7 / 19
7
しおりを挟む
ボクはそこでポケットに片方の手を入れ、レコーダーの停止ボタンを押した。
これだけ聞ければ、もう十分だ。
「木を見て森を見ず、だな。…わかった。時間を取らせてすまなかったね。」
そう言い立ち上がろうと、ボクは机に置いたままでいた方の手に力を入れる。
「あ、あの!」
戸惑いながら、でも必死にボクを呼び止めたのはお友達だ。
「なに?」とボクは手に入れた力を抜き座り直した。
「彼は、俺にとって大切な友達なんです。」
「ああ、それで?」
「だから、その…制裁、は…」
「教室で言った通り、ボクは穏健派だ。制裁を指示したりはしないし、目の届く範囲ではさせない。」
そう言うと安心したようにホッと息を吐き頬を緩めるお友達。
彼は知らないんだ。
「でも、ボクは隊員からあまり好かれていないし、寧ろ邪魔だと思われているよ。」
親衛隊の本当の恐ろしさを。
「今日ここで君に聞いたことは録音させてもらった。明日の親衛隊の集会で報告させてもらう。」
「ッそんな!!」
焦ったのはお友達。
プライドの高い親衛隊が、これを聞いて何を思うか。
まぁ、怒りや憎しみ、だろうな。
「自分の言ったことには責任を持てよ、転入生。」
そう言い、今度こそ立ち上がる。
「最近バカ集団にも回ってくる仕事が増えてね。話を聞いてもらえないならそろそろ仕事に戻りたいんだ。先生にこの部屋の鍵を返さなければならないから、出ていってくれるか?」
「それなら俺がやっておきます!」
「いや、ここを借りたのはボクだ。ボクから返さないと失礼だろ。」
「そう、ですね。スミマセン。」
「そんな奴に頭下げる必要ねーよ!!」
「行こうぜ!」と、頭を下げる友達の腕をむんずと掴み部屋から出ていく転入生と、つんのめりながら引っ張られていくお友達。
彼は去りぎわに申し訳なさそうな顔をしてまた頭を下げていった。
彼はたぶん気付いた。
転入生の長所と言う名の短所に。
いや、気付いていてほしい。
きっと今、転入生を本当の意味で守れるのは彼しかいないだろうから。
自分のこれからを思うと何度しても足りないであろう溜息を吐き、ボクも部屋を後にし、その足で職員室へと向かった。
部屋の使用許可を出してくれた教師に使い終わったことを報告し鍵を返すと、「お疲れ様」と労いの言葉を掛けられた。
そこで、この教師は転入生の副担任だったことを思い出したが、ボクは苦笑いを浮かべ「いえ、」と首を振ることしかできなかった。
ボクの表情から悟ったのだろう、その目には諦めの色が濃く出ていた。
職員室を出ると、親衛隊の隊員が向こうから歩いてくるのが見えた。
「あ、隊長!」
向こうもボクに気付いたようで、声をかけてきてくれた。
互いに少し早足で落ち合う。
「やぁ、こんにちは。仕事の方はどうなっているかな?」
「はい、今日は元々量も少ない上に順調で、もうこれを提出すれば終わりです。」
そう言って抱えていたファイルを手に持ち直し強調する。
「そうか、よかった。行けなくて悪かったね。」
「いえ!」と首を振りながら笑顔で答えてくれる彼。
その顔にはうっすらと隈が出来ていた。
こう健気にされると、仕事をする時間を割いたのにあまり成果が得られなかった自分が情けなくなる。
今親衛隊は、過激派と穏健派が半々くらいで構成されてる。
ボクが一年の頃は穏健派ばかりだったのだが、昨年の隊長に触発されたり、役員に抱かれたことによって特別な感情が芽生えてしまったりして大勢が過激派になってしまったのだ。
それでもまだ半々で押さえられているのは、皆純粋に生徒会の役に立ちたいという気持ちがあるからだろう。
でもそれも限界に近い。
「せめてものお詫びに、それはボクから顧問に渡しておくよ。だから今日はもう帰るといい。」
「でも、それじゃ…」
「いいから。」と、半ば奪うようにファイルを取る。
申し訳なさそうに眉を下げ狼狽える彼を安心させようと、笑みを浮かべ頭を撫でてやる。
「だいぶ疲れているようだから、今日はもう部屋に戻ってゆっくり休みなさい。きっと、また明日からは今より忙しくなる。」
「じゃあね。」と頭を撫でていた手をそのまま上げ、くるっと背を向け上げていた手を振りながら来た道を戻る。
先程よりも重い気持ちで職員室のドアをノックし、開ける。
「失礼します」と一礼してから中に入り、すぐに後ろを向いてドアを閉め、そこで一度気合いを入れるために深呼吸をした。
ファイルをもつ手に力が入る。
これだけ聞ければ、もう十分だ。
「木を見て森を見ず、だな。…わかった。時間を取らせてすまなかったね。」
そう言い立ち上がろうと、ボクは机に置いたままでいた方の手に力を入れる。
「あ、あの!」
戸惑いながら、でも必死にボクを呼び止めたのはお友達だ。
「なに?」とボクは手に入れた力を抜き座り直した。
「彼は、俺にとって大切な友達なんです。」
「ああ、それで?」
「だから、その…制裁、は…」
「教室で言った通り、ボクは穏健派だ。制裁を指示したりはしないし、目の届く範囲ではさせない。」
そう言うと安心したようにホッと息を吐き頬を緩めるお友達。
彼は知らないんだ。
「でも、ボクは隊員からあまり好かれていないし、寧ろ邪魔だと思われているよ。」
親衛隊の本当の恐ろしさを。
「今日ここで君に聞いたことは録音させてもらった。明日の親衛隊の集会で報告させてもらう。」
「ッそんな!!」
焦ったのはお友達。
プライドの高い親衛隊が、これを聞いて何を思うか。
まぁ、怒りや憎しみ、だろうな。
「自分の言ったことには責任を持てよ、転入生。」
そう言い、今度こそ立ち上がる。
「最近バカ集団にも回ってくる仕事が増えてね。話を聞いてもらえないならそろそろ仕事に戻りたいんだ。先生にこの部屋の鍵を返さなければならないから、出ていってくれるか?」
「それなら俺がやっておきます!」
「いや、ここを借りたのはボクだ。ボクから返さないと失礼だろ。」
「そう、ですね。スミマセン。」
「そんな奴に頭下げる必要ねーよ!!」
「行こうぜ!」と、頭を下げる友達の腕をむんずと掴み部屋から出ていく転入生と、つんのめりながら引っ張られていくお友達。
彼は去りぎわに申し訳なさそうな顔をしてまた頭を下げていった。
彼はたぶん気付いた。
転入生の長所と言う名の短所に。
いや、気付いていてほしい。
きっと今、転入生を本当の意味で守れるのは彼しかいないだろうから。
自分のこれからを思うと何度しても足りないであろう溜息を吐き、ボクも部屋を後にし、その足で職員室へと向かった。
部屋の使用許可を出してくれた教師に使い終わったことを報告し鍵を返すと、「お疲れ様」と労いの言葉を掛けられた。
そこで、この教師は転入生の副担任だったことを思い出したが、ボクは苦笑いを浮かべ「いえ、」と首を振ることしかできなかった。
ボクの表情から悟ったのだろう、その目には諦めの色が濃く出ていた。
職員室を出ると、親衛隊の隊員が向こうから歩いてくるのが見えた。
「あ、隊長!」
向こうもボクに気付いたようで、声をかけてきてくれた。
互いに少し早足で落ち合う。
「やぁ、こんにちは。仕事の方はどうなっているかな?」
「はい、今日は元々量も少ない上に順調で、もうこれを提出すれば終わりです。」
そう言って抱えていたファイルを手に持ち直し強調する。
「そうか、よかった。行けなくて悪かったね。」
「いえ!」と首を振りながら笑顔で答えてくれる彼。
その顔にはうっすらと隈が出来ていた。
こう健気にされると、仕事をする時間を割いたのにあまり成果が得られなかった自分が情けなくなる。
今親衛隊は、過激派と穏健派が半々くらいで構成されてる。
ボクが一年の頃は穏健派ばかりだったのだが、昨年の隊長に触発されたり、役員に抱かれたことによって特別な感情が芽生えてしまったりして大勢が過激派になってしまったのだ。
それでもまだ半々で押さえられているのは、皆純粋に生徒会の役に立ちたいという気持ちがあるからだろう。
でもそれも限界に近い。
「せめてものお詫びに、それはボクから顧問に渡しておくよ。だから今日はもう帰るといい。」
「でも、それじゃ…」
「いいから。」と、半ば奪うようにファイルを取る。
申し訳なさそうに眉を下げ狼狽える彼を安心させようと、笑みを浮かべ頭を撫でてやる。
「だいぶ疲れているようだから、今日はもう部屋に戻ってゆっくり休みなさい。きっと、また明日からは今より忙しくなる。」
