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話し合いを今日にしたのには、さすがにもう傍観者ではいられないという思いの外に、ちゃんとした理由もある。
今日は生徒会役員が姉妹校である他県の高校の生徒会との親睦を深めるということでそちらに出向いているため学校にいない。
だから逆に、動くなら今日しかないのだ。
午後の授業が終るとすぐに、ボクは転入生のいるであろう教室に出向く。
HRよりも、先に帰られない事の方が大事だ。
目的の教室の前に着くと、やはりまだHRの最中だった。
待つこと5分強、ようやく終ったようでざわざわと私的な話し声が聞こえてきた。
それを確認し、ボクは教室のドアをノックした。
「失礼します。」と言いながらドアを開けると中にいた生徒が一斉にこちらに目を向ける。
それを気にせず渦中の人物を探すと一際目立つもさ頭を見つけた。
そのままそれに歩み寄ると見事に顔立ちの整った子が、ボクとそれの間に立ちふさがる。
確か彼は、生徒会候補だったな。
興味がないので名前までは知らないけれど、顔なら見たことがある。
あの時食堂でも彼と一緒にいた顔だ。
「なんの用だ。」
明らかに敵意むき出しの声。
こ、怖いじゃないか!
いや、怯むなボク!
負けるなボク!
ボクは親衛隊の隊長。
常に気丈な振る舞いを心がけねば。
「君に用事はない。それと、ボクは君の先輩だ。初対面で且つ目上の人には敬語を使うのが礼儀だろ。」
そう胸を張り言い切り、目の前の生徒会候補の横を通り過ぎる。
声は震えも裏返りもしなかったし、なんとか面目は保てただろう。
数歩進むと、もさもさ頭に瓶底眼鏡で表情のわからない男子学生の前に着く。
「初めまして、転入生。ボクは親衛隊の隊長だ。ぜひ君と話がしたいんだが、どうしても今日がいい。今から少し都合を付けてもらえないだろうか。」
出来るだけ高圧的に、でも上からだけではなく。
要は断りにくく、ということだ。
断られてしまっては意味がない。
「ちょっと待ってください!そんなこと、させられるわけないでしょう!」
後ろからした声の主に肩を捕まれた。
きちんと敬語を使っている。
彼はなかなか素直ないい奴のようだ。
肩に置かれた手を掴み下ろさせると、彼と向かい合うため回れ右をした。
「君は、転入生の友達かい?」
「は、はい。」
「今の親衛隊がどんなものかも分かってる?」
「はい。」
「なら心配する気持ちもわかる。今ボクがここで彼には何もしないと言っても信用できないだろう。」
「だから…」と、そこまでを一息で言い終えると一度深く息を吸い、にっこりと笑ってみせる。
「君も着いて来ればいい。」
目の前には間抜け面したいい男。
どんな顔でも様になっている。
いや、間抜け面が様になるっていいのか?
まぁどうでもいいか、と間抜け面は放っておき、また回れ右をした。
「転入生。君はどうだい?親衛隊のよくない噂は嫌というほど聞いているだろうから一対一は嫌だろうけど、彼がいるなら安心じゃないか?」
さっきから絶やさず続けていた笑みを消し、真っすぐに目の前のもさ頭を捕らえる。
一瞬、目の前のもさ頭の肩がピクッと反応したが、気にせず言葉を続けた。
「ボクは自分で言うのも何だけど、穏健派だ。出来るなら話し合いで解決したい。君にとってもこれは悪い話ではないはずだ。」
それだけ言うとまたにっこりと笑う。
「どうかな?」と問い質すと、目の前のもさ頭は少し考えるように首を傾げ、
「アンタ今の笑顔よりも、さっきの顔の方がいいな。」
教室の空気が凍り付いた。
コイツは何を言っているんだ。
時代遅れのKYってやつか?
