貴方のために

土田

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やはり、何度経験しても嫌味を言われに行くというのは嫌なものだ。
でももたもたしてても嫌味が増えるだけだ。
意を決して振り返り、目的の人物を探す。
この学校の教師では珍しい派手な姿はすぐに見つけることが出来た。

さっと行ってさっと帰ればいい。

そう思い見つけたその人物のもとへ歩いていく。


「失礼します。先生、今日の分の仕事が済みましたので持ってきました。」

「おせーんだよ、役立たず。なにが済みましたのでぇ、だ。まったく、隊長様呑気だなぁ。こっちは仕事で大忙しだってのに。」

「どうもスミマセンでした。」


この目の前にいる見た目も話の内容も教師らしからぬ男も転入生に惚れている一人だ。

元は、見た目は今と同じく派手で多少口は悪いが、どの生徒にも別け隔てなく接してくれるいい教師だった。
そこを買われて生徒会の顧問になったのだが、今はお世辞にもいい教師とは言えない。


「つかお前、今日アイツのこと呼び出したんだってなぁ。」

「はい。」


情報が早いな。
まぁ、仮にも教師だし、ボクたちもかなり目立っていたから仕方ないか。


「てめえアイツになんかしてみろ!只の退学じゃ済まねーからな!」


漫画とかに出てきそうな、典型的なボンボンの発想だな。
確か、どっかの企業の次男坊だったか。

そんなこと思いながら、目の前で醜く喚く教師に酷く冷めた気持ちになった。


「ボクには何も出来ませんよ。そんな知恵も度胸もありませんから。」


「失礼しました」と頭を下げ踵を返す。
普段のボクなら考えられない行動だ。
でももうあの教師を見ていたくなかった。

明日からまた嫌味が増えるな、なんて肩を落とし職員室を後にした。


そして翌日、早速集会を開き昨日の成果を隊員たちに聞いてもらっている。
反応は様々だが、その表情はどれも明るいものではない。


「……今聞いてもらったのが、ボクと転入生の話し合いの全てだ。」


皆呆れているのか、それとも嵐の前の静けさと言うやつだろうか、室内はシーンと静まり返っている。


「ボクは、彼がどうこの学校を変える気なのか、もうしばらく様子を見たいと思う。」


途端に騒つきだす隊員たち。
そして、上がる不平不満の声。


「あんなに馬鹿にされて黙ってるつもりですか!!?」

「アイツ、何もわかってないのに!!」

「隊長は悔しくないんですか!!」


これが普通の、当たり前の反応だ。
でも、それでもボクは制裁はしたくなかった。


「静かに!!!!!」


だって、ボクはまだ学校にいたいんだ。
仕方ないじゃないか。
あの人の傍にいたいんだ。
それを、あんな奴の所為で台無しになんてしたくない。


「皆の気持ちは分かる。分かるし、ボクだって悔しいしムカついてもいる。だけど、今動いたら奴の思う壺だと、ボクは思う。下手に手を出して、それを生徒会の皆さんに奴が尾鰭背鰭を付けて告げ口をしたら?今の奴は偏見、思い込みの塊だ。何を言われるか分からない。もしかしたら、それを狙っているのかもしれない。」


いずれ、我慢できなくなる奴が出てくるだろう。
ボクに出来るのはなんとかそれを先延ばしにすることだけだ。
そのためならどんな嘘だろうが綺麗事だろうが並べてみせよう。


「生徒会の皆さんはいずれ分かってくださる。ボクたちこそが皆さんの為になっているんだって。だって実際そうじゃないか!今生徒会の皆さんの仕事を代わりにしているのは誰だ?ボクたちだ!今生徒会の皆さんに自由な時間を作っているのは誰だ?ボクたちだ!」


慕ってくれている隊員に悪いと言うことはわかっている。
だから隊長としての仕事はちゃんとしようと思う。
ボクなりに、ではあるが。


「生徒会の皆さんはきっといま少し疲れていらっしゃるんだ。ボク等が今ここで少し耐えて、生徒会の皆さんが心から休める時間を作ることが出来れば、必ずその努力は報われる。そうでなければおかしい!あんな、何の努力もしないで与えられる事しか知らないような奴に、ボクたちの努力が負けるわけない!!」


そうだ!
あんな奴の薄っぺらな同情に、ボクの想いが負けるわけない!!


「わかりました、隊長!」

「そうですよね!」

「あんな奴に、俺達の想いが負けるはずないです!」

「俺達のやり方で戦いましょう!」


皆が納得してくれたわけではないだろう。
渋っている顔も見受けられる。
でもとりあえず、この場は凌げたようだ。


「ありがとう、皆。一緒に頑張ろう!」


こんなボクで、本当にごめんなさい。

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