「じゃあね。」と頭を撫でていた手をそのまま上げ、くるっと背を向け上げていた手を振りながら来た道を戻る。
先程よりも重い気持ちで職員室のドアをノックし、開ける。
「失礼します」と一礼してから中に入り、すぐに後ろを向いてドアを閉め、そこで一度気合いを入れるために深呼吸をした。
ファイルをもつ手に力が入る。
0
あなたにおすすめの小説
青龍将軍の新婚生活
蒼井あざらし
BL
犬猿の仲だった青辰国と涼白国は長年の争いに終止符を打ち、友好を結ぶこととなった。その友好の証として、それぞれの国を代表する二人の将軍――青龍将軍と白虎将軍の婚姻話が持ち上がる。
武勇名高い二人の将軍の婚姻は政略結婚であることが火を見るより明らかで、国民の誰もが「国境沿いで睨み合いをしていた将軍同士の結婚など上手くいくはずがない」と心の中では思っていた。
そんな国民たちの心配と期待を背負い、青辰の青龍将軍・星燐は家族に高らかに宣言し母国を旅立った。
「私は……良き伴侶となり幸せな家庭を築いて参ります!」
幼少期から伴侶となる人に尽くしたいという願望を持っていた星燐の願いは叶うのか。
中華風政略結婚ラブコメ。
※他のサイトにも投稿しています。
後宮に咲く美しき寵后
不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。
フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。
そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。
縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。
ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。
情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。
狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。
縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。
『定時後の偶然が多すぎる』
こさ
BL
定時後に残業をするたび、
なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。
仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。
必要以上に踏み込まず、距離を保つ人――
それが、彼の上司だった。
ただの偶然。
そう思っていたはずなのに、
声をかけられる回数が増え、
視線が重なる時間が長くなっていく。
「無理はするな」
それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、
彼自身はまだ知らない。
これは、
気づかないふりをする上司と、
勘違いだと思い込もうとする部下が、
少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。
静かで、逃げ場のない溺愛が、
定時後から始まる。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
狼の護衛騎士は、今日も心配が尽きない
結衣可
BL
戦の傷跡が癒えた共生都市ルーヴェン。
人族と獣人族が共に暮らすその街で、文官ユリス・アルヴィンは、穏やかな日々の中に、いつも自分を見守る“優しい視線”の存在を感じていた。
その正体は、狼族の戦士長出身の護衛騎士、ガルド・ルヴァーン。
無口で不器用だが、誠実で優しい彼は、いつしかユリスを守ることが日課になっていた。
モフモフ好きなユリスと、心配性すぎるガルド。
灰銀の狼と金灰の文官――
異種族の二人の関係がルーヴェンの風のようにやさしく、日々の中で少しずつ変わっていく。
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる