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☆恋敵発見
しおりを挟む翌朝。
ムカデに噛まれた親指が疼くだけで、身体は元気になっていた。
着替えていると、外から強い何かを感じた。
愛里だった。
山の上公園から、今日も見舞いに来てくれたことになる。
感激して泣きそうだ。
見てくれ彼女たち……って、クローゼットは閉じたままだ。
僕も手を動かすと、愛里がぴょんぴょん跳ねた。
「うううおぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉおお!!!」
なつかれるレベルを超え、好かれている。ラブってるっ?
「聖ーっ! 遠吠えしないっ!」
一階の母さんから近所迷惑と注意された。
「はいはい」
愛里の後ろ、同じランドセルを背負った男の子がいた。
茶髪のイケメンだ。
愛里と男の子は楽しく話し、あ……手を繋いだ……。
すんなり。そして二人とも消えた。
僕に振り返りもしなかった……。
「うぅっ、うわぁああああああああ――――っっ!!」
「聖ーっ。発狂しない――っ!」
夢かと寝ていると思いたかった。
ほっぺをむに~~~っと餅のように引っ張ったら、やっぱり痛かった。
「小学校に行かないと……、登校の時間だもんな……な」
ぶつぶつ呟き納得。先は怖くて考えない。
朦朧とする。風邪がぶり返したわけじゃない。
張り裂けそうな感情のまま、どっかーん! と学習机をぶっ叩いたら、親指が死ぬほど痛くて悶絶した。
アホだ僕。
愛里は友達を待っていただけ。
手を振ったのは暇つぶし。
相手はハーフのイケメン。
おいおい。手を繋いで学校へ行く……。
イヤラシイだろ。教育はどうなっとる。
先生注意しろよ。間違いが起きたらどうする?
自分が間違いを起こしかねないのは棚に上げ、文句を言ったが、気分はどん底。脱力感たっぷり。
ふわふわ着替えを終えキッチンまで下りて、朝食を口に投入。
「なんで吠えたの? 受験ノイローゼ?」
「大丈夫だから、母さん」
「風邪治ってないんじゃないの、聖」
ぼわあ~んと一点を見つめ咀嚼する。
「ムカデが入ってたあの画用紙。愛里ちゃんのだったんでしょ?」
お辞儀をする僕。
母さんが愛里とぶつかった時に拾ったのだ。橋に落ちていたらしい。
「ごちそうさま……」
「ちょっと本当に大丈夫?」
僕は家を出てふわりふわりと駅に向かった。
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