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本編
1 目覚めたらそこは夢または異世界
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・・・ああ、あったかい。
まるでぬるめのお風呂にゆっくりつかっているような。
そんな気持ちよい温かさを感じて、わたしは、ふわふわとまどろんでいた。
会社いきたくないなあ、このままぬくぬくとしていたいなあ。
ぼんやりとそんなことを考える。
わたし、佐々木琴音はアラサーの会社員だ。
20人程度の小さな会社で総務として10年以上勤めている。
特に不満はないけど、毎日会社と家の往復で、休日もネットでひまつぶしするような生活で、このまま結婚もせずに年をとっていくのかと思うと、ちょっとこわい。
会社行っても、今日は確か伝票の入力作業だし・・・。
でも有給の無駄遣いは避けたいしなあ。
休むわけにもいかないけど、起きる気がしない。
というか、起きてはいるのだけど、まだ目は開けたくなくて。
あたたかさを満喫するため腕を動かそうとして手足の感覚がないことに気づいた。
金縛り?指先に神経を集中しようとした、その瞬間。
ぬるり、と、じんわりと熱を持った『なにか』が、わたしのなかに侵入した。
その熱は、うごめくように私のからだの隅々まで巡っていく。
きもちイイ、、。自分じゃないナニかが私を犯している感覚。
異物が入っているのにもかかわらず、快感がぞわりと私を侵食する。
いいようのない快感から逃れようと目を開けると、そこには黒い服を着たとんでもなく整った顔の男が私を見下ろしていた。
銀の髪。深い、ガーネットのような紅い瞳。男といっても、まだ少年といっていいくらいかもしれない。幼さが残った顔立ちだ。
彼はわたしが目を開けたのに気付くと、少し笑って、わたしの唇に自分のそれを重ねた。
「??」
だれだかわからない相手にキスされるような覚えはない。
こんな美形、一度見たらぜったい忘れないし、知らない人のはず。
なんだろう、夢だろうか。それにしても、きもちがいい。
おそらく女性にこういう行為をすることは慣れているんだろう。ちゅ、ちゅ、と軽いキスを何回か。その後、彼は私の上に馬乗りになるように乗り上げ、両方の手でわたしの顔を挟んだ。
おどろいて声を出そうと開いたわたしの口に舌を差し込み、そのまま、ぬるりと舌を絡めた。
「んん、、、ふ、、」
うん、夢にちがいない。
だってとても現実とは思えないシチュエーションだよ。
目が覚めると超美形が自分にべろちゅーしているなんて。
もうこれは夢だと断定したわたしは、このまま素敵な夢を堪能しようと絡めてきた舌におずおずと応えた。
ぴちゃ、ぴちゃ、と2人が発する音だけが響く。
(うわ、、、なんだこれ)
生暖かい舌が、ゆっくりとわたしの咥内を犯していく。
あたまの中の芯が焼き切れてしまうような気持ちで、無心に舌を絡めると、それに応えるように相手の舌が蠢く。
それと同時に、何かわからないけど『何か』がわたしの中に無理やり入ってきているのがわかった。
得体のしれないものが入っている気持ち悪さと、それを上回る快感。それが、よけいにきもちいい。
声もなく、聞こえるのはぴちゃぴちゃと水音のような唾液の絡まる音だけ。
部屋でひたすらディープなキスをしていると、しばらくして彼が行為をやめてわたしに話しかけた。
からかうような、笑顔と共に。
「ようこそ、異世界のオヒメサマ。自分の状況ってどこまで理解できているのか教えてもらえないかな?」
おお、さすが夢というべきか。
日本人の感覚ではとても見慣れない色合いの髪と目だが、話しているのは日本語だ。
周りをぐるりと見渡すと、高級ホテルのスイートルームもかくや、という広く豪華な部屋で、今わたしがいるベッドも大きく、ふかふかだ。天井も高く、全く見覚えがない。
「いや、自分の状況と言われても」
まっとうな会社員として働いていたわたしがいるようなところではない。
ましてや、夢の中のシチュエーションなんて、まったく覚えがない。
しかも、このヒト。いまさらっと異世界とかいったよね。
これは、あれか。いままでさんざん小説やらなんやらで聞くやつか。
まさか、小説でさんざん読み倒したキーワードが自分に降りかかるとは思わなかった。
夢は願望を表すというけど、現実逃避したいという気持ちが具現化したのかもしれない。
頭のなかでぐるぐると考えていると、突然、ちかちかと古い映像を再生したかのように、自分のものではない別の記憶が頭に浮かんだ。
それは、アナスタシアと呼ばれる少女の記憶だった。
大神官の娘として生まれ、稀有な美貌を持ちながらも王家に嫁ぐための魔力が足りずにいた少女。
大勢の男性を侍らせている姿、色とりどりのドレスや宝石に囲まれている姿は、いかにもな悪役令嬢ポジションだった。
場面が変わる。彼女は花嫁衣裳のようなドレスを着ていた。あれ、誰かと話している。
『異世界から魔力を持つ魂を取り込む儀式を行って、、、』
え。まさか召喚されたのがわたし??
何が起こっているのかわからなくて呆けていたわたしに、男はこう言って私の手を握った。
「君は、アナスタシアの魂をはじいて身体に入ってしまったようだよ。おもしろいよね。僕はルー・レイスティア、魔術師で、きっと君の味方だと思うよ。」
まるでぬるめのお風呂にゆっくりつかっているような。
そんな気持ちよい温かさを感じて、わたしは、ふわふわとまどろんでいた。
会社いきたくないなあ、このままぬくぬくとしていたいなあ。
ぼんやりとそんなことを考える。
わたし、佐々木琴音はアラサーの会社員だ。
20人程度の小さな会社で総務として10年以上勤めている。
特に不満はないけど、毎日会社と家の往復で、休日もネットでひまつぶしするような生活で、このまま結婚もせずに年をとっていくのかと思うと、ちょっとこわい。
会社行っても、今日は確か伝票の入力作業だし・・・。
でも有給の無駄遣いは避けたいしなあ。
休むわけにもいかないけど、起きる気がしない。
というか、起きてはいるのだけど、まだ目は開けたくなくて。
あたたかさを満喫するため腕を動かそうとして手足の感覚がないことに気づいた。
金縛り?指先に神経を集中しようとした、その瞬間。
ぬるり、と、じんわりと熱を持った『なにか』が、わたしのなかに侵入した。
その熱は、うごめくように私のからだの隅々まで巡っていく。
きもちイイ、、。自分じゃないナニかが私を犯している感覚。
異物が入っているのにもかかわらず、快感がぞわりと私を侵食する。
いいようのない快感から逃れようと目を開けると、そこには黒い服を着たとんでもなく整った顔の男が私を見下ろしていた。
銀の髪。深い、ガーネットのような紅い瞳。男といっても、まだ少年といっていいくらいかもしれない。幼さが残った顔立ちだ。
彼はわたしが目を開けたのに気付くと、少し笑って、わたしの唇に自分のそれを重ねた。
「??」
だれだかわからない相手にキスされるような覚えはない。
こんな美形、一度見たらぜったい忘れないし、知らない人のはず。
なんだろう、夢だろうか。それにしても、きもちがいい。
おそらく女性にこういう行為をすることは慣れているんだろう。ちゅ、ちゅ、と軽いキスを何回か。その後、彼は私の上に馬乗りになるように乗り上げ、両方の手でわたしの顔を挟んだ。
おどろいて声を出そうと開いたわたしの口に舌を差し込み、そのまま、ぬるりと舌を絡めた。
「んん、、、ふ、、」
うん、夢にちがいない。
だってとても現実とは思えないシチュエーションだよ。
目が覚めると超美形が自分にべろちゅーしているなんて。
もうこれは夢だと断定したわたしは、このまま素敵な夢を堪能しようと絡めてきた舌におずおずと応えた。
ぴちゃ、ぴちゃ、と2人が発する音だけが響く。
(うわ、、、なんだこれ)
生暖かい舌が、ゆっくりとわたしの咥内を犯していく。
あたまの中の芯が焼き切れてしまうような気持ちで、無心に舌を絡めると、それに応えるように相手の舌が蠢く。
それと同時に、何かわからないけど『何か』がわたしの中に無理やり入ってきているのがわかった。
得体のしれないものが入っている気持ち悪さと、それを上回る快感。それが、よけいにきもちいい。
声もなく、聞こえるのはぴちゃぴちゃと水音のような唾液の絡まる音だけ。
部屋でひたすらディープなキスをしていると、しばらくして彼が行為をやめてわたしに話しかけた。
からかうような、笑顔と共に。
「ようこそ、異世界のオヒメサマ。自分の状況ってどこまで理解できているのか教えてもらえないかな?」
おお、さすが夢というべきか。
日本人の感覚ではとても見慣れない色合いの髪と目だが、話しているのは日本語だ。
周りをぐるりと見渡すと、高級ホテルのスイートルームもかくや、という広く豪華な部屋で、今わたしがいるベッドも大きく、ふかふかだ。天井も高く、全く見覚えがない。
「いや、自分の状況と言われても」
まっとうな会社員として働いていたわたしがいるようなところではない。
ましてや、夢の中のシチュエーションなんて、まったく覚えがない。
しかも、このヒト。いまさらっと異世界とかいったよね。
これは、あれか。いままでさんざん小説やらなんやらで聞くやつか。
まさか、小説でさんざん読み倒したキーワードが自分に降りかかるとは思わなかった。
夢は願望を表すというけど、現実逃避したいという気持ちが具現化したのかもしれない。
頭のなかでぐるぐると考えていると、突然、ちかちかと古い映像を再生したかのように、自分のものではない別の記憶が頭に浮かんだ。
それは、アナスタシアと呼ばれる少女の記憶だった。
大神官の娘として生まれ、稀有な美貌を持ちながらも王家に嫁ぐための魔力が足りずにいた少女。
大勢の男性を侍らせている姿、色とりどりのドレスや宝石に囲まれている姿は、いかにもな悪役令嬢ポジションだった。
場面が変わる。彼女は花嫁衣裳のようなドレスを着ていた。あれ、誰かと話している。
『異世界から魔力を持つ魂を取り込む儀式を行って、、、』
え。まさか召喚されたのがわたし??
何が起こっているのかわからなくて呆けていたわたしに、男はこう言って私の手を握った。
「君は、アナスタシアの魂をはじいて身体に入ってしまったようだよ。おもしろいよね。僕はルー・レイスティア、魔術師で、きっと君の味方だと思うよ。」
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