不埒な魔術師がわたしに執着する件について~後ろ向きなわたしが異世界でみんなから溺愛されるお話

めるの

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本編

11 私はあなたの犬がいい3 【side セイ】

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「あぁ・・・あんっ」

甲高い嬌声が部屋に響く。私は革張りのソファに腰かけたまま、後ろから彼女に覆いかぶさるようにして身体を弄る。お互い服は着たままだ。

豊かな胸を執拗にまさぐり、その頂を指で弾くたびにナーシャは快感で身を震わせた。気持ちよさそうに啼く彼女は、ことさらに淫靡で美しい。

「ふふ、ナーシャはここが気持ちいいんですか?」

蕩けるような顔でナーシャの顔を覗き込む。身体を弄る手は止めないままなので、返ってくる答えは意味を持たない喘ぎ声ばかりだ。

(もっと、もっと、気持ちよくなって)

そう思いながら、華奢な指をしゃぶり、舌で舐る。

犬としての生活は、想像以上に素晴らしかった。特別な魔道具を使って互いの元へ転移できるようになったので、仕事以外の時間は彼女のもとへ足繁く通った。

ここでの私は名門貴族の息子でもなく、将来有望な王の側近でもない。よくできた人間を演じる必要はなかったし、情けない姿も見せられた。ご主人様(ナーシャ)の望みを叶えるためだけに過ごす、ただのペットだ。

「ご褒美をあげる。」

私の奉仕に満足すると、彼女は華奢なからだでぎゅっと抱きしめてくれる。背中に回してくれる手が愛しい。

私は彼女に溺れている。言いようもないほど。

時間が許す限り彼女を抱きしめ、彼女から抱きしめてもらう。それだけで、今まで得たことがなかったような安心感と満足感を得られた。奉仕と称してナーシャに触れるのは至福の時間だった。彼女の乱れた姿も、素の無防備な姿も、私の前でだけ見せる姿だと思うと快感でぞくぞくする。

アナスタシアの愛称であるナーシャという呼び名を許されたのは私だけだし、魅了の魔力を使う代償として彼女が快楽を求めることも、私だけが知る秘密だ。

日が暮れ、ほの暗い部屋で、明かりもつけずに2人睦みあう。彼女の白い肌は光を帯びて、光輝く女神のようだ。
人払いをした部屋には私とナーシャだけ。まるで世界に、ふたりきり。

ちゅくり、とナーシャの耳に舌を差し込んで舐めると、ナーシャは「んっ・・・」と甘い声を上げた。さらに耳朶に舌を這わせ快感を与える。使った魔力の代償としてはもう充分なはずだが、止められずに私は彼女を弄った。

王家に嫁ぐには純潔が求められる。そのため最後まで行為をすることはなかったが、それ以外のあらゆることをしている自負はある。ときおり私自身を彼女の中に穿ちたいという欲はくすぶったが、今の状態を続けられるのなら、それは些細なことだった。

***

テーブルの上ですっかり冷たくなった紅茶をひとくち口に含み、私は疲労感を吐き出すように溜息をついた。すでに日も暮れている。

(ようやく終わった。・・・早く彼女に会いたい)

私は手元の資料を片付け、早々に退出する支度をしていた。退屈だった会議の内容は既に頭から抜け落ち、頭の中はナーシャのことばかりだ。昨日会えなかっただけなのに何日も会っていないような気がする。

今日は彼女にどんなことを話そう、いつものように笑って頭を撫でてくれるだろうか。考えると自然と頬が緩むが、表情には出さずに粛々と準備する。

ここは王宮の離れにある建物で、会議の出席者も気心が知れた者ばかりだ。公式の場ではないので堅苦しくない雰囲気で、若い男性が5人ほど残っていて世間話をしていた。男性ばかりがいることもあり、色事のようだ。ざわざわと皆が退出するなか、参加者の一人が私を娼館に誘った。

「新しく入った女がなかなか美しくてね。しかも酒も食事もうまい。気晴らしに皆で行こうという話になったんだが君も一緒にどうかい?」

「せっかくのお話ですが、あいにく今夜は先約がありまして。また別の機会に。」

口先ばかりの社交辞令で誘いを断り、皆を見送った。部屋にはアレクセイ陛下と私だけが残った。

上座に座っていた陛下が立ち上がり、こちらを見た。これから魔術師レイスティアの元に行くと言う陛下は、いつもとは違い、白いスタンドカラーのシャツに黒い細身のパンツという軽装だ。王宮内とはいえお付きの者もいないのは異例だが、陛下は魔力が強く大抵の不審者は対処できるため1人で行動することも多かった。

「最近なんか忙しそうだよね。夜会にもほとんど出てないし、セイに相手して貰えなくてお嬢様方が寂しがっていたよ。」

面白そうに尋ねる。最近は仕事が終わると付き合いも断ってさっさと退出してしまうので興味を持たれたようだ。ナーシャとの関係を知られるわけにはいかないので、適当にお茶を濁す。

「少々個人的な事情で立て込んでいまして、陛下にもご迷惑をおかけし申し訳ありません。」

「ふうん?ねえさっきのはどうせ方便なんでしょ。これからちょっと付き合わない?」

「申し訳ありません、急ぎの用事があるので失礼いたします。」

王の側近としてこの態度はどうかとも思うが、さすがに今日は勘弁してほしい。そっけなく答えて部屋を出た後、人目につかないような場所まで行ってから魔道具で彼女の元へ向かった。

少しでも早く彼女に会いたいと思って陛下を袖にしたことを伝えると、彼女は笑って私を屈ませると、よしよしと頭を撫でた。

「だめな犬ねえ。」

だめだと私を蔑む声は、なぜか、とてもやさしい。私は何も言わずにナーシャの顔を見上げ、口づけをねだる。

艶然と微笑んで彼女は私の唇に軽く口づけた。

(もっと、ほしい)

私は立ち上がって、彼女を抱きしめる。どうすればもっと彼女に愛してもらえるだろうと考えながら。

王の側近という立場を使えば、陛下にあなたを勧めることだってできる。見染められる舞台を整えることだって。そんな科白はわかっているけども口にはしない。

代わりに、小さな声で「私は貴方のお役に立てませんか?」と問うと、彼女はふるりと頭を振った。

「あなたはここでは役立たずの犬なんだから、ただ、私のそばにいてくれればいいの。」

返事をする代わりに、私はぺろりと彼女の首筋を舐める。

――ああ、きっと今、私は幸せだ。
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