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序章
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しおりを挟むこの世界で人間は
生まれ持ってそれぞれに役目をおって生を享けているんだと僕は思う。
その役目に気付くのは人それぞれ。
例えば、母親が子どもを産んだ時。
仕事で重役を任された時、
親を看取った時など役目の大小や動機はなんでもいい。
その人間がこれが自分の役割だと思ったものがそうなのだと僕は思う。
でないと、この長い人生、
退屈で仕方ないじゃないか。
「おはようございます、萩様。」
「ああ、おはよう。」
柔らかな朝日が射す、
何人もの使用人が仕える大きな屋敷は、今日も穏やかに 、だけれどどこが活気よく新しい一日を始めている。
埃一つなく、歴史あり洗練された調度品や美術品が屋敷を飾る。
「萩、今日は早いな。」
「父様、おはようございます。
尚に今日は相談があるからと急かされまして。」
「そうか。お前達は相変わらず仲がいいな。」
「高校生にもなってそう言われると複雑な心境ですね。」
「昔からの気の知れる友というのはこの先貴重だ。
大事にしなさい。」
「はい、父様。」
無口で家を離れがちな父だが、裏で何かと気にかけてくれる優しい父で僕は跡取りとして大事に育てられた。
僕の役割は代々の当主が守ってきた歴史ある家と屋敷と伝統、家業とそれを支えてくれる社員を守り繋いでいくことだと自負している。
大きな、重要な役目だ。
それが僕の役目なんだと
僕はこの日まで信じていた。
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