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肆場 二
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「何をした!」
義経が吉右衛門に掴みかかっている。
「聞くな。自分の目で見りゃわかるだろ」
先に部屋を出され、霞に術を解いてもらって身体が自由になったところ、部屋の中から出てきた吉右衛門に怒鳴っているのだ。吉右衛門は残りの女三人を始末してきたところだ。
「お前は弁慶の親分だから生かされているだけだ。感謝しろ青瓢箪」
「皆殺しだ。我に歯向かう輩は皆殺しにしてくれる」
目を吊り上げて口角から泡を飛ばして吉右衛門にかみついている。
「あ? 青病譚。誰に口きいてるんだ?」
吉右衛門は右手に持つ太刀を義経に渡すと
「それで俺を殺して見ろ。出来なきゃ俺がお前を殺す。どうした? 早くしろ」
低く唸り義経の目を凝視している。表情だけ見ればいつもの半笑いは消え去り、悪鬼の如き視線を向ける。その視線で睨まれ義経は動けなくなった。やおら吉右衛門は義経の腕を掴んで隣の部屋まで引きずるように連れて行くと足で障子戸を蹴破り義経を投げ入れた。
「よく見ろ! これが皆殺しだ! お前にこれが出来るのか!!」
部屋に遅れてはいってきた吉右衛門は義経を蹴り上げ部屋の中央へ飛ばした。
全裸の義経はそのままうつ伏せから置きあがろうと手をつくと、
右手が温かい。温かい物の中に手が入っている。
義経が右手を見ると手首の上まで血だまりがある。その血だまりの中の見えない掌は斬られたばかりの死体の内臓を掴んでいた。
義経の周りには女、子供の死体がいくつも折り重なるようにあったのだ。
咄嗟に手を引き、その場にうずくまって。
「ぁぁぁぁぁ」
声も無く震える。
更に蹴りを入れる吉右衛門。軽々と飛ばされ死体の山の中へと入りこむ義経。
「ぅぅぅぅぅぅぅぅ」
小刻みに震えている義経に
「皆殺しとはこう言うことだ。しっかり見ろ!! お前は何をしている。死体の間で震えているだけか? お前の吐いたセリフはこういう結果をもたらすものだ! お前はこの者達に死ぬ理由を説明する責任があるんだ!! 出来るのか!! 言った事には責任を持て!! その覚悟が無いなら今後一切同じセリフを吐くな!!」
部屋の外でそれを見ていた弁慶は吉右衛門が出てくるのを待って中へと進んで言った。
「御曹司。儂が弁慶だ。お前さんの子分として鎌田に雇われた。しかし、今は迷っている。お前さんが主たるものなのか。悪いが今のお前さんにはついていけん。今までお前さんが源氏の御曹司でなかったら、どれほどの者が付き従ったか考えたことがおありか? 他の者は知らんが儂は人物に惚れなければついて行かんよ。今のお前さんにはそれが無い。今まで人で苦労したろうにな。何にも学ばなかったのか? 今夜の事は忘れろ。他言無用だ。喋ればあそこの悪鬼が必ずお前さんを追い詰める。わかったな。直にここから我らは立ち去る。後は好きにすればいい。」
義経が吉右衛門に掴みかかっている。
「聞くな。自分の目で見りゃわかるだろ」
先に部屋を出され、霞に術を解いてもらって身体が自由になったところ、部屋の中から出てきた吉右衛門に怒鳴っているのだ。吉右衛門は残りの女三人を始末してきたところだ。
「お前は弁慶の親分だから生かされているだけだ。感謝しろ青瓢箪」
「皆殺しだ。我に歯向かう輩は皆殺しにしてくれる」
目を吊り上げて口角から泡を飛ばして吉右衛門にかみついている。
「あ? 青病譚。誰に口きいてるんだ?」
吉右衛門は右手に持つ太刀を義経に渡すと
「それで俺を殺して見ろ。出来なきゃ俺がお前を殺す。どうした? 早くしろ」
低く唸り義経の目を凝視している。表情だけ見ればいつもの半笑いは消え去り、悪鬼の如き視線を向ける。その視線で睨まれ義経は動けなくなった。やおら吉右衛門は義経の腕を掴んで隣の部屋まで引きずるように連れて行くと足で障子戸を蹴破り義経を投げ入れた。
「よく見ろ! これが皆殺しだ! お前にこれが出来るのか!!」
部屋に遅れてはいってきた吉右衛門は義経を蹴り上げ部屋の中央へ飛ばした。
全裸の義経はそのままうつ伏せから置きあがろうと手をつくと、
右手が温かい。温かい物の中に手が入っている。
義経が右手を見ると手首の上まで血だまりがある。その血だまりの中の見えない掌は斬られたばかりの死体の内臓を掴んでいた。
義経の周りには女、子供の死体がいくつも折り重なるようにあったのだ。
咄嗟に手を引き、その場にうずくまって。
「ぁぁぁぁぁ」
声も無く震える。
更に蹴りを入れる吉右衛門。軽々と飛ばされ死体の山の中へと入りこむ義経。
「ぅぅぅぅぅぅぅぅ」
小刻みに震えている義経に
「皆殺しとはこう言うことだ。しっかり見ろ!! お前は何をしている。死体の間で震えているだけか? お前の吐いたセリフはこういう結果をもたらすものだ! お前はこの者達に死ぬ理由を説明する責任があるんだ!! 出来るのか!! 言った事には責任を持て!! その覚悟が無いなら今後一切同じセリフを吐くな!!」
部屋の外でそれを見ていた弁慶は吉右衛門が出てくるのを待って中へと進んで言った。
「御曹司。儂が弁慶だ。お前さんの子分として鎌田に雇われた。しかし、今は迷っている。お前さんが主たるものなのか。悪いが今のお前さんにはついていけん。今までお前さんが源氏の御曹司でなかったら、どれほどの者が付き従ったか考えたことがおありか? 他の者は知らんが儂は人物に惚れなければついて行かんよ。今のお前さんにはそれが無い。今まで人で苦労したろうにな。何にも学ばなかったのか? 今夜の事は忘れろ。他言無用だ。喋ればあそこの悪鬼が必ずお前さんを追い詰める。わかったな。直にここから我らは立ち去る。後は好きにすればいい。」
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