一目ぼれした小3美少女が、ゲテモノ好き変態思考者だと、僕はまだ知らない

草笛あたる(乱暴)

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★電話の主 

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 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。

 遅れて地響きのような唸る音――――カミナリ。勇者さまの呪文みたいで素敵です。
 ブラックが驚いて両耳を塞ぎました。

 今がチャンス!!
 ブラックが動揺している隙に、柵を開けて入り中から閉め、そのまま玄関にダッシュしてポケットから鍵を取り出します。
 気づいたブラックが柵を開けようと内側に手を伸ばし、もたもたしながらも柵を開けました。
 あたしは鍵穴に鍵を挿したいのですが上手く入らず苛立つばかり。

「なんでっ!」

 慌てるほど無理で、逆に挿しなおすと、やっと入ったので捻りました。
 走って向かって来るブラックを横目にドアを開けて入り、中から引っ張りました。
 だけど、ガシッと外からドアノブを捕まれ、ドアを閉じる事ができません。
 あともう少し。もう五センチなのです。
 両手で引っ張ってたのを右手だけに変え、空いた左手でチェーンロックの先端を持ってレールに挿しました。
 ガチッと入りきったチェーンロック。
 ドアは完全に閉まってはいませんが、チェーンの長さ分だけしかドアは開きません。
 
「岩田さん。ちょっと冗談は止めてよぉー」

 少しだけ開くドアの隙間から、顔半分だけ覗かせるブラックは、にちゃにちゃと笑みを作っているのです。
 伸ばした片手だけごそごそ動かして、何とか解錠を試んでいるのです。だから傘で叩きました。
 開いたドアの隙間から入ってくる冷たい雨風を顔に受けながら、それでもしつこいブラックの手を叩きました。

「酷いなー、岩田さん。酷いよっ!」 

 ずるりと引っ込む手。ブラックが諦めた隙にドアを完全に閉め、《ガチャリ……》響いた金属音と共にロックが完了しました。

 ――や、やりました。

 張っていた気持が抜けたみたいで、身体はそのままずるずると、しゃがみ込みました。

「もーっ! 酷すぎるんだからーっ! 又来るからねーっ、岩田さん」

 外でごちゃごちゃ言っているようですが、雨音に消されているのと聞く気がないのとで、何を言っているのか分かりません。
 ほっといてぐちょぐちょの靴を脱いで上がります。寒すぎてたまりません。
 そのままお風呂場に直行しようとしたら、

 リリリリ――――ンッ! リリリリ――――ンッ! リリリリ――――ンッ!

 電話です。

「びっくりしたーっ」
 
 まだドキドキする胸を押さえながら受話器を耳にあてるとママでした。

「ごめんね愛ちゃん。今夜戻れそうにないのよ。どうしても抜けられない事が起きちゃって」

「うんうん。分かったから。あたしだったら全然平気。大丈夫だから」

「悪いわね。いつも。今日はお兄ちゃんが居ないから、早くに帰るつもりだったんだけど」

「いいからママ。心配しないで。これから晩御飯の準備をしようと思ってた所だから。
 うん。うん。さっきまでテレビを見てたところーっ。うふふふ」

 ママはごめんねと何度も言って、もし不安になったら、携帯に電話をするようにと付け加えてから通話は切れました。
 
 もう大丈夫だからママ。
 あたしはお風呂場に行き給湯スイッチをONしました。衣類を全て脱いで、まだ空っぽの湯船に入ろうとしたら、遠くで電話の音が。

「またママかしら。心配しなくてもいいのに」

 玄関まで行き受話器取ると、兄さんからでした。
 ママからあたしがひとりになると聞いて、心配したようです。
 
 もーっ。ママったら、兄さんに教えなくてもいいのに。
 受験なのに余計な心配をさせてしまうじゃない。
 兄さんにも、いかにあたしが大丈夫なのか安心感をアピールして通話を終え、急いでお風呂場にリターンです。
 湯船に入りダンゴムシのように丸まってお湯がたまるのを待ちました。
 ぼしゅぼしゅと噴出口から出てくるお湯が徐々に溜まってゆきます。
 
 たっぷりのお湯につかったのは三十分以上でしょうか、ぽけーっと心地よい気分で浸ってからお風呂を上がると、又もや電話がかかってきているのに気づいて、近くにあったバスタオルを身体に巻いて玄関まで行き、受話器を取りました。

「もしもし? 岩田です」

 変わらない激しい雨風が玄関と窓を打ち付けています。
 カミナリもうるさくて、何を言っているのか聞き取れません。

『あの……、だけど……』

「兄さん?」

 あたしがひとりだから心配でたまらないのですね。
 でもそう何度も電話をしてこなくてもいいのに。
 嬉しいですが勇者さまと一緒に受験に集中してくださいね。

『大丈夫かい? 今一人なんでしょ』

 あれ? 兄さんだと思ったのですが、
 さっきと声が少し違うみたい。それに『今一人なんでしょ?』って……兄さんだったらあたしが一人だと知っているはずなのに変です……。
 本当に兄さんかしら?

「そうですけど……」

 慎重に返事をしました。 

『寂しくないかい?』

 声は優しそうですけど、なんか怪しいです。
 もの凄く怪しいです。
 まさかブラック? 
 ブラックが懲りずにかけてきた? 
 でも子供の声じゃなく、声変わりをした大人の声みたいです。

「いえ……大丈夫です。本当に」

 最近近所の家でも共働きが増えていて、子供しかいない裕福な家を狙った空き巣が増えていると先生が仰っていました。
 あたしの家には自宅プールもあるし、門構えもオシャレに出来ていて、そしてここら辺は高級住宅街。空き巣や悪い人にとっては格好の狙い目。

 気にはなっていたのですが、あぁ、一人って訊ねられた時『違います!』って、『今家族がいます!』って言い返せばよかったですっ!!
 どうしょうどうしょう……。

『今からそっちに行こうと思う』

 ななな何て事を……。危険過ぎますこの人。
 女の子が一人でお留守番しているお家に行こうだなんて……。

「えっ! そんな……いいです。本当に」

 来ないでっ、お願い。
 兄さん、ママ、勇者さまぁ……助けてっ!!
 
『……十時三十分ごろにはついている……から……』

「えっ、えっ!!」

 なんと、犯行予告。大胆な泥棒っ!

 ピカッ! ゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオドッシャ――――――ン!!!

「きゃ――っ♪」

『どうした?』

「いえ、何でもないんです。カミナリが鳴ったので、つい」

 カミナリ素敵過ぎます。勇者さまの究極魔法、ギガデインかミナデインが発動したかと思えるほどの大迫力!! きゃーっ♪ 

『分かった。……いまから行く……』

「あっ! ダメっ。来ないでください。警察呼びますよっ!」
 
 って……電話切れてます。
 どどど、どうしょう。ママも兄さん居ないし泥棒はやってくるし。
 でもまだ犯行予告まで三時間以上ありますっ。
  
 出来る限りの事をしないといけません。

 



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