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☆三度目の岩田家訪問 その2
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愛里……愛里……君はとっても……、
「か、かわいい……」
理性ではない、ほぼ本能。勝手に口からこぼれてしまっていた。
すると、愛里は口を丸めてカチッとフリーズ。白い小顔がアルコール温度計みたいに紅色にぐんぐん上昇してゆく。
「山柿。きっ貴様っ!」
響いた怒号に、はたと状況を理解したが、時既に遅くて、飛んで来た岩田に首根っこを掴み上げられていた。
ぶんぶん首を揺すられる僕。
く、苦しい……っ!
岩田は妹の事になると敏感に反応してしまうが、実際に行動したのは今が初めてだ。
愛里は顔色を変え、ばたばたとキッチン奥へと背中の羽根を揺らしながら駆けて行き、テーブルの横からひょいと顔だけ覗かせている。
「落ち着け岩田。違うだろ! 褒めただけだろ。『可愛いね、トキメキTVの最終選考大変だったね』と労をねぎらおうと思っただけで――」
これくらいで岩田が瞬間湯沸かし器になるのなら、謝罪文を公開したら僕は殺されるかもしれない。
「貴様から、劣情を感じたっ!」
「違うって!」
激しくもみ合っていたが、襟を掴んでいた岩田の手を振りほどく。
岩田は真っ赤な顔だ。直ぐに壁に駆け寄って、掛けてある日本刀を握ると腰の位置で構えた。すうっと息を吐き冷静を確保。右手はいつでも刀が抜けるように柄に添えたまま、足先をじりじりとカーペット上に滑らせる。
「本気か、おい……」
冗談なんかではない。どう見ても本気だった。
慌てて両手で万歳のポーズを作って見せる。
「僕がそんな感情を抱くと思っているのかっ? 大親友の妹を可愛いと思っただけで、それ以上の感情が宿るはずがないだろ」
岩田の目は据わったままだ。
愛里の事だとここまで感情が振り切れるのか? 異常だ異常だ。
「僕がこの子に何かしたか? 可愛いと褒めただけだろ?」
頼む冷静になってくれっ!
「僕とお前は中学校から続いている親友じゃないか。一緒に喜んだり悔しがったりした仲じゃないか。お前が嫌がる事を僕がすると思うか? 岩田よ」
「うむ。そうだな……」
岩田がぽつりと呟いて、大きく息を吐く。何度か肩で呼吸して、
「悪かったかもしれん。……いや、確かに親友を疑った俺が悪かった」
頭すら下げはしなかったが、日本刀を壁に戻してくれた。
愛里は遠くキッチンのテーブルから、恐る恐る顔を覗かせてこちらの様子を伺っている。
どうしょう……。
つい流れで愛里に何もしていないみたいな事を言い切ってしまった。
正確にはもうやってしまっているんだけど、取り返しのつかないような破廉恥行為を、やらかしちまっているんだけど……。
謝るつもりだったのに、岩田のママに土下座して謝罪するつもりだったのに、これじゃー言いにくいなんてもんじゃーないっ!
「愛里~ぃ。驚いたかい。ごめんね。お兄ちゃんが悪かった~」
岩田がまた猫なで声を始める。
愛里がキッチンテーブルから覗かせた顔をふるふる左右に振っている。
「だいじょーぶです」
「うんうん。そーか。そーか」
相変わらず、兄バカだ。妹が犯罪者になっても守るだろうな。
「いいかい愛里。お兄ちゃんたち今からここで勉強するからね。愛里は静かにしていてね」
覗いたまま愛里がこくこく頷く。
背中の羽根がぱたぱた揺れている。
岩田よ、なぜその調子を他の女子相手にやらない?
やれば喜ぶぞ絶対。僕とは違う黄色い叫びをして、気絶するかも。どんだけモテモテになることやら。
「か、かわいい……」
理性ではない、ほぼ本能。勝手に口からこぼれてしまっていた。
すると、愛里は口を丸めてカチッとフリーズ。白い小顔がアルコール温度計みたいに紅色にぐんぐん上昇してゆく。
「山柿。きっ貴様っ!」
響いた怒号に、はたと状況を理解したが、時既に遅くて、飛んで来た岩田に首根っこを掴み上げられていた。
ぶんぶん首を揺すられる僕。
く、苦しい……っ!
岩田は妹の事になると敏感に反応してしまうが、実際に行動したのは今が初めてだ。
愛里は顔色を変え、ばたばたとキッチン奥へと背中の羽根を揺らしながら駆けて行き、テーブルの横からひょいと顔だけ覗かせている。
「落ち着け岩田。違うだろ! 褒めただけだろ。『可愛いね、トキメキTVの最終選考大変だったね』と労をねぎらおうと思っただけで――」
これくらいで岩田が瞬間湯沸かし器になるのなら、謝罪文を公開したら僕は殺されるかもしれない。
「貴様から、劣情を感じたっ!」
「違うって!」
激しくもみ合っていたが、襟を掴んでいた岩田の手を振りほどく。
岩田は真っ赤な顔だ。直ぐに壁に駆け寄って、掛けてある日本刀を握ると腰の位置で構えた。すうっと息を吐き冷静を確保。右手はいつでも刀が抜けるように柄に添えたまま、足先をじりじりとカーペット上に滑らせる。
「本気か、おい……」
冗談なんかではない。どう見ても本気だった。
慌てて両手で万歳のポーズを作って見せる。
「僕がそんな感情を抱くと思っているのかっ? 大親友の妹を可愛いと思っただけで、それ以上の感情が宿るはずがないだろ」
岩田の目は据わったままだ。
愛里の事だとここまで感情が振り切れるのか? 異常だ異常だ。
「僕がこの子に何かしたか? 可愛いと褒めただけだろ?」
頼む冷静になってくれっ!
「僕とお前は中学校から続いている親友じゃないか。一緒に喜んだり悔しがったりした仲じゃないか。お前が嫌がる事を僕がすると思うか? 岩田よ」
「うむ。そうだな……」
岩田がぽつりと呟いて、大きく息を吐く。何度か肩で呼吸して、
「悪かったかもしれん。……いや、確かに親友を疑った俺が悪かった」
頭すら下げはしなかったが、日本刀を壁に戻してくれた。
愛里は遠くキッチンのテーブルから、恐る恐る顔を覗かせてこちらの様子を伺っている。
どうしょう……。
つい流れで愛里に何もしていないみたいな事を言い切ってしまった。
正確にはもうやってしまっているんだけど、取り返しのつかないような破廉恥行為を、やらかしちまっているんだけど……。
謝るつもりだったのに、岩田のママに土下座して謝罪するつもりだったのに、これじゃー言いにくいなんてもんじゃーないっ!
「愛里~ぃ。驚いたかい。ごめんね。お兄ちゃんが悪かった~」
岩田がまた猫なで声を始める。
愛里がキッチンテーブルから覗かせた顔をふるふる左右に振っている。
「だいじょーぶです」
「うんうん。そーか。そーか」
相変わらず、兄バカだ。妹が犯罪者になっても守るだろうな。
「いいかい愛里。お兄ちゃんたち今からここで勉強するからね。愛里は静かにしていてね」
覗いたまま愛里がこくこく頷く。
背中の羽根がぱたぱた揺れている。
岩田よ、なぜその調子を他の女子相手にやらない?
やれば喜ぶぞ絶対。僕とは違う黄色い叫びをして、気絶するかも。どんだけモテモテになることやら。
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