50 / 133
本編
50 夜のお作法2 【閑話:2】
しおりを挟む
「その様子だと、あまり閨事には慣れていなさそうだね。ほんと期待を裏切らなくて何よりだ。」
聞き取れないくらいの小さな声でアレクセイ陛下が呟き、わたしの手を取った。そのまま、すり、とくすぐるように手の甲を撫でる。わたしは振り払うこともできず、なすがままにされた。
ただでさえ無駄に整った造作なのに、めまいがしそうなほどの色香を振りまくのはやめてほしい。ひねくれた性格を知っているわたしですら、ぐらぐらする。
「あのね、ハジメテの夜は私の言う通りにすればいいから心配しなくて大丈夫だよ。誰もがうらやむくらい最高に気持ちよくしてあげるからね。」
(そんなんで、うらやまれなくていい!)
「いや、、そこまでしなくてイイデス。」
内心の叫びは口にはだせないまま、彼特有の裏がありそうな発言にぎこちなく答える。一瞬嫌そうな顔をしてしまったけれど、こんな美形と一晩過ごすなんて考えるだけで心臓に悪いので大目に見てほしい。
なんて言えばいいんだろう、同じ美形でもルーとは180度違うのだ。簡単に言うと『傍にいて落ち着かない』。この一言に尽きる。キラキラ光るブロンドも宗教画から抜け出たかのような神々しい造作も、遠目に眺めている分にはうっとりするが、間近に見ると心がざわざわする。
さらに以前襲われかけたことも加味すると、相手に苦手意識を持ってしまうのは当然だと言えよう。
「ふふ、嫌そうな顔をするのが堪らないね。私の美しい妖精、口づけてもいい?」
わたしの態度に気づいた陛下は、わざと王子様めいたしぐさで向かい側からそっとわたしの手を取ると、そのまま手の甲に口づけた。指先までもが完璧に整えられており、ほのかにホワイトムスクのような香りがした。
そのまま視線を合わせてこちらをじいっと見つめるさまは掛け値なしで美しく、本気ではないとわかっていても恥ずかしさに血が上る。
(ほんっとーに、心臓に悪いからやめてほしい)
自分の顔面価値を正確に把握したうえで、わたしが色事が苦手なのをわかっててやるあたり確信犯で悪趣味だ。完璧な外見とはうらはらに、発言内容がそこはかとなくおかしいだろうと内心でつっこむ。
「へ、陛下は、なぜ今までお妃様を迎えなかったのですか?運命の出会いとかはなかったんですか?」
そのまま流されて変なコトをされやしないかという不安から、無理やり話を逸らす。動揺のあまりちょっと声が裏返ってしまった。
多少性格に難はありそうとはいえ、こんな優良物件なら国内外から候補が引く手あまただろうに。今回わたしは便宜的に側妃の待遇を与えてもらったが、今後のためにも独り身だった理由を聞いておいて損はないだろう。
アレクセイ陛下はたっぷり20秒くらい黙ったあと、「・・・どうしてだと思う?」と逆にわたしに答えを求めた。
「人妻に叶わぬ恋をしているとか?」
思いつきで答えると、それはロマンティックだね、と笑われた。
「神様に願掛けをしていて叶うまで独身を貫くとか。」
「今のところ願掛けはしていないねえ。」
「セイのことを密かに愛しているとか。」
「斬新な発想だね。残念だけど女性のほうが手触りが柔らかくて好きかな。」
むむむ、、他の答えが浮かばず唸っていると、「もう降参?」と面白そうに言われた。
悔しくて必死になって考えていると、陛下は冷めかけてしまった紅茶を一口飲んでから、ぽつりと口を開いた。
「私の父はね。30人以上の妃がいたんだ。」
それはすごいですね、と素直に関心する。オスマン帝国の後宮みたいなものかな。たったひとりの寵を求めて何人もの女性が伽を競うなんて。相手をする王様もすごいけど、全員を養える国の豊かさもすごい。
「巷で美しいと評判の娘がいれば半ば攫うようにして後宮に入れた。権力欲から娘を差し出す貴族もいたよ。父は女性を嬲るのが好きで強姦まがいで犯したりするのを楽しむような人だった。私は時々呼ばれて父が楽しむ姿を見せられたよ。」
「うわ。ちょっと引きますね。」
「でしょー?それが普通の反応だと思うよ。息子の私ですらそう思うんだから。」
「その姿を見ていたから、嫌悪感でお妃は娶らなかったんですね。」
ようやく答えに辿り着いたとばかりに話を振ると、苦笑しながら否定された。
「そうだったらよかったんだけどね。遺伝なのかわからないけれど嬲られる女性の姿にゾクゾクするんだよね。きっと私は父に似て狂ってる。だから血は残したくないし、妃も要らないんだ。その点君は、適当に楽しんでからセイに引き取ってもらえばいいからラクかと思って。」
「え?」
それは狂っているというより単にドSな性癖なだけでは、という言葉をかろうじて飲み込んだ。ちなみに後半の鬼畜発言は聞かなかったことにした。なんなんだ、適当に楽しんでからっていうのは。
「かわいそうに。初めての相手が私みたいな打算的な男で残念だったね。」
わざと軽薄そうな笑みを浮かべているが、瞳の奥には憐憫とも悔恨ともつかぬ複雑な感情の色が見え隠れしていた。
聞き取れないくらいの小さな声でアレクセイ陛下が呟き、わたしの手を取った。そのまま、すり、とくすぐるように手の甲を撫でる。わたしは振り払うこともできず、なすがままにされた。
ただでさえ無駄に整った造作なのに、めまいがしそうなほどの色香を振りまくのはやめてほしい。ひねくれた性格を知っているわたしですら、ぐらぐらする。
「あのね、ハジメテの夜は私の言う通りにすればいいから心配しなくて大丈夫だよ。誰もがうらやむくらい最高に気持ちよくしてあげるからね。」
(そんなんで、うらやまれなくていい!)
