アイドルになった僕は五感を失った彼女の光になる

春空 桃花

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第二章 憧れ(太陽side)

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   俺の地元は九州の福岡だ。

   俺の誕生日は8月2日でその3日後の8月5日が彼女の誕生日だ。

   彼女の名前は大日野陽葵《おおひの ひまり》。
   産まれた病院が一緒でしかも家は隣どうし、家族ぐるみで仲良くしていていわゆる幼なじみというやつだ。それに陽葵は俺の初恋の人だった。


そして、高校二年生の時まで遡る。


   俺が朝、ゆっくりと学校の準備をしていると毎日俺の家に向かって大きな呼び声が聞こえる。

「太陽ー!おはよう!学校遅れるよー!」

陽葵だ。陽葵は毎日俺の家まで迎えに来て一緒に学校に登校している。
「太陽ー!陽葵ちゃんが迎えに来てるよ!」
朝から母の声が俺の部屋まで響いてくる。
「まったく、陽葵は朝が早いんだよ……」
俺はそうボソボソと文句を言いながら急いで準備をした。

   陽葵の朝は早かった。
   早起きをして地域のラジオ体操に参加している。
   お年寄りの人たちしか参加しないのに陽葵は体操をして地域の人たちと仲良く話すのが日課だ。そして帰ってくると準備をしてすぐ俺を呼びに来る。
   俺も体操をしないかと誘われたが俺は朝が弱いので断った。


   俺も準備が終わり家を出ると陽葵が笑顔で待っていた。
「おはよう!」
「おはよう……」
陽葵の明るい挨拶に俺があくびをしながら挨拶する。
「太陽、眠そうだね。どうせ遅くまでゲームばっかりしてるんでしょ!」
「してないって」
「もう、元気出さないとせっかくのイケメンが台無しだよー」
「うるさいなー」 
陽葵が笑顔で俺をからかってくる。

   俺たちの通学路は商店街を通り抜ける必要があり、商店街を通るといつも地域の人が声をかけてくる。

「陽葵ちゃん、太陽くん、おはよう!」
「おはようございます」

「太陽くん、あんた、ほんとにいい男でイケメンねぇ」
「顔よかけんモテるやろうもん、良かねー、」
おばちゃんたちにそう言われながら背中を叩かれる。
「ありがとうございます……」

   俺は朝から元気なおばちゃんたちに圧倒されながら苦笑いで挨拶をする。その様子を陽葵は嬉しそうに笑顔で見ていた。

「べっぴんさんの陽葵ちゃんと太陽くんはお似合いやねー」
「そうねぇ、太陽くんのお嫁さんには陽葵ちゃんが良かやんね」
今度はそんな話をするおばちゃんたちが俺と陽葵をくっつけようとする。

「どうですかね、太陽にはもっといい人がいると思いますけどねー」
陽葵は笑顔でそう言う。
「いやいや、陽葵ちゃんほどの美人さんはおらんよ」
「美人さんだなんて、ありがとうございます」
「陽葵ちゃんはおばちゃんたちの扱いがよく分かっとるね」
「そうですか?」
おばちゃんたちと陽葵は楽しそうに話していて俺はそれを見ながらさすがだなと思った。


   そして学校につき、教室に入るといきなり教室中がザワザワし始める。
クラスの人たちがみんな俺たちを見てくる。

「さすが樹高くん、今日もかっこいい!」

「クラスに目の保養がいると学校行くのも楽しくなるよね」

「私、樹高くんの隣の席なんだけどこの前体調が悪くなった時に樹高くんだけが気づいてくれて大丈夫?って聞いてくれたのー!」

「きゃーーーっ!ずるいー!私も言われたいな」

コソコソと俺を見ながら女子たちが騒いでいた。

「陽葵!おはよう!」
陽葵の親友の悠海碧《ゆうみ あおい》が陽葵に声をかけた。
「碧、おはよう!」
「ねぇ、この雑誌の最新号みた?めっちゃこの服かわいいのー!」
「ごめーん!まだ見てないや」
「じゃあ、一緒にみよ!」
陽葵が来たとたんにみんなが陽葵の周りに集まってくる。
「陽葵ちゃん!おはよう!」
隣のクラスの人さえも陽葵の周りに集まって来るんだ。

「おい、太陽。大日野さん今日も可愛いなー」
そう言いながらクラスの男子が俺の肩に手を回してきた。

「お前、イケメンのくせに大日野さんと幼なじみってどんな人生だよ。羨ましすぎだろ!」
「樹高、お前!まさか付き合ってないだろうな!」
クラスの男子が俺の周りで陽葵の話ばかりする。

「うるさいなー!付き合ってねぇよ!」
俺は怒りながらそう言う。

付き合えるわけないだろ、陽葵は俺なんか相手にするわけない。俺はそう思った。 
だって陽葵は俺の憧れの人だったから。


   陽葵は昔から明るくてよく笑ってすぐに誰とでも仲良くなれるそんなひまわりのような人だった。

   周りにはいつも人が集まってきて誰からでも好かれていた。地域のおじさん、おばさんに学校の先輩、後輩、クラスメイト、隣のクラスの人に先生、違う学校の人まで陽葵はみんなから好かれていて、誕生日には休み時間ごとに大量のプレゼントを渡しに来たり、放課後にはみんなが祝いにきて帰る頃には荷物が多すぎて持てないなんてことは当たり前のことだった。

   陽葵は男女関係なく誰にでも平等に接していてみんなが周りに集まってくる、なのに俺はコソコソと周りの人がザワついたり、キャーキャーと騒がれたり、勝手にファンクラブまで作られたりして自分の知らないとこで勝手に好意を寄せられているだけで周りに集まってくるなんてことはない。

   俺はそんな陽葵がずっと憧れで好きだった。
   そして陽葵はいつだって俺の希望の光だったんだ。
   だけど俺は陽葵に告白することができなかった。

   なぜなら陽葵はものすごく美人でまるで芸能人のようだった。俺が言うのもなんだが陽葵ほど美人な人をテレビの中でさえも俺は見たことがないと思うほど陽葵は整った顔をしていた。色白美肌でスタイルが良くて俺はイケメンだと言われるが陽葵の横に立って隣を歩くと陽葵が輝きすぎて俺は一歩劣るほどだった。そして陽葵のウェーブがかった茶髪の髪に太陽の光が当たると光沢のある黄金の髪のように輝いて見えたんだ。

そんな完璧すぎる彼女に俺は釣り合わないと思っていた。

授業中、陽葵が先生にあてられた。
「大日野さん、この英文を読んでください」
「はい」
すると陽葵は英文をスラスラと読む。
クラスのみんなも先生もさすがと拍手をする。
陽葵の凄さはこれだけではない。
得意なのは英語だけではなく数学に国語など五教科はもちろん、全教科トップでテストはいつも学年一位なのだ。

   体育の授業で体力測定をすれば、女子の中で一番の運動神経で男子の上位の人たちと競えるほど陽葵は運動ができた。
   部活は空手部で物凄く強くて次の部長だと言われながら今は副部長をしている。
   体育祭ではほとんどすべての種目に出場してリレーではアンカーをつとめたり、応援リーダーをしたりしていた。

   文化祭では合唱の時にピアノを弾いていた。
   実は小さい頃からピアノを習っていて何度もコンクールで入賞していた。
   クラスでは学級委員長をしていて、学校の生徒会にも入っていて次期生徒会長と期待されている。

   陽葵の才能や魅力はみんなを惹きつけるように輝くものだった。

   そしてそんな陽葵のことを俺は少し心配だった。
   陽葵が生き急いでいるように見えたから。


   だけどある日、陽葵が笑顔で俺の方に駆け寄ってきた。
「太陽!あのね、ひまわり畑の入場券が当たったんだ!一緒に行こう」
陽葵は二枚の入場券を大事そうに握っていた。
「ひまわり畑?あー、陽葵が前から行きたがってたやつね」

   陽葵は昔から花が大好きで将来の夢は花屋さんと言うほどだった。
   中でも特にひまわりが好きらしくてずっとひまわり畑を見に行きたいと言っていた。
   そして陽葵が当たったひまわり畑はすごく有名なひまわり畑で万単位の物凄い数のひまわりが咲いている場所だ。
「うん、いいよ」
「やったー!約束ね」

そして俺はこの日、陽葵に告白しようと決めた。 
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