「…で、返事は?」
ボクは敢えて笑みを浮かべたまま言った。
「だからさ…」
「ボクの顔はこの際無視してくれないかな?とにかく話が出来るか出来ないかを聞かせて欲しいんだけど。」
苛々が募っていく。
これのどこに惹かれるのか、理解が出来ない。
なるほど、隊員たちがあんなに怒り狂っていたのはこれが原因か。
今なら、少しだけ気持ちが分かる。
「因みに、此方としては友達を同伴させても良いと其方にとって都合のいい条件を提案している。もしこれを断るようなことがあれば…」
解ってるだろ?と、目の前にいるもさ頭ではなく、後ろのお友達に脅しを掛ける。
「え?な…」
「わかりました。」
どうやら伝わったようだ。
察しのいい奴は好きだ。
今日は生徒会役員が姉妹校である他県の高校の生徒会との親睦を深めるということでそちらに出向いているため学校にいない。
だから逆に、動くなら今日しかないのだ。
午後の授業が終るとすぐに、ボクは転入生のいるであろう教室に出向く。
HRよりも、先に帰られない事の方が大事だ。
目的の教室の前に着くと、やはりまだHRの最中だった。
待つこと5分強、ようやく終ったようでざわざわと私的な話し声が聞こえてきた。
それを確認し、ボクは教室のドアをノックした。
「失礼します。」と言いながらドアを開けると中にいた生徒が一斉にこちらに目を向ける。
それを気にせず渦中の人物を探すと一際目立つもさ頭を見つけた。
そのままそれに歩み寄ると見事に顔立ちの整った子が、ボクとそれの間に立ちふさがる。
確か彼は、生徒会候補だったな。
興味がないので名前までは知らないけれど、顔なら見たことがある。
あの時食堂でも彼と一緒にいた顔だ。
「なんの用だ。」
明らかに敵意むき出しの声。
こ、怖いじゃないか!
いや、怯むなボク!
負けるなボク!
ボクは親衛隊の隊長。
常に気丈な振る舞いを心がけねば。
「君に用事はない。それと、ボクは君の先輩だ。初対面で且つ目上の人には敬語を使うのが礼儀だろ。」
そう胸を張り言い切り、目の前の生徒会候補の横を通り過ぎる。
声は震えも裏返りもしなかったし、なんとか面目は保てただろう。
数歩進むと、もさもさ頭に瓶底眼鏡で表情のわからない男子学生の前に着く。
「初めまして、転入生。ボクは親衛隊の隊長だ。ぜひ君と話がしたいんだが、どうしても今日がいい。今から少し都合を付けてもらえないだろうか。」
出来るだけ高圧的に、でも上からだけではなく。
要は断りにくく、ということだ。
断られてしまっては意味がない。
「ちょっと待ってください!そんなこと、させられるわけないでしょう!」
後ろからした声の主に肩を捕まれた。
きちんと敬語を使っている。
彼はなかなか素直ないい奴のようだ。
肩に置かれた手を掴み下ろさせると、彼と向かい合うため回れ右をした。
「君は、転入生の友達かい?」
「は、はい。」
「今の親衛隊がどんなものかも分かってる?」
「はい。」
「なら心配する気持ちもわかる。今ボクがここで彼には何もしないと言っても信用できないだろう。」
「だから…」と、そこまでを一息で言い終えると一度深く息を吸い、にっこりと笑ってみせる。
「君も着いて来ればいい。」
目の前には間抜け面したいい男。
どんな顔でも様になっている。
いや、間抜け面が様になるっていいのか?
まぁどうでもいいか、と間抜け面は放っておき、また回れ右をした。
「転入生。君はどうだい?親衛隊のよくない噂は嫌というほど聞いているだろうから一対一は嫌だろうけど、彼がいるなら安心じゃないか?」
さっきから絶やさず続けていた笑みを消し、真っすぐに目の前のもさ頭を捕らえる。
一瞬、目の前のもさ頭の肩がピクッと反応したが、気にせず言葉を続けた。
「ボクは自分で言うのも何だけど、穏健派だ。出来るなら話し合いで解決したい。君にとってもこれは悪い話ではないはずだ。」
それだけ言うとまたにっこりと笑う。
「どうかな?」と問い質すと、目の前のもさ頭は少し考えるように首を傾げ、
「アンタ今の笑顔よりも、さっきの顔の方がいいな。」
教室の空気が凍り付いた。
コイツは何を言っているんだ。
時代遅れのKYってやつか?
「…で、返事は?」
ボクは敢えて笑みを浮かべたまま言った。
「だからさ…」
「ボクの顔はこの際無視してくれないかな?とにかく話が出来るか出来ないかを聞かせて欲しいんだけど。」
苛々が募っていく。
これのどこに惹かれるのか、理解が出来ない。
なるほど、隊員たちがあんなに怒り狂っていたのはこれが原因か。
今なら、少しだけ気持ちが分かる。
「因みに、此方としては友達を同伴させても良いと其方にとって都合のいい条件を提案している。もしこれを断るようなことがあれば…」
解ってるだろ?と、目の前にいるもさ頭ではなく、後ろのお友達に脅しを掛ける。
「え?な…」
「わかりました。」
どうやら伝わったようだ。
察しのいい奴は好きだ。
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