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5 このアプリケーションを作動しても宜しいですか? 後編
運命の分岐点はトイレだった。
帰る前に……とお手洗いに立ち寄ったタイムロスが、キングの侵攻を許す羽目になった。
「具合はどうだ?」
居酒屋の狭い通路に藤城が立っている。コートと鞄を手に持って出て来た果梨は凍り付いた。
この男は本当に心臓に悪い。昼間といい、今といい……。
「お蔭さまで体調はすこぶるいいです」
早口に答え、さっさとその場を出て行こうとする。
瞬間、通路の壁に背中を付けて立っていた男が、がん、と長い脚を反対の壁に押し付けた。
寸でのところでの足止めされる。……文字通り。
「……流行ってんですかね」
思わずそう漏らすと、「男は囲い込むのが大好きだからな」とあっさり答えた。
「…………また狩ですか?」
「その通り」
その言葉にマンモスの毛皮を着て、槍を持った男たちが獲物を囲い込む姿を思い浮かべる。
「男ってホント馬鹿ですね」
「狩猟本能はどんなに否定しても消せはしない」
くすりと笑い、藤城は果梨の手からコートを取り上げた。
「戻る気はありませんよ! あんな針のむしろ」
慌てて藤城の腕に手を置けば、彼はさも愉快そうに笑った。
「どこが? 立派に戦ってたじゃねぇか」
砕けた口調にカチンとくる。
この男が振るった一刀両断のダメージは、まだ胸に残っている。
「言っておきますけど! 私が無傷のノーダメージだと思ってるのなら、部長も間抜けです」
しかし果梨の罵倒に藤城はすこぶる楽しそうだ。引き留めるような果梨の手などお構いなしにどんどん歩いて行く。
「なら傷付いた女を慰めるという特権が俺にはあるわけだ」
誰のせいだと思ってるんだ、コノヤロウ!
言葉に出さず、顔で訴えるが前を行く藤城には見えていない。お支払いもしたし、このまま帰る予定だったのに。悔し紛れに掴んだ腕に更に力を込めれば、振り返った藤城が手にしていたコートをふわりと翻した。
そのまま果梨の肩に掛ける。
彼の背中に隠れて見えなかったが、すぐ傍に例の鉄製の扉がそびえていた。
「帰るぞ」
酷く簡素なその一言に、果梨は目が点になった。てっきり飲みの場に連れ戻されると思っていたのに意外だ。だが願ったり叶ったり。このまま帰る事が出来れば万々歳だ。
マフラーでぐるぐる巻きにされ、早急なガッツポーズを取りそうな果梨に藤城が笑う。
「ちょっと待ってろ」
「いえ、お見送りは結構です。このまま帰ります」
お疲れさまでした、と早口で告げてお辞儀をし、猛スピードで居酒屋を出ようとする。が、今度は伸びて来た藤城の腕に腰を掴まれ阻まれた。
「馬鹿言うな。俺と一緒に帰るんだよ」
「え?」
「藤城」
背後からの声に藤城が振り返る。そこには彼の鞄とコートを持った白石が立っていた。
「彼女は?」
鋭い眼差しが、マフラーに埋もれた果梨に注がれる。だがじっと見詰める黒い瞳にはどこか温かな光があった。藤城の策略めいた視線とは違う、心から彼女を案じていると勘違いしそうな眼差し。微かに寄った眉が、彼の日に焼けた精悍な顔つきに不安そうな影を落としていた。
「具合は?」
果梨を見詰めたままのぶっきらぼうな質問にどきりとする。彼の眼差しに心がうずく。だが果梨が質問に答えるより先に、腰に回された腕に力が籠り引き寄せられた。
「顔色が悪いから連れて帰る。後は任せた」
友人に対して、というよりは部下に命令するような冷たい口調。我が物顔で腰を抱く藤城の、トンデモナイ発言に呆気にとられ、果梨は顔を上げた。
自分は別に具合などこれっぽっちも悪くない。顔色だって先ほど確認したが普通だ。だがそんなことはお構いなしに果梨の具合が悪いと告げる藤城の顔からは何も読み取れない。
ただ綺麗なダークブラウンの瞳に白石が映っているだけだ。
「大丈夫か?」
藤城に答えず、依然果梨にのみ視線を注ぐ白石が落ち着いた声で再び訊いてきた。
「はい」
何も言うな、と更に果梨の腰に触れる手に力が籠る。だがそう警告されなくとも、今の果梨には白石に掛けるべき言葉が無かった。白石の……仕草や言葉に感じる親密さに答える言葉が。
(部長が居るから、果穂と何かあったのかと探りを入れる事なんか出来る訳ないし)
二人の人間に気を遣いながら問題の核心に触れようとするのは危ないと直感で悟る。何か致命的なミスを犯してしまう可能性の方が高い。果穂に連絡を取れないなら尚更だ。
(白石さんにしても……香月さんにしても……歯がゆいったらないわ……)
全てはこの藤城康晃という男の所為だ。この男が傍に居る限り果穂との関係を二人に問いただす事は出来ない。女性の香月さんには別のアプローチができるかもしれないが、白石に関してはお手上げだ。
(まぁでも……東野設計事務所とは関わるなってことだから……)
「ちゃんと食って寝ろよ」
ぽつりと漏らされた白石のその一言に、顔を上げるより先に手が伸びて来た。くしゃり、と果梨の頭を撫でる乾いた大きな手。
藤城が微かに目を見開くのを無視し、数度ぽんぽんと果梨の頭を撫でた後「ちゃんと送ってけよ、康晃」と白石が怖い声で促した。
―――康晃。
まさかの名前呼び。そして藤城の憤慨した声を聞く前に、彼は手にしていた藤城の鞄とコートを彼に押し付けるときびきびとした足取りで店の奥に戻って行った。
(今の……何?)
やや乱れた髪を直すでもなく、ぼんやりと白石の背中を見詰めながら今の親密な一瞬に困惑する。
食べて寝て? ていうか白石の眼にも顔色が悪く映ったという事だろうか? それとも果穂の具合がよろしくないのを知っていると言うコト?
最後に会った時、果穂は確かにやつれていてちゃんと食べて寝た方が良い状況だった。
だとしたら彼はその果穂を知っていて、今まで通りの果穂を演じている果梨を強がっていると勘違いしてそれで心配して―――
「行くぞ」
その言葉、氷の刃の如し。
腰を離れた手が、コートの上からでも指の感触が分かる程きつく二の腕を掴む。それを力任せに引っ張られ、果梨は自分が白石を茫然と見詰めていた事が藤城にもばればれだったと気付いた。知らず顔から血の気が失せる。
「あの」
軽くよろけながら腕を引く藤城に必死に付いて行く。外は午後に降り出し、一度は雨に変わった雪が再度細かくなって風に舞っていた。気温はぐんぐん下がっていて吐く息が白い。こんな天気で歩く人は少なく、ましてや金曜夜にタクシーなど捕まるものかという果梨の甘い考えを裏切り、仕事のできる男はあっさりと捕まえた車に果梨を押し込んだ。
「ちょっと、部長! さっきの態度は……ていうか、私具合なんかちっとも悪く―――」
そこで果梨は絶句した。果梨の質問に一切答えない藤城が告げた住所は、あろうことか果穂のマンションがある住所だったからだ。
今この瞬間、果梨の顔色が最悪になった。
(これは……もしかしなくても果穂のマンションに送って行こうとしてる? ていうか果穂のマンションに送って行かれた所であたし入れないし!)
そもそも藤城は果穂のマンションの住所を本当に知ってるのだろうか……まぁ、知ってるのだろう。なんか親密な夜の話題が一瞬でたし。
ていうか果穂の仕事を果梨が代行しているが、住まいまで変更してはいない。彼女から服を借りた時も果穂が自ら持って来てくれただけ。もちろん果穂の家の鍵など持っていない。
(って、ひょっとしたら部長、果穂のご近所さんなのかも)
今聞いた住所は果穂の住所『方面』だった。彼が行こうとしているのが自分の家という可能性もゼロではないだろう。だがその可能性に賭けて、結局果穂の家の前に到着したら?
(自分の家に入れないなんて……そんなのダメだ!)
不信感=入れ替わりがバレる可能性が増える。
それだけは避けなければならない事態で、その為に返答を考える必要がある。
「…………部屋まで送ってくれなくていいです」
ひねり出した最大限の牽制をしてみた。最悪マンションの前でタクシーに乗る藤城を見送ればいい。だがそんな果梨の言葉を隣に座る男はあっさり拒否した。
「ベッドまで見送らないと、お前が何をするか判らないからな」
「……どういう意味でしょうか」
「巧とお前の態度を見れば、現彼氏としてお前を野放しには出来ないと踏んだんだ」
侮辱とも取れるその言葉に、果梨の頭に血が上った。まるで白石と果梨の間に今でも何かあるような言い方ではないか。実際に……あるのかないのか判らないが、白石と続いているのに藤城にプロポーズするような女だと思われるのは心外だ。果穂だってそこまで厚顔無恥では……無い、筈。
「私に彼氏は居ません」
苛立ちを込めて答える。現時点で、果梨にも果穂にも彼氏は居ないので嘘ではない。
「じゃあ婚約者だ」
対して藤城も苛立った返答をする。にべもない一方的な物言いに果梨はかちんと来てヒートアップする。知らず早口で一気にまくしたてていた。
「私に婚約者も彼氏も、ついでに恋人も夫もヒモもセフレもいませんからッ」
「居るだろ」
あっさり答えた藤城が、ぐっと身を寄せて来る。気付いた時には、タクシーのドアと男に挟まれて身動きが取れなくなっていた。
「これ……ご自分の車じゃないんですよッ」
ぞわりと背中が粟立ち、果梨は焦って藤城を睨み付けた。囁き声で怒鳴ると、囲い込むのが大好きな藤城が、両手で作った檻の中に果梨を閉じ込めたまま捕食者然として微笑んだ。言うまでもないが眼は笑っていない。
「お前が、それは全部俺の役割だと認めるのなら出してやろう。だが認めないのなら……」
持ち上がった片方の手。その長い指先が柔らかな果梨の頬を撫でて行く。
妖しげな色気全開で向かってくる藤城に、果梨は恐怖した。すぐ前でタクシー運転手が迷惑そうなうんざりした態度で、バカなカップルがコトを始めないかどうか苛立っているかと思うと尚更だ。
いやいやこの上司はそこまで非常識じゃない筈だ―――多分。……ここ数日分しか知らないけど。
「…………いいのか?」
果梨にだけ聞こえる低音の囁き声。それが酷く楽しそうに淫らな事を口走る。
「このままここで、意に染まないまま犯されても?」
指先の作り出す感触に胃の腑がひっくり返るような衝撃が走った。その衝撃が震えとなり、腰に広がるのを認めながらも果梨は果敢に言い返した。
「同意するつもりも無いのに同意するよう迫るのは、恐喝と同じでしょう?」
「俺は脅してるつもりはない。お前が勝手に脅されてると思っているだけだ」
「それが恐喝だっていうの!」
甘い痛みをもたらす手をはねのけ、果梨は喰われてたまるかと睨み返した。依然彼女を囲う男は、ぎゅっと結ばれた果梨の唇に視線を注いでいる。
「君は俺にプロポーズをした」
「間違いでした」
「それを俺は考え直し、お前と付き合うことにした」
「私は望んでません」
「そこにきて何やら怪しい男の登場だ」
「白石さんはただの仕事上のお知り合いです」
「何故だろうな? 俺はそうは思わない」
数センチ、彼がまた顔を近づけて来る。彼は愉快そうに続けた。
「このままここでキスされて喘ぎ声を上げながら部屋に連れ込まれるか、大人しく俺を家に招き入れるか選べ」
どっちも部屋にあげる事前提じゃないかッ!
ぎりぎりと奥歯を噛みしめながら、果梨は迫られている云々よりも「その部屋にあげることが出来ない」事実の方が問題だった。このままだと、バレる。
ああ、部屋の主はいまいずこ。
ここで果梨がナイトではなくポーンだとバレるわけには行かないのだ。
「でしたら」
半眼でこちらを見下ろす男に果梨は、自棄になりながら提案した。
「部長のお部屋に連れて行って下さい」
(部長が高槻さんをお持ち帰りなんていっが~い……)
本橋の隣に陣取る麗奈が、彼に矢継ぎ早に「女子テクニック―居酒屋編―」を繰り出しながら考える。戻って来た白石をちらりと確認するも明らかに不機嫌そうだ。
普通の……特に恋愛遊戯に疎そうな香月渚には判らないだろうが、白石の眉間に増えた一本の皺が彼の機嫌を物語っている。
観察する事……それが麗奈のモットーだった。どんな人間も、見て居れば分かって来る事がある。加えて麗奈には「相手に尽くす」というカードも持っていた。
一つ一つ相手に何かを差し出し、反応を見る。手ごたえのあった物だけチョイスして徐々に相手との距離を詰める。そこから今度は「相手に尽くさせる」ためのカードを切り始めるのだ。
(本橋さんは……手ごたえ無いわね)
彼のグラスに、今日何杯目になるか判らないビールを継ぎながら麗奈は溜息を吐いた。今日彼を誘ったのは、確かにクリスマスに向けて本格的に捕獲作戦を始動しようと思ったからである。だがその裏には、他の男性を紹介して貰おうという二次的な野望も含まれていた。だが現時点でその二次的な野望も潰えそうだ。
藤城部長はそもそも麗奈の好みじゃないし、ちょっと良いかな、と思われる白石は現在心ここにあらず。本橋はだいぶ酔っ払っているとはいえ、麗奈のスキンシップをさりげなくガードしている。
いっそのこと胸でも押し付けようか。
「部長は?」
麗奈が見抜けた事実を読めない香月が、本橋に絡むのを止めて場を見渡し、再び座る白石に尋ねる。彼は軽く肩を竦めた。
「高槻さんが具合が悪そうなんで連れて帰ったよ」
麗奈は知っている。高槻果穂は具合など悪そうではなかった。実りが無いから帰ると言っていたのがその証拠だ。だが、麗奈は黙っていた。ライバルは居ない方が良い。
「え? あの部長が?」
今度は本橋が驚いている。同じように麗奈も驚いていた。藤城部長が高槻果穂を買っている様子など皆無だったからだ。もちろん、ここでいう「買っている」というのは仕事上では、というのは含まれない。あくまでプライベートで……女として、という意味だ。
最近仕事で重宝していることくらいは麗奈も知っている。だが、それを女性として高槻果穂を見て居るから、とイコールにはならない……と思っていた。
(ああいう仕事が出来る男は女は外でが信条だと思うから……意外といえば意外なのよね)
部下に手を出すタイプではない、というのが麗奈の見立て。
そんな中「遊ばれてもいい」と藤城康晃にアプローチを掛ける沢山の女性社員の惨敗を「当然でしょ」と鼻高々で見て居たのだが、どう言う訳か高槻果穂に関してはそうならなかった……ようだ。
「そんなに具合悪かったんだ……飲み過ぎかな」
(んなわけないでしょ)
彼女が食べたと思しきチーズインハンバーグと釜飯の空き皿を見ながら麗奈は本橋の言葉に心の中で突っ込む。出来る営業な筈なのに、彼は意外と天然だ。天然炭酸飲料系。……いや待て。これが計算だったら空恐ろしい。
「……送って行ったんですか? タクシーに乗せるだけじゃなくて?」
香月の掠れた声が尋ねる。麗奈はちらと彼女を見た。大分飲んでいる筈なのに顔色は白く、表情は無い。ただ目だけがぎらぎらと光っているように見えた。
「そうだよ」
こちらも苛立ちを滲ませて答える白石。残っていたジョッキのビールを一気に煽った。
不意に空気が悪くなる。お互いが胸の内にしまっている不満があふれ出しそうな雰囲気だ。
それを煽って聞き出そうかと、麗奈がゲスい事を考えていると。
「部長職も大変ですねぇ」
本橋が再び呑気に告げてほっけの開きに箸を伸ばした。
そんな彼の一言に、不気味な熱をはらんでいた香月と白石は一気に毒気を抜かれ、空気が冷えた。
「ま……部下の面倒を見るのも上司の仕事ってことだ」
白石が乗っかる。
「氷の部長とは言っても、藤城部長は部下には厳しくて優しいですからね」
香月が落ち着いた声で答える。
(……面白くなりそうだったのに)
ち、と心の中で舌打ちをしながらも麗奈は藤城が部長として部下を気遣う姿を想像して笑ってしまった。確かに超優秀でエリートで、出世街道爆進中の優秀な上司だとは思うが、そこまで部下を思いやる心があるとは思えない。
ここで麗奈が具合悪そうにしていても、藤城は自分で麗奈を送ったりはしない筈だ。
それは断言できる。
藤城がすげなく女性のお誘いを断る姿をこっそり……しかも何件も目撃しているのだから。
だがその点を二人に指摘するのを麗奈は差し控えた。
さっきも言った通り、麗奈にとって藤城は対象外だ。そして入社当時からライバルと目論む高槻果穂が藤城康晃とくっついてくれるのなら、これに越した事はない。
他の女どもが眼の色を変えるだろうが、麗奈としては万々歳だ。
(と、そうは思わない女がここにも一人……)
やっぱり部長は凄いよなぁ、としみじみ漏らす本橋に「アンタはもっと頑張りな」と香月が笑いながら告げる。
平然とワイングラスを煽り、何でもない様子を滲ませているが恐らく心中穏やかじゃないだろう。
今日は散々だった。まさか香月と姫の座を争うとは思わなかった上に収穫はゼロ。これなら友人の美紀と一緒に合コンにでも行けばよかった。
(なんか腹立ってきた……)
本来ならば本橋と二人きりで、ロマンチックなディナーを期待していた。本橋の男性本能を刺激して今頃ホテルでいちゃいちゃしてる予定だった。例えそうならなくても寝てしまえばこっちの物だとも思っていたのだ。だから友人の合コンも断った。こちらの方が勝率八割だと踏んだからだ。
それが二割の確率で失敗している。合コンなら勝率九割だったのに。
そんなくさくさした気分が、麗奈の意地悪心をくすぐった。
香月に飲まされた煮え湯(大げさ)の数々を思い出し、麗奈はとびっきりの笑顔を見せた。
「でもぉ、あの藤城部長が一人の女子社員に優しくするなんて超レアですよね!」
はしゃいだような麗奈の言葉に香月が固まる。ほんの一瞬の硬直。
「そうかしら? ああ見えて部長は出来た人よ」
落ち着いた声で切り返すが、麗奈はその言葉に滲む悔しさのような物を聞き取り心の中で笑った。
「そうですかぁ? 私は見たことも無いケド、きっと香月さんは見たことがあるんでしょうね」
にっこり。
そう言って飛び切りの笑顔を見せる。香月が両手を密かに握り締めた。
「ええ、もちろんよ」
笑って告げる香月に、ようやく麗奈は溜飲の下がる思いがしたのだった。
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