一目ぼれした小3美少女が、ゲテモノ好き変態思考者だと、僕はまだ知らない

草笛あたる(乱暴)

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★ママの言いつけを守るのは大変かも

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 下半身裸の勇者さまと、おトイレでまたまた抱き合ってラブラブしちゃいました。
 ママたちにバレてしまったけど、そんなに怒られなかったし、あたしが勇者さまを好きだって知っても反対はしませんでした。
 逆に『愛ちゃんと坂本次第だな』『二人がママの言いつけ通りに成ったら、何してもOKだぞ』と、まるで結婚してもいいぞって言われたようなもんです。
 勇者さまの考えも知っているママの言葉。
 恋人だったはずのセナお姉ちゃんの、まるで敗北しているような態度。
 あんなに反対していた兄さんが黙っているし……この3人の感触からして、

 ――勇者さまもあたしを好きみたい――。

 はっきり言われたわけじゃないけど。
 勇者さまは奥ゆかしいから、口に出して言いそうにないけど。 
 でもたぶん、きっとあたしを好き。あたしたちは好き同士。
 嬉しい。凄くうれしい。

 でももっと嬉しかったのは――。
 お部屋を見た勇者さまが『なかなかの代物だ。凄い』って喜んで褒めてくれたこと。
 あたしの好みを、ママや兄さんが隠そうとする本当のあたしを認めてくれたこと。それが一番嬉しく幸せだったのです。

 だから、絶対ママの言いつけは守る。
 
  ――ママの言いつけ――。

 1,勇者さまとの恋は内緒にする。
 2,あたしの好きな物は内緒にする。
 3,勇者さまが立派な人になる。

 簡単簡単♪
 3番はもう出来ているし。だって山柿お兄ちゃんは勇者だもん。
 たったこれだけ内緒にしていたら『何をしてもいい』わけで、あたしのお部屋で出来なかったあくしょんばいおれんすも、最終進化後から噴き出すという幻のレアカルピスを飲んでも良いわけです。
 そしてそして、思い切ってお外で手を繋いでも良いのかな、流石にまずいかな。
 あ、勇者さまとの恋が内緒じゃなくなるからダメか。
 
 とにかく頑張らなくちゃ! 



「愛里は、山柿が好きなのか……?」

 皆んな帰宅して、兄さんと二人っきりになったとき、そう兄さんに訊ねられました。
 
「うん……。大好き」

「……そうか……」

「……ダメかな?」

「いや、……愛里が本気なら、兄さんも本気だ」

 あたしを一番大切に思ってくれている兄さんは、優しく微笑んで眼を閉じました。

 ◆

 相思相愛の勇者さまとのお盆休み。
 お互いちゃんと確認し合ったわけではありません。
 だから勇者さまの自宅へ潜入して誰にも分からないよう、二人であくしょんカルピスをして確かめ合うのを狙っていたのですが、セナお姉ちゃんがあたしと一緒にいて勇者さまとは会えず、勇者さまから連絡が来るでなく、あっという間にお盆が終わりました。
 だけど、夏休みの後半は秋のドラマの撮影があり、あたしと勇者さまは大阪のスタジオでお仕事となりました。
 ふたり同じドラマに出る。共演できる、撮影の合間にこっそり隠れてあくしょんカルピスしちゃうかも、と思っただけでドキドキ。
 でもフタを開けると、撮影の日取りは別々だったので、がっかりでした。
 ついでに何故かブラックもママの押し(監督権限)で子役として撮影に参加することになり、もっとがっかりでした。

 あたしは撮影が終る10月末まで学校をお休みして、大阪のホテルに泊まりこみです。
 ママのお仕事も多忙になってきて、あたしにはママが選んだマネージャーさんが付きっ切りになりました。

「岩田カントクから、愛里ちゃんの情報は死守しなサーイ、と言われてマスので、ワタクシに任せて頂ければ問題ナイデース。安心くだサーイネ」

 安心を強調するマネージャー、日本人とフランス人のハーフ美女のミッチェルさんは言いました。
 そんな折に、雑誌の取材が入ったのです。秋から始まる新ドラマと、トキメキTVのあいりん特集をしたいそうです。

