BL(?)短編集

土田

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巻き込まれ事故

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「おい、無事か!? クソッ!お前等親衛隊か!!一人相手に大勢で、卑怯だと思わないのかよ!!」


この正義感の固まりのような男が、何を隠そうこの学校の人気者たちを挙って虜にした魅惑の小悪魔(♂)なのだ。
そして、


「来てくれてありがとう!俺嬉しい!」


俺も、虜にされた一人だったりする。

俺が勢い良く抱きつくと、髪で隠れ少ししか見えない顔が赤くなっている。
わたわたと慌てる姿がまた愛しい。


「俺、口喧嘩は強いって言ってたでしょ?だから大丈夫だよ。」

「で、でも…心配、だったんだよ…」


語尾がとても弱く、拗ねたような口調に胸が締め付けられるような感覚に陥る。
これが胸キュンってやつか。


「別に頼りにしてないわけじゃないよ。でも、俺だって男だし、守られてばっかじゃカッコつかないじゃん。」

「わかってる!わかってるけど…」


身体を離し彼を見ると、しょぼん、という文字が背後に出ている。
それくらい解りやすく気落ちしているのがまた可愛らしい。
なんというかこう、少し意地悪したくなる。


「わかってるけど、何?」

「わ、わかってる、けど…」

「うん、だから、何?」


早く言ってしまえばいいのに。
恥ずかしがっていないで、声を大にして高らかに。


「こ…」

「こ?」

「ッ…恋人を守りたいって思うのは当然だろ!」


ああ、やっと言った!
今の言葉の通り、彼もまた、俺に虜にされたのだ。

顔を見られまいと俯いている可愛い恋人の頭を撫でながら、チラリと空気と化していたゴリマッチョ隊を見やる。
奴等は皆が皆、ポカンと口を開け目を点にし呆気にとられていた。


「ねぇマッチョ君達、今の聞いた?」


表情はそのまま、コクコクと赤ベコのように何度も頷く5人を見ると、思わずクスッと笑いが漏れる。


「と言うわけだからね、俺は恋人であるコイツと一緒にいるだけで、生徒会に近付いてるわけじゃないの。寧ろ向こうが俺の大事な恋人に言い寄って来て困ってるんだよ。」

「え、ちょっとまって!生徒会に近付いてるってどういうこと?」

ああ、そういえば言ってなかったな、なんてぼんやり思った。
いい機会だし、奴等にもそろそろコイツ離れをしてもらおうか。


「俺ね、言ってなかったんだけど、お前を利用して生徒会に近付いてるって疑いかけられて、何度か呼び出されてたんだ。」

「何、度か…?」

「うん。 お前が、元々チームのリーダーやってて、その時のメンバーの生徒会役員を好きな気持ちは、解るけど…でも…」

「ゴメン!俺がしっかりしてないから…」

「ううん。お前のこと責めてるわけじゃないんだ。でも…俺はお前の傍にいたいだけなのに誤解されるのは、ちょっと辛いかな。」

「ッ…ごめん。」


うっすらと目に涙を浮かべて訴えると、それの倍程辛そうな顔で謝ってくる恋人。
今直ぐ抱き締めて、撫で繰り回してやりたいけど、そこは手をぎゅっと握り我慢する。
そこで無理して笑ってみせると、嘘に敏感な恋人は直ぐに見破ってくれる。


「でも、しょうがないよね!生徒会は人気者だし!お前の傍にいるためなら、俺これくらい耐え…」

「嫌だ!そんなの、ダメだ!確かにあいつらは仲間で、付き合いも長い。でも、俺はチームを抜けた人間だし、お前を傷つけてまであいつらと一緒にいようとは思わねーよ!そんな資格も、本当はないんだ。」


俺が抱き付くのを我慢するべく握り締めた手が、恋人の以外と大きな手で包み込まれる。
どうやらいい方に捕らえてくれたようで、よし後一押!と、内心気を引き締める。
もちろん、目には涙を浮かべたままで。


「でも、元だとしても、大切な仲間、なんでしょ?」

「今は、お前より大事な奴なんていないんだ!あいつらだって、話せば解ってくれるさ!皆良い奴なんだ!」


あぁ!なんて単純なお馬鹿ちゃん!
可愛い可愛い可愛い!


「じゃあ、恋人だって紹介してくれるの?今まで恥ずかしがってできなかったのに?」

「う、あー…いや、うん、がん、ばるよ…。」

「ッ、んもう!そういう照れ屋なところも好き!!」


我慢していたものを解き放ち、照れて緩くなった手を解くとガバッと抱き付く。

俺の恋人は優しいから、ちゃんと紹介してくれるだろう。
そんで、今以上に傍にいれるようになったらイジメだって軽減するし、人気者達だって俺に手出しできなくなる。
理事長も、俺を理不尽な理由で退学になんてしようもんなら、愛する甥っ子に嫌われてしまう。

つまり、俺の一人勝ち。

ずっと思い続けてきた人を、急に現われた馬の骨に持ってかれるなんて、少し可哀相な気もしなくもない。
でも、現状に甘んじて想いを伝えないでいたのがこの結果なわけだから、哀れんでもしょうがないか。


「と、とりあえず!寮に、帰ろう! おいお前等!もう二度とコイツに手出すなよ!!」


抱き付かれて照れている恋人が、本格的に空気だった、と言うか空気読んで黙ってたマッチョ君達に釘を刺してから俺を抱き上げ歩きだした。
しかも所謂姫抱っこ。


「え!?ちょっと、急に何!?」

「…いつもの仕返し!」

「し、仕返しって…!」


積極的なのは嬉しいけど、これは流石に恥ずかしい。
顔が火照る、というか全身が熱い。


「あ、なんかそっちが照れてんの見るの初めてかも!なんか新鮮!」


そういい、余裕の笑みを浮かべる恋人。
お馬鹿な天然が開き直ると手に負えない、ということか。
それともからかい過ぎて初じゃなくなってきたんだろうか。

とにかく、これからは振り回すだけじゃなく振り回されそうな未来を予想しながら、仕返し返しとばかりに思い切り抱き付き首に息が掛かるように顔を埋めてやった。


「うわっ!く、くすぐったいって!」

「俺を照れさせようなんて、10年早い!」

「く、うぅ…そこで喋んなよ!」

「やだもーん!」


周りの奴等を巻き込みながら、俺たちは今日も一緒に走り続ける。


end


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