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第三合

第37話

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 小町先生から帰り際に手土産を頂戴した。
 ココナッツシュガーというものだ。
 通常の砂糖がサトウキビから作られているのに対し、これはココヤシの樹液だけで作られているらしい。
 つまり完全に天然のものだということ。
 人体に害がないという点だけならこれまで通り甜菜糖を使っていってもいいが、このココナッツシュガー、実は体に悪くないだけでなくいいこと尽くしなのだ。(受け売り)
 まず精製された砂糖と違って天然のものなのでミネラルが豊富。
 そう、悪名高い砂糖なのに健康にいいのだ。
 さらに人に必要な20種類のアミノ酸のうち16種類ものアミノ酸が含まれている。
 さらにさらにビタミンB群が大量に含まれているので安眠やストレス解消の助けとなる。
 さらにさらにさらに、イヌリンという食物繊維により便秘にも効く。
 そしていちばんの売りは何といっても低GI値であるということ。
 その数値、なんと35。
 60以上が高GI値なのでかなり低い。
 しかしこれだけだとぴんとこない俺に彼女は他のものと比較を見せてくれた。
 上白糖、109。
 黒砂糖、99。
 ハチミツ、85。
 メープルシロップ、73。
 その差は歴然だった。
 同じタイプのものなのにこれだけ差がある。
 要するに砂糖なのに血糖値が上がりにくく、健康にもいいということだ。
 だからいいこと尽くし。
 彼女曰く、ココナッツシュガーとはこの世でもっとも安心して食べられる砂糖だそうだ。
 こんなものがあったなんて世の中は本当に広い。
 とはいえカロリーと糖質量は通常の砂糖と変わらないので油断して食べ過ぎれば太るので注意とのこと。
 あと、1㎏で2500円くらいが相場なのでなかなか手が出せないかもとも言っていた。
 確かに高い。
 べらぼーに。
 調味料を自分で購入しているのでなおわかる。
 一般的な白砂糖は1㎏でだいたい200円くらいだったはずなので段違いだ。
 その差額の価値を見いだせるかどうかは各自の判断に委ねられる。
 ここまでくるとさすがに安いほうを選ぶのが賢いようにも思える。
 だからか小町先生のこんな言葉が印象的に残っている。


「食べるものはけちるな。いいものを使え。よく節約のために安いものを買っている人がいるが、そんなもの病気になったら治療代でパーだ」


 健康でいることがいちばんの節約になる。
 恐らくそういうことなのだろう。


 今日の夕飯はキャベツの千切りと、塩鮭と、鶏もも肉の照り焼きだ。
 キャベツの千切りは包丁は使わずスライサーというもので削るだけ。
 これ、力もいらずめっちゃ便利なのだが切れ味が良すぎるのでうっかり余所見をすると手を傷つけてしまうので注意がいる。
 塩鮭は生のものを買ってきて塩を振ってオーブントースターで焼くだけ。
 スーパーの惣菜には既に焼いた状態のものもあるが僅かに値段が高くなるので俺は生にしている。
 魚は生のままだと日持ちしないが焼くと数日持つので弁当のおかずにも利用できる。
 さてメインディッシュ。
 ここで早速ココナッツシュガーの登場だ。
 切り分けてある鶏もも肉をフライパンで狐色になるまで炒め、予め混ぜて用意しておいた調味料を円を描くように投入する。
 調味料の内訳は、砂糖醤油みりんそれぞれ大さじ2。酒は入れても入れなくてもよし。
 この配合量はやや濃いめだが覚えやすく間違いがないので気に入っている。
 あとは煮詰め、肉と絡めて完成。
 うん、今日も我ながら時短で美味しくシンプル。
 それではいただきます、とすぐ行きたいところだが、食物繊維であるキャベツから食べることをちゃんとぴりかに指導しないと。
 加えてもうひとつ。
 あとで気が重い提案をしないといけない。
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