一目ぼれした小3美少女が、ゲテモノ好き変態思考者だと、僕はまだ知らない

草笛あたる(乱暴)

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★不在

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 小学校の校庭を、ブラックがスキップしながら校舎に入ってゆく姿は、本当に気持悪いものでした。
 
 どうしよう。
 まずは美咲に相談しなくちゃ。体育館のおトイレで緊急会議をしなくちゃ。
 3-2の教室に入るなり探しましたが見当たりません。
 クラスメイトたちは普段通り固まって談笑しています。

「あれ? 美咲は……」

 美咲の机には物が何もないのです。今の時間だったら登校しているはずなのに。

「天野さんはインフルエンザでお休みらしいわよ。
 最近流行っているからね。私たちも気をつけなくちゃね」

「え――っ!!」

 ブラック退治の有力助っ人がインフルでダウン……。
 勇者さまは大阪ですし、兄さんも同じくって。

 ――頼る人がいないっ!
 
 困りました。困りました。困りましたーっ!
 流れが完全にブラックです。

 一時間目の授業が終わり、休み時間にのぞきに来るのではと、警戒していたらそれはありませんでした。
 二時間目もなく、結局放課後までブラックがちょっかいを出してくることはなく、だからといって楽観はできません。
 あのブラックです。
 慎重に慎重を期さないとなりません。
 最近では音楽の授業で使用する笛やハーモニカ、体育で着る体操服などは、全て持ち帰るようにしていて、例え休み時間におトイレに行く時でさえ、口が触れる部分は携帯するようにしているのです。
 今日も全てを持って帰宅する道すがら、突然どこかの路地からブラックが出現してこないかと、ドキドキしていました。
 いつ、

 うるうるうるうるううるるるる――――っ!!

 と登場BGMと共に、プレイ画面いっぱいに登場したモンスターから快心の一撃が繰り出されるやもしれないのです。
  
 しかも今のあたしは、サポートしてくれるはずの勇者さまも賢者(美咲)も戦士(兄さん)もいないのです。
 まさしくHP残量が少ない状態、黄色のステータス画面で洞窟を冒険している感覚。超危険なのです!

 やっと帰宅しました。
 家の柵を開けて入り鍵はありませんが一応ロックしておきます。
 今ごろ兄さんは新幹線の車中でしょうか、そろそろ大阪駅に到着した頃でしょうか。
 どっちにしても兄さんが帰ってくるのは明後日の夕方なのです。

 石畳を歩いて玄関ドアに立ち、ポケットから家の鍵を取り出して鍵穴に挿しました。
 捻るとガチャリと音。
 引き開けて入ろうとしたしたら、

「おかえり。遅かったね岩田さん」

 玄関横の裏庭に通じる道に目を向けると、そこには腰に手をあてて、にちゃにちゃ微笑んでいるブラック。

 ひいぃっ!!

「どどどどうしてココにっ!?」

 二歩三歩と後退してしまうあたし。

「どうしてって、岩田さんが寂しいかと心配して、来たんじゃないか。さっ中へ入って一緒に遊ぼーよ」

 ブラックは毒々しい笑顔を振りまき、うっとおしい茶髪を掻き上げてます。

「止めてくださいっ!」

 軽々しくあたしの手を取ろうとしたので、ジャンピングバックしてかわしました。

「どうしちゃったのさー」

 目を丸くして不思議そうにしています。 

「じゃ、先に上がらせて貰うよ」

「わあっ。ちょ。ダメっ!」

 すたすた閉まったままのドアに近づいてゆくブラックより先に、ドアに飛びついてブラックの入室を阻止しました。
 勝手に入れるわけには行きません。《岩田家代々のしきたり》かどうか分かりませんが、そういう決まりなのですから。
 
「どうしたのさー。岩田さん」

 直ぐ後ろにブラックがいるので、このドアを開けてあたしだけ入るのは不可能。
 開けた途端にブラックも一緒に入って来てしまうからです。

「帰ってっ! いいから帰ってよっ!」

「帰ってって、僕心配なんだけどなー」

 あたしの肩に両手を乗せてにぎにぎもんでくるのです。超気持悪いよーっ!
 どうしよーっ。困りました。
 ええーいっ! 仕方ない。

 あたしはドアノブに挿さったままの鍵を捻って再び施錠。
 ガチャリと音を確認して、鍵を抜いてその場から離れました。

「おいおい。どうしちゃったのさー。家に入らないのか?」

 こいつあたしの家に入るのが目的だったみたいです。
 入ってどうすいるつもりだったのかしら。
 どっちにしても危険です。超危険です。
 こうやって鍵さえあたしが持っていれば、ブラックは絶対に入れないのです。
 そのかわりあたしも入れないけれど……。

 ダッシュして裏庭へ向かいました。 
 
「おーい。何処ゆくのさー」

 あたしの後をだいぶ遅れてついてくるブラック。
 あたしは裏庭にある花壇を横切りプールサイドを真っ直ぐ進みます。
 ブラックは「へーっ!」と何かに感心したように辺りを見回しつつ追って来るのであたしとの距離は離れるばかり。

 よしっ!

 このままブラックがついてくれば、家を一周回って先に到着した玄関から、あたしだけ素早くドアを解錠して入り、直ぐに中から鍵をかければOK。グッドアイデアかも。
 今一度ブラックとの距離を測ろうと後ろを見ると、

「へーっ! ここに干すんだ洗濯物」

「ぎや――――――――――っ!!」
 
 あろう事かブラックは、プールサイドに干してある洗濯物の中から、ハンガーに干してある下着をツンツンしているじゃーないですかっ! しかも、それってあたしのパンティー!
 ママはまとめて洗濯するタイプ。今日はあたしの衣類ばかりを干してお仕事に出かけたのです。 
 ブラックは干されたパンティーの中から、あたしの超お気に入り《レース地のイチゴパンティー、サイドにふわふわリボン付き》を両手で掴んで「へーっ。透け透け~」とか言って顔をにちゃにちゃしているのです。

 矢のように飛んで行き、ブラックの手を払いのけ、数枚のパンティーがかかっている洗濯ハンガーごと後ろ手にして隠しました。

「何に、それって、まさか岩田さんの下着なの??」

 カッと熱くなりました。

「凄いの履くんだねーっ! わっどうしたの顔、真っ赤だよ。かわい~っ」

 ケラケラと笑われ、あたしは死にそうです。
 勇者さまに見せるつもりで買った物なのに、まだ見せてもないのに、こんなヤツに先に見られ――――、最悪っ。
 
「ちょっとよく見せてよ」

 そう手を伸ばされ、避けようとして。

「「あっ!」」

 洗濯ハンガーはあたしの手を離れてしまい、ぴゅーっと宙に舞い、やがて水が張ったプールの中央に落ちて、そのまま沈んでゆきました。

 あああっ……。

 緑色に濁った水深く、ゆらゆら風に揺れる水面と同じように波打って見えるあたしのパンティーたち。

「もーっ。岩田さんが嫌がるからいけないんだよ」

 またしてもブラックに笑われましたが、そんなのどうでもいいのです。
 それよりどうやって取ればいいのっ!? あたしのパンティーが……。大事なお気に入りが……。
 
 プールサイドに立ちすくんでいるだけで、どうする事もできなくて。
 そしたら突然。
 
「あら、いらっしゃい……」

 玄関の方から声がしました。
 スーツ姿のママでした。全身黒で統一されていて、カッコイイのです。

「愛ちゃん? どうしたの」

 半泣きのあたしを一度見て、それからブラックに視線をやります。

「もしかして、君が噂の羽沢くんかな?」

「えっ? あっ! はいそうです」

 ブラックは姿勢よくニコッと笑顔を見せました。

「ほう。言ってた通りに男前だな君は」

 ママは兄さんから何か聞いていたのでしょうか。お顔が厳しく見えますけど。

「な~んだ……。今日は早く帰ってきたんだね。ちょーいがい」

 ブラックは小声であたしにだけ聞こえるように囁き、にちゃりと口を歪めました。

「ここは私の家で、一応他人は入れないようにと家族の皆には言って置いてあるんだが……君は聞いてなかったのかい?」

 ママは淡々と説明しました。

「あっ、いえ。お兄様から伺っていたのですが、岩田愛里さんが寂しそうだったので、少し遊んでいただけです。そろそろ帰ろうかなーと思っていたんで、はははは」

 じゃーまたねーっ、と言いたい事だけ勝手に話したブラックは、すたすたママの横を風のように通り過ぎて柵から出てゆきました。

「全然寂しくないんだけど。い――っ。だっ!」
 
「困った子に付きまとわれているみたいね」

「うん……」

 ママはブラックの事を詳しく知っているようでした。

 

 
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