそうになった。
「一緒に作ろう。なんだっけ。コルビジェ?だっけ。そんなデザインでさ。」
「あ、コルビジェ風ね。じゃ、さっそくデザインを考える。」
うれしそうに笑いながら、涼が遠慮なく千尋の肩に頬をすり寄せてくる。きっとこれからも、昔の二人のままでいられる。
うれしくて、うれしくて、でもちょっとくすぐったくて、胸がふわっと熱くなった。
その感情の懐かしさに、目の裏も熱くなる。
「でもさ、涼は動いて、そのくらいは動いて大丈夫なのかよ?」
手術をしてからきっと2年くらい。どの程度まで涼の身体が戻っているのか、まだ、聞いていなかった。
「全然大丈夫。それに、きちんと自分で節制して無理はしない。それは千尋さんと同じだよ。」
そう言いながら、涼は自分の心臓に手を当てた。
きっとそこには大きな傷が残っているはずだ。
モデルを夢見ていた涼が、その傷をどんな気持ちで受け止めたのかと思うと切なくなる。
でも、乗り越えて一歩進んでるんだ。
「あっ。そういえば、前に涼は自分のカラダを使って生きたいって。それってモデルをやりたいってことだったんだな」
「ああ。確かそんなこと言ったね。…でも、あの時は、モデルじゃなくても、自分の身体を動かして仕事が出来るくらいの健康になりたいって、それがその時の願掛けみたいなものだったんだ。」
「……よかったな。願掛けがきいて」
でも、これからも人生が続いていって、毎日、自分の身体のご機嫌をうかがいながら生きていく。
時々、すごくイライラして、イヤになって、でも投げ出せないそんな日々が続くことも千尋はよく知っている。
けれど、きっとそんな日々も、涼は楽しいものにしていくのだろう。
その隣で千尋も一緒に笑っていたいと思う。
そんなこと、涼の前では絶対に言わないけど。
「あの時、『カラダを使う』って言ったら、千尋さんがエッチな想像したんだよね。かわいかったな。あれ」
「してねーよ。勝手に人の頭ん中を想像すんなよ」
「いや、絶対に想像してたよ。顔が赤かったし」
フフフっとからかうように涼が笑う。あの頃のままの笑顔だ。
「ねっ。千尋さんが想像したみたいなこと、しようよ。」
涼が千尋の背中に手を回してきた。
「だから、想像してねーし」
「だって、会いたかったでしょ。俺は毎日毎日、会いたくて仕方なかった」
「仕方ねーなー」
千尋は、そっと涼の背中に腕を回して、力を込めた。
会いたかったに決まってるだろ。
それ以外のことなんて、何も考えられなかった。
でもさ、そんなこと言わない。絶対に言ってやんない。
だからかわりに、もっとぎゅっと涼を抱きしめた。
涼の背中は、昔より少しだけ力強くなっていて、でも変わらず、千尋にとっては一番落ち着く場所だった。
了
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