「いや、、そこまでしなくてイイデス。」
内心の叫びは口にはだせないまま、彼特有の裏がありそうな発言にぎこちなく答える。一瞬嫌そうな顔をしてしまったけれど、こんな美形と一晩過ごすなんて考えるだけで心臓に悪いので大目に見てほしい。
なんて言えばいいんだろう、同じ美形でもルーとは180度違うのだ。簡単に言うと『傍にいて落ち着かない』。この一言に尽きる。キラキラ光るブロンドも宗教画から抜け出たかのような神々しい造作も、遠目に眺めている分にはうっとりするが、間近に見ると心がざわざわする。
さらに以前襲われかけたことも加味すると、相手に苦手意識を持ってしまうのは当然だと言えよう。
「ふふ、嫌そうな顔をするのが堪らないね。私の美しい妖精、口づけてもいい?」
わたしの態度に気づいた陛下は、わざと王子様めいたしぐさで向かい側からそっとわたしの手を取ると、そのまま手の甲に口づけた。指先までもが完璧に整えられており、ほのかにホワイトムスクのような香りがした。
そのまま視線を合わせてこちらをじいっと見つめるさまは掛け値なしで美しく、本気ではないとわかっていても恥ずかしさに血が上る。
(ほんっとーに、心臓に悪いからやめてほしい)
自分の顔面価値を正確に把握したうえで、わたしが色事が苦手なのをわかっててやるあたり確信犯で悪趣味だ。完璧な外見とはうらはらに、発言内容がそこはかとなくおかしいだろうと内心でつっこむ。
「へ、陛下は、なぜ今までお妃様を迎えなかったのですか?運命の出会いとかはなかったんですか?」
そのまま流されて変なコトをされやしないかという不安から、無理やり話を逸らす。動揺のあまりちょっと声が裏返ってしまった。
多少性格に難はありそうとはいえ、こんな優良物件なら国内外から候補が引く手あまただろうに。今回わたしは便宜的に側妃の待遇を与えてもらったが、今後のためにも独り身だった理由を聞いておいて損はないだろう。
アレクセイ陛下はたっぷり20秒くらい黙ったあと、「・・・どうしてだと思う?」と逆にわたしに答えを求めた。
「人妻に叶わぬ恋をしているとか?」
思いつきで答えると、それはロマンティックだね、と笑われた。
「神様に願掛けをしていて叶うまで独身を貫くとか。」
「今のところ願掛けはしていないねえ。」
「セイのことを密かに愛しているとか。」
「斬新な発想だね。残念だけど女性のほうが手触りが柔らかくて好きかな。」
むむむ、、他の答えが浮かばず唸っていると、「もう降参?」と面白そうに言われた。
悔しくて必死になって考えていると、陛下は冷めかけてしまった紅茶を一口飲んでから、ぽつりと口を開いた。
「私の父はね。30人以上の妃がいたんだ。」
それはすごいですね、と素直に関心する。オスマン帝国の後宮みたいなものかな。たったひとりの寵を求めて何人もの女性が伽を競うなんて。相手をする王様もすごいけど、全員を養える国の豊かさもすごい。
「巷で美しいと評判の娘がいれば半ば攫うようにして後宮に入れた。権力欲から娘を差し出す貴族もいたよ。父は女性を嬲るのが好きで強姦まがいで犯したりするのを楽しむような人だった。私は時々呼ばれて父が楽しむ姿を見せられたよ。」
「うわ。ちょっと引きますね。」
「でしょー?それが普通の反応だと思うよ。息子の私ですらそう思うんだから。」
「その姿を見ていたから、嫌悪感でお妃は娶らなかったんですね。」
ようやく答えに辿り着いたとばかりに話を振ると、苦笑しながら否定された。
「そうだったらよかったんだけどね。遺伝なのかわからないけれど嬲られる女性の姿にゾクゾクするんだよね。きっと私は父に似て狂ってる。だから血は残したくないし、妃も要らないんだ。その点君は、適当に楽しんでからセイに引き取ってもらえばいいからラクかと思って。」
「え?」
それは狂っているというより単にドSな性癖なだけでは、という言葉をかろうじて飲み込んだ。ちなみに後半の鬼畜発言は聞かなかったことにした。なんなんだ、適当に楽しんでからっていうのは。
「かわいそうに。初めての相手が私みたいな打算的な男で残念だったね。」
わざと軽薄そうな笑みを浮かべているが、瞳の奥には憐憫とも悔恨ともつかぬ複雑な感情の色が見え隠れしていた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!
奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。
ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。
ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!
転生先は男女比50:1の世界!?
4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。
「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」
デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・
どうなる!?学園生活!!
わたしのヤンデレ吸引力が強すぎる件
こいなだ陽日
恋愛
病んだ男を引き寄せる凶相を持って生まれてしまったメーシャ。ある日、暴漢に襲われた彼女はアルと名乗る祭司の青年に助けられる。この事件と彼の言葉をきっかけにメーシャは祭司を目指した。そうして二年後、試験に合格した彼女は実家を離れ研修生活をはじめる。しかし、そこでも彼女はやはり病んだ麗しい青年たちに淫らに愛され、二人の恋人を持つことに……。しかも、そんな中でかつての恩人アルとも予想だにせぬ再会を果たして――!?
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる