22 / 133
本編
22 月に叢雲、花に風4 【side アレクセイ】
しおりを挟む
(なんか泥沼にハマった気分だ・・・)
まるで、そう。積んだゲームをひっくり返そうとしている気分。こちらを活かせばあちらが立たず、八方塞がり、四面楚歌。
女王の駒を、どこに配置すれば正解なのか、本気でわからない。
あれこれ考えていたら既に夕方になっていた。念のため言っておくけど、一応仕事はきちんとしてるよ。ただ、仕事をしていても、誰かと話していても、彼女のことが頭から離れないだけで。
我ながら、まるで、恋でもしているみたいだと思う。
とりあえずアナスタシア嬢は王宮内に滞在するよう手配した。ルーのあの執着っぷりでは、レイスティア邸に連れていかれたら二度と出てこれない気がしたからだ。
では、どうすれば丸く収まるのか。負けない戦いを心掛ける私にとって、ここが最大のポイントだ。
ルーに託さないとすれば、セイに引き渡すか。おそらくルー同様、彼女を監禁して一歩も外に出さないだろう。セイには何も知らせず当初予定どおりにイヴァンへ嫁がせるのが一番無難な気もするが、恋する相手が隣国でいとこの妻になっていると知ったら、ショックで立ち直れないかもしれない。
そもそも全ての問題の原因であるイヴァンはこのことを知っているんだろうか。魔術に長けたあの国であれば、解決の糸口がつかめる可能性がある。確か最高位の巫女はイヴァンの祖母なはずだ。何か知っているかもしれない。
(あとは、私が彼女を預かって管理するとか・・・、うーん)
ぐるぐると考えが頭をめぐるが、全く解決の糸口は見つからない。
ひとつ思いついた計画は、無謀かもしれないし、うまくいくかもしれないという危ういものだった。きっと真面目なセイなら反対しそうな、そんなやつ。でも選択肢としては最善。
頭を整理しなくちゃ。ぐしゃぐしゃと乱暴に頭をかきむしると、薄手のコートを着てイヴァンがいる隣国の宮殿まで一気に転移した。魔力量が落ちる時期なので遠距離の移動は魔力消費が激しいが、そんなことを言っている場合ではなかった。
「うーー、イヴァンのばかー。考えなしーー。」
「うわっ。事前に連絡はよこせと何度言えばわかるんだ。」
ちょうど仕事が終わったところだったのか、イヴァンは自室で着替えている途中で上半身裸だった。広い部屋のあちこちに公国の特産品である魔力入りの琥珀があしらわれている。いつも佩いている長剣は壁に立てかけられ、脱いだばかりと思われる上着とシャツはソファーの上だ。
侍女や侍従の手を借りずに自分でやっているのはさすが。ついでに鍛えているであろう腹筋が目に映る。男の私が見ても惚れ惚れする肉体だ。女性はこういうのが好きなんだろうなあと、ぼんやり考える。いやいや、のんきに現実逃避している場合じゃなかった。しっかししろ、私。
無茶な転移で、へろへろになりながらイヴァンの足に縋りつくように抱きついた。つられてイヴァンも床に座り込むと思ったら、鍛えているだけあってびくともしなかった。
この男はかけらも堪えないだろうとは思いながら、それでも精一杯恨みがましい目をして「なんで異世界から魔力召喚とかしちゃうわけ?おかげで大変なことになってるんだけど。」と責めると、イヴァンは「召喚??」と驚いたように青い瞳を瞬かせた。
この様子だと、イヴァンも知らなかったようだ。
「まさかアナスタシア嬢のことか?俺は召喚なんて命じてないぞ。先日急に『婚姻の打診はなかったことにしたい』とか言われて落ち込んでるのに。まさか、そんな。」
「じゃあ大神官の独断でやったんじゃないの? あれは確かに公国の術式のはずだし、製造責任で何とかしてほしいんだけど。」
「ううむ。宮廷内の誰かが忖度して手を出したのかもしれないな。確かにちょうど10年に1度の召喚時期にあたるが、他国の人間を巻き込むなんてことしていいと思っているのか。あれは確か魂が融合してしまうから分離はできないはずだよ・・・な。」
事態の深刻さに気付いたのかイヴァンの声が徐々に小さくなる。
イヴァンの反応を見て、もう元には戻らないと認識しているのだとわかってしまった。それは、つまり、セイが恋したアナスタシアは2度と戻らないということで。
事実を知ってセイが落胆する様は容易に想像できた。偽善だと言われようと、あの不器用な男が憔悴するさまは、これ以上見たくない。
(そのためには彼女は私の手の中にある必要があるんだ)
決心を口には出さずに無言で彼を見上げると、イヴァンは私をソファに座らせ、自分もひじ掛けの部分に腰かけると、気を取り直したように言った。
「心配するな。魂が混じってしまっても俺は全く構わないぞ。アナスタシア嬢さえ頷いてくれれば、妃としていつでも迎え入れる準備はある。」
「いや・・・それが事情が変わってしまったんだ。私が彼女を側妃にする。」
私の言葉を聞いて、きょとんと目を瞬かせた。そして、絶叫した。
「なにーーー??? どうしてそんなことになったんだ。もう議会の承認も下りているんだぞ!」
鬼のような形相で詰め寄らないでほしい。だいたい私のほうが言いたい。どうしてこんなことになったんだ!
まるで、そう。積んだゲームをひっくり返そうとしている気分。こちらを活かせばあちらが立たず、八方塞がり、四面楚歌。
女王の駒を、どこに配置すれば正解なのか、本気でわからない。
あれこれ考えていたら既に夕方になっていた。念のため言っておくけど、一応仕事はきちんとしてるよ。ただ、仕事をしていても、誰かと話していても、彼女のことが頭から離れないだけで。
我ながら、まるで、恋でもしているみたいだと思う。
とりあえずアナスタシア嬢は王宮内に滞在するよう手配した。ルーのあの執着っぷりでは、レイスティア邸に連れていかれたら二度と出てこれない気がしたからだ。
では、どうすれば丸く収まるのか。負けない戦いを心掛ける私にとって、ここが最大のポイントだ。
ルーに託さないとすれば、セイに引き渡すか。おそらくルー同様、彼女を監禁して一歩も外に出さないだろう。セイには何も知らせず当初予定どおりにイヴァンへ嫁がせるのが一番無難な気もするが、恋する相手が隣国でいとこの妻になっていると知ったら、ショックで立ち直れないかもしれない。
そもそも全ての問題の原因であるイヴァンはこのことを知っているんだろうか。魔術に長けたあの国であれば、解決の糸口がつかめる可能性がある。確か最高位の巫女はイヴァンの祖母なはずだ。何か知っているかもしれない。
(あとは、私が彼女を預かって管理するとか・・・、うーん)
ぐるぐると考えが頭をめぐるが、全く解決の糸口は見つからない。
ひとつ思いついた計画は、無謀かもしれないし、うまくいくかもしれないという危ういものだった。きっと真面目なセイなら反対しそうな、そんなやつ。でも選択肢としては最善。
頭を整理しなくちゃ。ぐしゃぐしゃと乱暴に頭をかきむしると、薄手のコートを着てイヴァンがいる隣国の宮殿まで一気に転移した。魔力量が落ちる時期なので遠距離の移動は魔力消費が激しいが、そんなことを言っている場合ではなかった。
「うーー、イヴァンのばかー。考えなしーー。」
「うわっ。事前に連絡はよこせと何度言えばわかるんだ。」
ちょうど仕事が終わったところだったのか、イヴァンは自室で着替えている途中で上半身裸だった。広い部屋のあちこちに公国の特産品である魔力入りの琥珀があしらわれている。いつも佩いている長剣は壁に立てかけられ、脱いだばかりと思われる上着とシャツはソファーの上だ。
侍女や侍従の手を借りずに自分でやっているのはさすが。ついでに鍛えているであろう腹筋が目に映る。男の私が見ても惚れ惚れする肉体だ。女性はこういうのが好きなんだろうなあと、ぼんやり考える。いやいや、のんきに現実逃避している場合じゃなかった。しっかししろ、私。
無茶な転移で、へろへろになりながらイヴァンの足に縋りつくように抱きついた。つられてイヴァンも床に座り込むと思ったら、鍛えているだけあってびくともしなかった。
この男はかけらも堪えないだろうとは思いながら、それでも精一杯恨みがましい目をして「なんで異世界から魔力召喚とかしちゃうわけ?おかげで大変なことになってるんだけど。」と責めると、イヴァンは「召喚??」と驚いたように青い瞳を瞬かせた。
この様子だと、イヴァンも知らなかったようだ。
「まさかアナスタシア嬢のことか?俺は召喚なんて命じてないぞ。先日急に『婚姻の打診はなかったことにしたい』とか言われて落ち込んでるのに。まさか、そんな。」
「じゃあ大神官の独断でやったんじゃないの? あれは確かに公国の術式のはずだし、製造責任で何とかしてほしいんだけど。」
「ううむ。宮廷内の誰かが忖度して手を出したのかもしれないな。確かにちょうど10年に1度の召喚時期にあたるが、他国の人間を巻き込むなんてことしていいと思っているのか。あれは確か魂が融合してしまうから分離はできないはずだよ・・・な。」
事態の深刻さに気付いたのかイヴァンの声が徐々に小さくなる。
イヴァンの反応を見て、もう元には戻らないと認識しているのだとわかってしまった。それは、つまり、セイが恋したアナスタシアは2度と戻らないということで。
事実を知ってセイが落胆する様は容易に想像できた。偽善だと言われようと、あの不器用な男が憔悴するさまは、これ以上見たくない。
(そのためには彼女は私の手の中にある必要があるんだ)
決心を口には出さずに無言で彼を見上げると、イヴァンは私をソファに座らせ、自分もひじ掛けの部分に腰かけると、気を取り直したように言った。
「心配するな。魂が混じってしまっても俺は全く構わないぞ。アナスタシア嬢さえ頷いてくれれば、妃としていつでも迎え入れる準備はある。」
「いや・・・それが事情が変わってしまったんだ。私が彼女を側妃にする。」
私の言葉を聞いて、きょとんと目を瞬かせた。そして、絶叫した。
「なにーーー??? どうしてそんなことになったんだ。もう議会の承認も下りているんだぞ!」
鬼のような形相で詰め寄らないでほしい。だいたい私のほうが言いたい。どうしてこんなことになったんだ!
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!
奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。
ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。
ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!
転生先は男女比50:1の世界!?
4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。
「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」
デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・
どうなる!?学園生活!!
わたしのヤンデレ吸引力が強すぎる件
こいなだ陽日
恋愛
病んだ男を引き寄せる凶相を持って生まれてしまったメーシャ。ある日、暴漢に襲われた彼女はアルと名乗る祭司の青年に助けられる。この事件と彼の言葉をきっかけにメーシャは祭司を目指した。そうして二年後、試験に合格した彼女は実家を離れ研修生活をはじめる。しかし、そこでも彼女はやはり病んだ麗しい青年たちに淫らに愛され、二人の恋人を持つことに……。しかも、そんな中でかつての恩人アルとも予想だにせぬ再会を果たして――!?
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる