アイドルになった僕は五感を失った彼女の光になる

春空 桃花

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第十章 表と裏の想い

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   太陽がいなくなってしまう……。

   私はその思いに耐えられなかった。

   太陽は生まれた時からずっと一緒でそばにいるのが当たり前だった。
   だけど太陽の夢が私と離れなければ叶わない夢ならば悲しいけど応援したい。

   なのに私の心は矛盾している。

『太陽、行かないで』

『お願い……遠くに行かないで』

『太陽!お願いそばにいて!』

   大好きだからそばにいて
   大好きだから応援したい
   大好きだから……大好きだから……。

   大好きなのに……。
   なんで私はこんなこと思っているの?

   大好きだったら応援しなよって心の声が聞こえてくる。

   さっき太陽の前では応援してるって言えたのに……今は言えない。

   太陽の前で嘘をついた私の言葉は太陽の希望になったのかな?

   だったら私は今さら後には引けない。

   そう思うと涙が溢れてきた。

   でも、私から解放されれば太陽はきっと輝ける
   私が太陽から離れさえすれば……。

『太陽のことを忘れれば私、楽になれるのかな』

   そう思う私の気持ちは今にも壊れそうなくらい悲しくて心が真っ黒になっているようだった。


   次の日、太陽がアイドルになる話題は学校中に広まっていた。
   そしてその話はどんどん広まっていき、三日もたてば、町中に広まった。

   私は太陽の話を聞いてからずっと元気がなかった。

   朝も一人で学校に行くほど太陽を避けてしまっている。

   教室でもほとんど話をしない私に碧がどうしたのか話を聞いてくれた。
「陽葵、どうしたの?」

「……」
   私は何も言えなくて黙っていた。

「太陽のこと?」
「えっ?なんで……」

「太陽と陽葵の絆には劣るかもしれないけど、私だって陽葵の親友で二人の幼なじみであることには変わりないでしょ」
   碧はそう笑顔で言ってくれた。

「分かるよ。そのくらい」


「……私、太陽を応援してるんだ」
「うん」
「でも……」
   その先の言葉を言うのが怖かった。

「でも、私……応援できない……」

「そっか……」
「こんな気持ちで太陽に会えないよね」
   私の話を優しく頷いて聞いてくれる碧に私は苦笑いで答えた。

「しょうがないよね、私が太陽の将来を潰すわけにはいかない。太陽はみんなに求められているんだから」
「……」

「私のそばにいて欲しいなんてわがまますぎるよね」

   私が無理をしていることに気づいたのか碧は私の背中を撫でてくれた。
「陽葵、それはわがままなんかじゃないよ」

「わがままだよ……」

「そばにいて欲しいって思うなんて当たり前でしょ!全然わがままじゃない」
「……」

「大丈夫、陽葵はもう十分太陽の背中を押してるよ。大丈夫だから」

   碧の言葉に涙が流れた。

   私は涙と同時に今までずっと誰にも言えなかった思いが溢れ出た。


「でも、太陽がアイドルになったらファンができる。それは当たり前のことだけど、太陽が離れていくみたいで怖かった……!」

   親友で幼なじみの碧だからこそ言えた。

「……確かにこれからは陽葵だけの太陽じゃなくなるかもしれないし、きっと太陽はファンをすごく大切にすると思う」

「……うん」

「でもね、太陽にとっての一番大切な人は絶対に陽葵だけだから。それだけは絶対に変わらないから。だから太陽を信じてあげて」

「そうかな……」

「当たり前でしょ!何年太陽が陽葵に片想いしてたと思ってるの?それを私が知らないわけないでしょ!」

   碧はそう笑顔で言った。

「ありがとう」

「じゃあさ、太陽がアイドルになったら二人でライブ見に行こうよ!」

「うん!」

   碧のおかげで私は太陽を心から応援することができるそう感じた。
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