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俺は翔太
しおりを挟む昔から俺と兄貴はよく比べられた。
兄貴は勉強も運動もなんでもできた。おまけにモテた。
顔なんて俺と似たようなもんなのに兄貴の方がなんでも優れていた。むしろ顔が似ているから余計に比べられた。
俺は面白くなかった。
兄貴は、人一倍勉強に熱心で
遊びのはずのスポーツに本気で
俺は分かっていた。兄貴が人より出来がいいのは、人より努力してるからだって。
努力するのがカッコ悪くて、カッコつけたくて、そんな風に思う俺が
兄貴なんかより絶対カッコ悪いなんて
俺は分かっていた。
俺は面白くなかった。
ーーー俺は嬉しかったのかもしれない。
どこか安心していたのかもしれない。
”優しくて出来の良い兄”
兄貴が、事故に遭ったーーー
皆泣いている。
母さんも、兄貴の彼女も、兄貴の友達も。
兄貴は嫉妬剥き出しの面倒臭い思春期の俺にも優しかった。
だから兄貴が死んで俺も悲しかった。
涙は出なかった。
親戚の人達は
「残った一人息子が涙も堪えて偉い」と言った。
自分自身、母さんの嘆きぶりを見て自分が泣くどころでは無かったと思った。
そう言い聞かせた。
ーーーーー俺は、「”大地”には母さんを立ち直させられない」事に悲しんだ。
…悲しいと、思ったと思った。
俺は、何かが腑に落ちた気がしていた。
悲しいのではない、虚しさでもない。
…俺は、”翔太”として認められるのだ。
……俺は母さんに”翔太”として見られることが嬉しかったのだ。
「ただいま、母さん」
「翔太おかえりなさい」
俺の名前は兼山大地16歳、”翔太”だ。
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