一目ぼれした小3美少女が、ゲテモノ好き変態思考者だと、僕はまだ知らない

草笛あたる(乱暴)

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☆あいりんの正体がバレた

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 K大寮の食堂。
 僕と岩田が午後のおやつを頂いていると、寮生たちがドッと押し寄せてきて僕たちを取り巻いた。

「おいおいおいおいっ!! あいりんの本名が『岩田愛里』だってぇぇ?」「実の兄が高校剣道界でトップクラスの有名人。それって、モロお前の事なんじゃねーのっ?」「あいりんはお前の妹なんだろ? どうなんだよ!」

 怒ったような喜んでいるような顔をして皆んなが皆んな、同じ疑問をぶつけてきたのだ。
 
「え、まあ……」
「どうして隠していたんだよ」
「すまん。騙すつもりは無かったんだけど、いろいろあって……」

 テレビでトキメキTVと現在ブレイク中のあいりんが取り上げられ、それを視ていた寮生全員が大騒ぎ。
 現在に至るわけだ。
 全てが明るみになってしまった。
 寮生たちは、あいりんファンというわけではないが、今ブレイク中の美少女あいりんが、同じ寮生の妹と判明したわけで、話題にならないわけがないのだ。
 
 食堂は居心地が悪く、僕と岩田は部屋に避難することにした。 
 こりゃ、岩田がT大学に行っても騒がれるぞ。
 
 部屋のドアがノックされた。
 ここまで押しかけてくるのかと、岩田と顔を見合わす。悪い予感しかしない。
 無視していたが、しつこく叩かれて仕方なくドアを明けると、ヲタク先輩(6回生)二人がたるんだ腹を掻きながら、「少々宜しいかな、山柿氏」と薄ら笑いで言った。

 ヲタク先輩(どう見ても彼女なんかいないだろうK大学6回生、実質24歳)二人は、セナさんに向かって携帯で暴言を吐いたあの日。
 ホテルから帰ってきた僕に、済まないことをした! どうかどうか許してくれないだろうか~~っ! とやや芝居ががった、反省している風には思えない謝り方をして、最後に土下座した。
 流石に6回生に土下座までされると、許す以外ない。

 あれから一週間だ。
 どうぞ、と言ってもないのに、「悪いね。それでは少々上がらせて貰うよ」と勝手に入ってきて「いい部屋だね」と寮内すべて同じ構造の部屋を褒め、再び岩田を捕まえて質問攻めが始まった。

 岩田の顔が死んでいる。
 出来るだけ早く帰ってもらいたいが、「あっ俺、お茶は飲まない。コーラ派だから」「僕もコーラ。ダイエットコーラ」などと露骨に注文をしてくる図々しさ。一週間で元に戻っているじゃねーか。
 それに、その暑苦しい体型でなにがダイエットか、炭酸ばっかり飲んで1日中寮部屋に閉じこもっているから太るんだよ。
 しかし岩田は「下の自販機で買ってくる」と立ち上り、僕の止めるのも無視して部屋を出ていってしまった。

「あーら。岩田氏行っちゃったよ。あいりん情報もっともっと!」
「ここ暑いな、山柿氏。冷房2度上げて」

 いちいち癇に障る。
 やがて、岩田が戻ってきてダイエットコーラをそれぞれ二人の先輩たちに渡す。

「えーっ! マジ? ペットボトルじゃないね。飲んでキャップできるから衛生的なわけ。知ってた?」

 知ってるわい。買ったのは缶の方が安いからだ。


 岩田が僕に近寄ってきて小声で囁いた。 

「おい……山柿……」

「ん?」

「今、母さんから電話があった……」

 母さんとは監督のことだ。

「まずいことになった。今日ここに来る、愛里が」

 トキメキTVの収録後、この寮に愛里が来る……? 
 ポーカーフェイスは何処へいった、岩田が死んだような眼をしている。
 鳥肌が立ち血が逆流した。

「マジ? 止めさせろ」(ヒソヒソ)

「分かっている。俺だって母さんに言ったけど、愛里が前から寮へ行きたかったそうで、兄ちゃんだから、妹の願いを叶えなさい、だと」(ヒソヒソ)

「だからって、まずいだろう」(ヒソヒソ)

「仕方ないだろうが!」(ヒソヒソ)

「おいっ! なにぐちゃぐちゃ言っている!」

「い、いや、なんでもないっす」

 愛里に会えるのは嬉しいが、それ以上に会わせたくない人物がいる。
 目の前で、ニヘラニヘラしながらダイエットコーラーを飲んでいやがる二人組の輩(やから)だ。

 ◆

 ◆

「あいりんの使用済みのパンツを持ってこい」

 そう6回生の一人が言った。
 ダイエットコーラを頼んだみたいに、軽~い口調だった。 
 余りにも唐突だったのと、24歳にもなるいい大人の発言とかけ離れていて、自分の耳の方を疑った。岩田も同じだろう。

「はぁ……、えっと……えーと、よく聞き取れなかったんですけど」

「あいりんの使用済みのパンツを持ってこい、と言ったのだ」

「……、……」

「……どうした? 妹だから簡単だろ」

 簡単とか難しいとかじゃないと思うが。
 本気か、これ? 

「……冗談は止めてくださいよ~」

 と岩田が言ったが二人の真顔は変わらない。 
 先輩からヌッと紙包みを差し出され、両手で丁重に受け取った岩田と共にしばし見つめる。

「かわりにこれを穿かせて、使用済みを持ってくるのだ」

「これ……ですか……?」

 紙包みの中身は新品の子供パンツ(♀)。マジだ。笑い事ではない。

「いや、しかし。これはちょっと……愛里が……」

「人気の妖怪マッチのジバナンのパンツだ。嫌がるわけがない」

「そうじゃなく……」

「あいりんはジバナンが嫌いなのか? だったらこっちのパンツ(♀)のノケモンのピカミューにするか?」

 どんだけ持ってんのっ!

「お前はあいりんの兄だろう。取り敢えずあいりんの使用済みパンツを持ってこい」

 取り敢えずって……他にも要求するつもりか?
 予想通り他に『愛里の裸の写真を撮ってこい』だの、『愛里の使った歯ブラシを持ってこい』だの、この連中のあいりん愛は、並のヲタクたちのグッズを集めて喜んでいるレベルじゃない。性的な意味で恐ろしい。 
 いつもの岩田だったらブチ切れして、近くに日本刀があれば、抜刀しているに違いないが相手は6回生。
 体育会精神が宿っている岩田は、ひたすら耐え、先輩たちのいやらしい注文を『はっ! ですが、しかし、それは出来ません』と粛々と断っていた。 
 今日の夕方、愛里がここへ来る。
 その事実を先輩に知られるわけにはゆかない。絶対危険だ。

 ドアをノックする音がし、返事をする前に勝手に開いた。
 
「お久しぶり~っ」

「セナさんっ!!」

 岩田が助けを求めているような、悲痛な声で反応した。
 セナさんとは、ラブホテルを飛び出して以来になる。普段通りの露出の高いキャミソールにミニスカートの出で立ち。
 僕を見て、ニコっと笑ってくれた。

「「すっ、すいませんでした――――っ!!」」

 突然、先輩二人が叫んだ。畳に頭をつけて土下座している。

「ど、どうしたの?」

「先日は、大変失礼なことをしてしまいまして……、本当に申し訳ありませんでした――っ!!」

「いーわよ。別に。もう気にしてないから。その代わりウチの新作DVD買ってね♪」

「はっ! もちろん! そう言っていただけると助かります、あっ、どうぞどうぞ、ここに座って下さい! おい岩田、お茶出せ。コーラのほうが良かったですか?」
 
 先輩たちがバタバタとセナさんの世話を焼く。

「飲みかけはヤダな」
「ですよねー」
「おい岩田! 買ってこい。今度はペットボトルでな!」
「はっ!」
 
 部屋を出ていこうとする岩田をセナさんが呼び止めた。

「わざわざ買いに行かなくてもいいわ。ウチ、坂本くんを誘いに来ただけなの。もう出かけるから」

「えっ、でも、僕はちょっと……」

 愛里が来るんだ。先輩たち(いや、獣たち)をこのままにして、離れるわけにはゆかない。
 
「あら。またウチを断るつもり? 大事な用事でもあるの」

「え……ま、まあ」

「それって、彼女のお願いも利けないくらい重要なことなの。せっかくわざわざ来たのに……。
 一週間ぶりなのに……。ホテルすっぽかされたのに……。貸しがたんまりあるのに……」

 わざとらしく上目つかい。
 僕の事情を知って弄んでいるみたいだ。

「……彼女」

 岩田が小さく囁いた。
 誰も気づかず僕だけ分かった。

「大丈夫だ山柿。行ってこい」

 岩田にポンと肩を叩かれた。
 ポーカーフェイスが悲しく見えた。

「いや、しかし……」

「いいから行ってこいって」

 愛里が来るといっても、監督も一緒だろうし、岩田もいるんだ。大丈夫だろう。

「わかった。じゃ、ちょっと行ってくる」

 出かけぎわにセナさんが言う。

「そうそう、監督がね、今日愛里ちゃんをここへ連れてくるって言ってたわよ」

「……、……」

「「「なななななななななな――――――っっっっ!!」」」

 なに、バラしてんですか――――っ!!
 途端先輩たちが頭を持ち上げた。ぽかーんとセナさんを見つめる。

「愛里ちゃんて、週末になると決まってトキメキTVの収録で1日が潰れるじゃない。
 だから気晴らしにユニバーサルにでも連れて行こうとしたんだけど、愛里ちゃん本人が、『兄さんの住んでいるとこ、行って見てみたい』って言ったんだって」

「あ、あの……セナさん……」

「可愛いじゃない、ねーっ! あれ、連絡いってない? どうしたの、ウチ変なこと言った?」

 決して聞かれてはいけない人物がいることをセナさんは知らない。
 いや、そんなわけない。だってセナさんも先輩たちのロリコン部屋に入った。
 そこで小学生の体操着に愛里の写真を張りつけたアレを、愛里を汚しているアレを見たはずなのに、どうして?
 
「う~んう~ん。愛里ちゃんがね~。う~んう~ん」

 先輩たちがニヤニヤしながら喜んでいる。
 変な汗が出てきた。
 セナさんはニコニコしているだけだ。
 どうしちゃったんだよ。尊敬する監督の娘さんを嫌らしい目的で使っているんだぞ。
 
「あっと……。そうそう、建成にもお願いがあったんだわ」

「お、俺にセナさんがお願い?」

 途端に岩田が喜ぶ。セナさんの前だとポーカーフェイスまるで無しだ。

「なーに。簡単よ。その前に君たちは自分の部屋に戻って戻って」

 ヲタク先輩二人を乱暴に部屋から追い出す。先輩たちもセナさんに言われてば素直に従うのだ。

「さて。やって欲しいことね……、うーん、そうねえ、建成はこの部屋にずっといることかな……」

「は、はあ……?」

「詳しくはメールするわ」
 


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