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テリヤキバーガー
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「あたしって…、何のために生きてるんだろ?」
三井笑子は、ふとそう思った。
普段はリモートワークで仕事をしている?子は、疲弊していた。
彼女が今いるのは、ビジネス街。
それも夕方、仕事帰りのサラリーマンがごった返す駅前だ。
何故、笑子がここにいるのか?
答えは「呼び出されたから」
もっと言えば、たった一時間の打ち合わせをするためだけに。エンドユーザーにうまく説明する自信が無いから、フォローして欲しいと営業に泣きつかれたから。
ウェブ会議じゃなく、対面で。これもエンドユーザーの要望らしい…。
そのためにいつもより一時間早く起き、満員電車に揺られて、年一、いや半年あるかないかの出社を果たした。
…出社だけでもう体力ケージは半分近く削られているが。
そしてフリーアドレスのデスクに着き、件の打ち合わせ準備をしていると、PCのチャットアプリから最新メッセージがポップアップされた。それを見て更に体力ケージが残り一割までガリガリと削られる音がした。
「ユーザーから緊急の業務が入り参加出来ないと連絡がありました。よって誠に恐縮ですが本日のミーティングをキャンセルさせてください。」
…せめてもっと早く言えよ。
打ち合わせ三十分前。体力どころかやる気も削がれた瞬間だった。
こうして笑子は、残り定時までいる意味が無くなったオフィスで仕事もどきをしていた。
そして冒頭、あの台詞が笑子の口から漏れだした。
…思えば、良いように利用されている気がする。
自分には関わりのない案件の資料を何故か作らされたり、トラブった営業の尻拭いをさせられたり…。
完全に使い捨て可能な便利屋。それが私の立ち位置なんだろうと、自嘲した。
ちなみに「使い捨て」と付けたのは、?子は業務委託を受けているフリーランスだからだ。
もう潮時なのかも…?このまま契約更新せず、次を探そうか?次を探そうにも、無事に見つかるのか?
今日はとことんついていない。気分が落ち込めば思考もネガティブになる。
次々出てくるマイナスな思考に、ますます気分が落ち込んでくる。最悪な無限ループだ。
とりあえず家に帰ろう。そう思い、駅に入ろうと足を進めようとした時…。
鼻腔をくすぐる香ばしい匂いが、笑子を横切った。
そして次の瞬間。
ぐぅーっと、お腹が鳴り響いた。
笑子は匂いの先へ顔を向けた。
そこにあったのは、某大手チェーンのハンバーガーショップ。先程の香ばしい匂いの正体は、そこのフライドポテトであると理解するのに若干時間がかかった。
「そういえば、最近全然ハンバーガー食べていないな…。」
そう呟いたのと同時に足がハンバーガーショップへと舵を切り出していた。
笑子は一瞬驚いたが、すぐに理解した。
もうダメ…。めっちゃ食いたい!
口が、全身が、ハンバーガーを欲している!
溜まった鬱憤をハンバーガーで晴らしたい!
欲望の赴くままに食ってやる!
全身ハンバーガー欲に支配された?はそのまま店の中に入り、カウンターで手早く注文し、商品を受け取り、適当な席に着いた。
トレーの上には、紙に包まれた「TERIYAKI」とプリントされたハンバーガー。サイドメニューは揚げたてフライドポテト。ドリンクは烏龍茶。
揚げたての匂いが脳を、胃袋を刺激する。
はよ食えと言わんばかりに全身の細胞が騒ぎ出している。
野菜なんていらん!ヘルシー、何それ美味しいの?今のあたしに必要なのは、この暴力的なカロリーの塊だ!
そう心の中で叫んだ後、笑子は手を合わせて「いただきます。」と静かに宣言した。
そして笑子は静かにゆっくりとカロリーの暴力を堪能し始めた。
ハンバーガーの紙包みを開き、バンズに挟まれた甘辛いタレをまとったハンバーグが顔をのぞかせる。お世辞程度の野菜も挟まったそれに勢いよくかぶりつく。
濃いめの甘辛ソースとチープな豚肉パティの味が程よく絡み合い、口の中に広がり、それまでのネガティブ思考を一気に払拭させた。
口の中、今めっちゃ幸せ。
続けてフライドポテト。ちょい塩分濃いめの味付けが更に食欲を刺激する。
それぞれの味をしっかり堪能したいので、烏龍茶で口に残った味をしっかり流し込む。
一口、一口、また一口。ゆっくり味をかみ締める度、笑子の中に溜まっていたマイナスな感情がゆっくりと消化されるのを感じた。
湧き上がる幸福感がより一層食欲を掻き立てる。笑子は文字通り「幸せ」を噛み締めた。
けどその幸せな時間も終わりを迎える時が来た。
ハンバーガーの最後の一口を飲み込み、ポテトの欠片を口に放り込み、残りの烏龍茶を一気飲みする。
ふぅーっと一息着き、お腹に手を当てる。
「あぁ、美味しかった~」幸福感丸出しの?子の顔に不満は無くなっていた。
満腹になったお腹を擦りながら、笑子は思った。
「ハンバーガー食べるのも久しぶりだったけど、外出るのも久しぶりだったわ」
リモートワークになってから、用事がある時以外、外出することはほとんど無くなっていた。たかがハンバーガーだが、こんなに美味いと思ったのも久しぶりだった。
思えば出だしこそ最悪だったが、出社したからこそ得ることが出来た小さな幸せ。
「…まあ、結果的に出社して良かったな。」
思考もポジティブになった笑子は、小さく締めの挨拶をした。
ケセラセラ、明日は明日の風が吹く。そう心に呟きながら、
「ごちそうさまでした。」
三井笑子は、ふとそう思った。
普段はリモートワークで仕事をしている?子は、疲弊していた。
彼女が今いるのは、ビジネス街。
それも夕方、仕事帰りのサラリーマンがごった返す駅前だ。
何故、笑子がここにいるのか?
答えは「呼び出されたから」
もっと言えば、たった一時間の打ち合わせをするためだけに。エンドユーザーにうまく説明する自信が無いから、フォローして欲しいと営業に泣きつかれたから。
ウェブ会議じゃなく、対面で。これもエンドユーザーの要望らしい…。
そのためにいつもより一時間早く起き、満員電車に揺られて、年一、いや半年あるかないかの出社を果たした。
…出社だけでもう体力ケージは半分近く削られているが。
そしてフリーアドレスのデスクに着き、件の打ち合わせ準備をしていると、PCのチャットアプリから最新メッセージがポップアップされた。それを見て更に体力ケージが残り一割までガリガリと削られる音がした。
「ユーザーから緊急の業務が入り参加出来ないと連絡がありました。よって誠に恐縮ですが本日のミーティングをキャンセルさせてください。」
…せめてもっと早く言えよ。
打ち合わせ三十分前。体力どころかやる気も削がれた瞬間だった。
こうして笑子は、残り定時までいる意味が無くなったオフィスで仕事もどきをしていた。
そして冒頭、あの台詞が笑子の口から漏れだした。
…思えば、良いように利用されている気がする。
自分には関わりのない案件の資料を何故か作らされたり、トラブった営業の尻拭いをさせられたり…。
完全に使い捨て可能な便利屋。それが私の立ち位置なんだろうと、自嘲した。
ちなみに「使い捨て」と付けたのは、?子は業務委託を受けているフリーランスだからだ。
もう潮時なのかも…?このまま契約更新せず、次を探そうか?次を探そうにも、無事に見つかるのか?
今日はとことんついていない。気分が落ち込めば思考もネガティブになる。
次々出てくるマイナスな思考に、ますます気分が落ち込んでくる。最悪な無限ループだ。
とりあえず家に帰ろう。そう思い、駅に入ろうと足を進めようとした時…。
鼻腔をくすぐる香ばしい匂いが、笑子を横切った。
そして次の瞬間。
ぐぅーっと、お腹が鳴り響いた。
笑子は匂いの先へ顔を向けた。
そこにあったのは、某大手チェーンのハンバーガーショップ。先程の香ばしい匂いの正体は、そこのフライドポテトであると理解するのに若干時間がかかった。
「そういえば、最近全然ハンバーガー食べていないな…。」
そう呟いたのと同時に足がハンバーガーショップへと舵を切り出していた。
笑子は一瞬驚いたが、すぐに理解した。
もうダメ…。めっちゃ食いたい!
口が、全身が、ハンバーガーを欲している!
溜まった鬱憤をハンバーガーで晴らしたい!
欲望の赴くままに食ってやる!
全身ハンバーガー欲に支配された?はそのまま店の中に入り、カウンターで手早く注文し、商品を受け取り、適当な席に着いた。
トレーの上には、紙に包まれた「TERIYAKI」とプリントされたハンバーガー。サイドメニューは揚げたてフライドポテト。ドリンクは烏龍茶。
揚げたての匂いが脳を、胃袋を刺激する。
はよ食えと言わんばかりに全身の細胞が騒ぎ出している。
野菜なんていらん!ヘルシー、何それ美味しいの?今のあたしに必要なのは、この暴力的なカロリーの塊だ!
そう心の中で叫んだ後、笑子は手を合わせて「いただきます。」と静かに宣言した。
そして笑子は静かにゆっくりとカロリーの暴力を堪能し始めた。
ハンバーガーの紙包みを開き、バンズに挟まれた甘辛いタレをまとったハンバーグが顔をのぞかせる。お世辞程度の野菜も挟まったそれに勢いよくかぶりつく。
濃いめの甘辛ソースとチープな豚肉パティの味が程よく絡み合い、口の中に広がり、それまでのネガティブ思考を一気に払拭させた。
口の中、今めっちゃ幸せ。
続けてフライドポテト。ちょい塩分濃いめの味付けが更に食欲を刺激する。
それぞれの味をしっかり堪能したいので、烏龍茶で口に残った味をしっかり流し込む。
一口、一口、また一口。ゆっくり味をかみ締める度、笑子の中に溜まっていたマイナスな感情がゆっくりと消化されるのを感じた。
湧き上がる幸福感がより一層食欲を掻き立てる。笑子は文字通り「幸せ」を噛み締めた。
けどその幸せな時間も終わりを迎える時が来た。
ハンバーガーの最後の一口を飲み込み、ポテトの欠片を口に放り込み、残りの烏龍茶を一気飲みする。
ふぅーっと一息着き、お腹に手を当てる。
「あぁ、美味しかった~」幸福感丸出しの?子の顔に不満は無くなっていた。
満腹になったお腹を擦りながら、笑子は思った。
「ハンバーガー食べるのも久しぶりだったけど、外出るのも久しぶりだったわ」
リモートワークになってから、用事がある時以外、外出することはほとんど無くなっていた。たかがハンバーガーだが、こんなに美味いと思ったのも久しぶりだった。
思えば出だしこそ最悪だったが、出社したからこそ得ることが出来た小さな幸せ。
「…まあ、結果的に出社して良かったな。」
思考もポジティブになった笑子は、小さく締めの挨拶をした。
ケセラセラ、明日は明日の風が吹く。そう心に呟きながら、
「ごちそうさまでした。」
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