「趣味は、あくしょんばいおれんすかな~」

「アクションバイオレンス……? えっと、それってトレーニングかなにか?」

「あっ、イェース!! アイリンは、健康の為にスポーティーな運動をしているのデース!」

 記者の質問をミッチェルさんが上手く交わしてくれ事なきを得、取材が終わり別室にて、ミッチェルさんに叱られました。

「ごめんなさい……」

「カントクの言いつけは守らないとダメデースね」

 そうなのです。つい口が滑ってしまって、ああ、ダメなあたし。
 
「あくしょんばいおれんすダメねー。SMもダメねー。キノコレバーもダメねー。ムカデやセミが好きなのもダメねー」

「ダメなことばっかじゃん!! あたし何もお話し出来ないじゃないーっ!」

「おーっ。ベリーかわいそうねー。でもワタクシになら話してもダイジョーブ、問題ナイデース。安心くだサーイネ」

「もーっ。そればっかーっ」

「不満が溜まったら、愛里ちゃんにはコレがありマース」

 そう言ってミッチェルさんはカバンからあたしの携帯を取り出し、画像を見せてくれたのです。

「わああーっ。勇者さまぁ~♪」

「愛する勇者さまを見ただけで愛里ちゃんはご機嫌ネー。とくにこの、キノコレバーは凄いデスネー。外人でもここまで大きいのはナイデス。ワタクシも惚れ惚れしマース」

「……、……」

「オーッ。そんな顔しナーイ。取ったりしないダイジョーブ、問題ナイデース。安心くだサーイネ」
 
「そればっかじゃん」

 ◆

 ◆

 トキメキTVにでるようになってから『あいりん』が大人気。昨日の取材に続いて今日はクイズ番組の収録に来ています。 
 でもママと勇者さまに《愛里のお部屋の事とか、好きなムカデの事とかは絶対に内緒》と厳しく言われました。
 
「それ、ヤスデ」

「ぴんぽーん♪ 大正解!」

 ムカデとヤスデとゲジゲジの映像を見て、どれがヤスデか答えなさいという問題でしたが、いつも昆虫図鑑を見ているあたしにとっては簡単過ぎますねー。

「すごい。あいりんは雑学も豊富なんですね」

「虫さんたちの問題なら得意だもん」
 
「大人の方たちは、もっと頑張って欲しいですね。今のところ、虫系・オカルト系・グロ系など一般的でない問題は全部あいりんが正解しますよ」

 収録スタジオの奥にいるミッチェルさんがハラハラしているけど、これはクイズだからね。あたしの事をお話ししているわけじゃないよ。
 
「総合で1位になったのは、あいりんでしたーっ!」

 クイズが終わって拍手が上がる中、司会者が景品を3つ選んで下さいね、と言いました。
 二泊三日グアム温泉旅行、ユニスタ年間チケット、食虫植物、レアフィギュア、などなど。
 
「えっと、お人形を」

「えっ? 3つとも全部フィギュア」

「はい!」

「あいりんがフィギュア好きだったとは意外でしたね。どうして選んだのかな、もしやアニメ好き?」

「おかえしするの」

「へーっ。学校のお友だちかな。意外やヲタクだったりしてーっ!」

「ヲタク? とんでもない、最強の勇者さまだよー!」

「なるほどーっ! いつもの天然を頂きました」

 養殖の間違いかな?
 何を言っているのか分かりませんが、たくさんあるお人形の中から3つを選ぶのは待ってもらいました。
 だって、勇者さまの持っているのと被っても仕方がないですから。

「あっ! あ、あいりんさん何処いくんですか? 本番中ですよー」

「待ってね。ちょっとだけー」

 喜んでくれるかな。
 あたしの為にいっぱいしてくれたんだから、今度はあたしがお返しです。
 控え室にいた勇者さまに、直接収録スタジオまで来てもらうよう言いました。
 でも……。

「嬉しいんだけど、愛里ちゃん。いいよ僕は。それより早く収録に戻って」

「ダメダメ。貴重なお人形さんがたくさんあるよ。好きなの選んでいいんだってーっ! すごいでしょ。お兄ちゃんのお部屋のお人形さんの仲間に入れてあげて」

「いや、そんな事どうでもいいから」

「お人形さん好きじゃなくなったの?」

「そうじゃないけど、愛里ちゃんは自分の事だけ、アレをうっかり話したりしないよう注意していれば良いからっ!」

「せっかくのチャンスなのに……」

「それに、僕がフィギュア好きだって……言わないって……約束してくれてたよね」

「あ……」

 忘れてた。恥ずかしいんだった。

「ご、ごめんなさい……」
 
 好きな事を好きだって言えないのはあたしと同じだけど、でもあたしは恥ずかしいとは思わない。
 良いな~って思う物を他人に嫌われたとしても、それはそれで良いと思うけど。
 皆んなが嫌いなわけじゃないもん。女子力が高い人は嫌いなフリをするしね。

「でも、あたし……、勇者さまのお家のお人形さんたちが大好き」

 勇者さまもあたしのお部屋が好きだから、一緒だもんね♪

「……ありがとう……、でも内緒だから……」

 あ……、それも、あたしと一緒です♪

「僕はロリコンじゃないから……」

 ロリコン……? ダイコン、レンコン? 野菜が嫌いなのかな。 

 ほんとに、いいからと言う勇者さまは、少し怒ったみたい。黙って部屋を抜けだし何処かへ行ってしまいました。
 
 どうしちゃったんだろう。
 あたし変なことしたのかな。悲しくなる……。



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