貴方のために

土田

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話は冒頭に戻って、今は親衛隊の集会中。
過激派の隊員たちがこんなにも騒いでいるのには、ちゃんと理由がある。

2週間ほど前にやってきた、もさもさ頭に瓶底眼鏡の季節外れの転入生。
その彼が物の見事に生徒会役員と時期生徒会役員候補と言われている人気の高い生徒を虜にしていったのだ。
普段こういった話に興味のないボクでも、現場を見てしまっては認めざるを得ない。

今まで役員にしか許していなかった名前呼び。(役員・役員候補全員)

欧米か!と思わず突っ込みたくなるような挨拶時のハグとキス。(副会長に会計に書記)

仕舞にはもうえらく濃厚なベロチュー。(会長)

生徒会+αの奴らは、こんなことをしてくれやがったのだ。
大勢の生徒がいる、夜の寮の食堂で。
さらに最後のベロチューに切れた転入生が会長様の腹に蹴を入れ、仕上げに左頬をガツンと殴ったのだ。
あの時の悲鳴は本当に凄かった。
今でも思い出すだけで耳の奥が痛みそうなくらい。

そういうわけで、親衛隊を敵に回したのはもちろんのこと、親衛隊でない生徒には関わりたくない認定された転入生だったが、何故か生徒会含む人気のある生徒は更に奴を気に入ったそうだ。
しかも最近生徒会はその転入生に構い切りで仕事をしないのに転入生を連れ生徒会室に入り浸り、本来の役目を果たせとでも言うかのように親衛隊に仕事を回してくる。
おかげでボクと同じ穏健派の隊員まで苛々していて、いつ過激派になってしまうかわかったものではない。
そうなってしまったら、もうボクにもフォローしきれない。


「隊長どうするんですか!!?」

「速く決断を!!」

「隊長!!!!」


詰め寄ってくる本来なら可愛いのであろう歪んだ顔。
生徒会役員に抱かれたと自慢していた奴らだ。
その後ろでは、声は出さないが役員を抱いたと自慢していた奴らがボクを睨んでいる。
最近ぱったり誰からも声がかからなくなったらしい。
やはり溜まってるんだろうか。


「わかった。」

「じゃあ……!!!」


ぱぁぁと怒りに歪んでいた顔が明るくなった。
やはり可愛い顔だ。
後ろの奴らも睨みが期待を込めた眼差しに変わった。
こんなにも自分を思ってくれている人達を捨ててまで執着する価値が、果たして転入生にあるんだろうか。


「君たちの言いたいことは、今までの集会で十分に解った。」


それを見いださないことには何も始まらない。


「だから次は、向こうの話を聞いてくる。」


ボクも動かなければならないのだ。


「時間も時間ですし、今日の昼の集会はこれで解散です!悪いけれど放課後はボク抜きで仕事お願いします。」


思い立ったら即行動!


「ボクは、転入生に会いに行ってきます。」



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