4 / 56
壱場 四
しおりを挟む
「脅すという事か?」
吉右衛門は低く唸った。
「そのような事はございません。大滝様流に言えば、事実をお伝えするのみ。と言ったところですか?」
この目の前の鎌田という男は余裕の表情を浮かべ吉右衛門を見ている。吉右衛門も今までの会話で相当自分たちの事を調べ上げられていることに気付いた。
『静華に知られるとか、本当かよ。力は使えなくなったらしいが、包丁で俺の吉右衛門殿に傷の一つも刻みそうだようなぁ。こぇ~。くそっ完全に色仕掛けにかかった!』
「選択肢はないと言ったところか?」
「はい。但し、救出が成功すれば報酬としてこの続きをお楽しみください」
鎌田は真顔で話している。
「要るか!」
「もう一つ、今回の目付け役に我らの者を一名同行させます。ご随意とお使いください」
と言い、鎌田は部屋に男を招き入れた。
「あれ? お前どっかで見たような……」
部屋に入って来たのは男で僧兵の恰好をしていた。
その僧兵をみて吉右衛門が指をさしている。驚いた顔をして指を差していた吉右衛門に僧兵は、
「あぁ、お前は! 静華様の下男!!」
と継ぐと
「おい! だれが下男だ。いいとこ従者ぐらいにしろ!」
「うるさいわ! 天女様と一緒に仕事しているだけでも果報者であろう」
「弁慶、過ぎるぞ!!」
鎌田が割って入った。
弁慶は、吉右衛門との再会について鎌田から前情報を与えられてはいなかった。あの時に静華に諭されるまでは真人間になろうなどとは思ってもいなかったし行動もしていなかった。しかし、今、こうして静華から言われたとおりにすることでまわりまわってまた、会えることが出来るのかと思うと夢見心地もいいところであった。
「申し訳ございませぬ。しかしながら、拙僧の気持ちが漏れたまで、他意はござりませぬ。早速で悪いが、今夜からお主と一緒だよろしく頼むぞ」
そう言って弁慶が手行李を片手に準備万端整ったと報告している。
「おい、ちょっと待て。俺はある程度探りを入れないと仕事はしない。それまでにはまだ時間が必要だ。だから、こんな奴、今すぐにつけられても困る。ある程度、固まったらまた話をしに来るそれまで待て」
吉右衛門が珍しくまじめな顔をして鎌田を見やる。吉右衛門にすれば、今夜の事を靜華に悟られるリスクを減らすためにも弁慶を屋敷に連れていく事を渋っているのだが。
「そうおっしゃると思っておりましたが、それも含めてのお話でございます」
と言って、いまだ上気した顔を残す美郷を鎌田は指さした。
「くっ。交渉しているのではないという意味か?」
一睨みする吉右衛門に鎌田は涼しい顔で。
「お話が早い。何卒宜しくお願い致します。委細はその弁慶に説明してありますので」
再び平伏した。
「ご丁寧な脅しだな……」
吉右衛門はため息交じりに視線を部屋の外へと向け、入って来た庭に向かって歩いて行った。
「ところで、誰を助けりゃいいんだ?」
屋敷から降り、庭にいた吉右衛門が振り向きざま聞いた。
「源九郎義経様です」
吉右衛門は低く唸った。
「そのような事はございません。大滝様流に言えば、事実をお伝えするのみ。と言ったところですか?」
この目の前の鎌田という男は余裕の表情を浮かべ吉右衛門を見ている。吉右衛門も今までの会話で相当自分たちの事を調べ上げられていることに気付いた。
『静華に知られるとか、本当かよ。力は使えなくなったらしいが、包丁で俺の吉右衛門殿に傷の一つも刻みそうだようなぁ。こぇ~。くそっ完全に色仕掛けにかかった!』
「選択肢はないと言ったところか?」
「はい。但し、救出が成功すれば報酬としてこの続きをお楽しみください」
鎌田は真顔で話している。
「要るか!」
「もう一つ、今回の目付け役に我らの者を一名同行させます。ご随意とお使いください」
と言い、鎌田は部屋に男を招き入れた。
「あれ? お前どっかで見たような……」
部屋に入って来たのは男で僧兵の恰好をしていた。
その僧兵をみて吉右衛門が指をさしている。驚いた顔をして指を差していた吉右衛門に僧兵は、
「あぁ、お前は! 静華様の下男!!」
と継ぐと
「おい! だれが下男だ。いいとこ従者ぐらいにしろ!」
「うるさいわ! 天女様と一緒に仕事しているだけでも果報者であろう」
「弁慶、過ぎるぞ!!」
鎌田が割って入った。
弁慶は、吉右衛門との再会について鎌田から前情報を与えられてはいなかった。あの時に静華に諭されるまでは真人間になろうなどとは思ってもいなかったし行動もしていなかった。しかし、今、こうして静華から言われたとおりにすることでまわりまわってまた、会えることが出来るのかと思うと夢見心地もいいところであった。
「申し訳ございませぬ。しかしながら、拙僧の気持ちが漏れたまで、他意はござりませぬ。早速で悪いが、今夜からお主と一緒だよろしく頼むぞ」
そう言って弁慶が手行李を片手に準備万端整ったと報告している。
「おい、ちょっと待て。俺はある程度探りを入れないと仕事はしない。それまでにはまだ時間が必要だ。だから、こんな奴、今すぐにつけられても困る。ある程度、固まったらまた話をしに来るそれまで待て」
吉右衛門が珍しくまじめな顔をして鎌田を見やる。吉右衛門にすれば、今夜の事を靜華に悟られるリスクを減らすためにも弁慶を屋敷に連れていく事を渋っているのだが。
「そうおっしゃると思っておりましたが、それも含めてのお話でございます」
と言って、いまだ上気した顔を残す美郷を鎌田は指さした。
「くっ。交渉しているのではないという意味か?」
一睨みする吉右衛門に鎌田は涼しい顔で。
「お話が早い。何卒宜しくお願い致します。委細はその弁慶に説明してありますので」
再び平伏した。
「ご丁寧な脅しだな……」
吉右衛門はため息交じりに視線を部屋の外へと向け、入って来た庭に向かって歩いて行った。
「ところで、誰を助けりゃいいんだ?」
屋敷から降り、庭にいた吉右衛門が振り向きざま聞いた。
「源九郎義経様です」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
合成師
あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。
そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる