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本編
57 空蝉(ウツセミ) 4
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もう一度、長い指がわたしの割れ目をするりと撫でた。眼鏡の奥で、深海の青い瞳が所在無げにゆらゆら揺れる。
彼の欲望に満ちた懇願に対して、無言で肯定する。セイは躊躇いながらも、わたしの両肩に触れてやさしく押し倒した。そのまま覆いかぶさるように上に乗る。
大きめのソファーだけどそれほど幅が広いわけではないので、身動きすると2人とも落ちてしまいそうだ。
快楽に潤んだ目で彼を見上げると、セイは一瞬息を止めて、ごくりと唾を飲み込んだ。
セイは慎重にわたしの夜着を捲り上げてからゆっくりと指を差し入れる。痛くはない。既に期待に濡れたそこは、熱を持った異物を待ちかねたように呑み込んだ。
「ひゃあっん、ああっ。」
くちゃ、くちゃ、という卑猥な音と甘い嬌声が響く。
ナカを抉るように指が掻きまわされる。溢れる。キモチイイ。もっと欲しい。
無意識に指を締め付けると、セイはうれしそうな顔をして長い指で執拗に内壁を擦って刺激した。
びしょびしょに塗れているのが自分でもわかった。
「ああっ・・・。」
「こんなに蜜に濡れて・・・溢れてしまいましたね。」
うっとりと目を細めながら、濡れてしまった指でむき出しになった自身の陰茎を撫でる。それを時折わたしの太ももに擦り付けた。
気持ちいいのか、「はあ・・・」という艶めかしいため息が漏れる。
変態じみた行為にもかかわらず、けだるげに声を上げる様は恐ろしいほどの色気だった。
(あれ・・・こんな人だったっけ?)
ほんの少しの違和感に眉を顰める。
いつも冷静な彼は、覚えている限りアナスタシアを気持ちよくさせることに専心して自ら乱れることはなかった。彼女が舐めろと言えば舐めるし、気持ちよくしてほしいと請われれば、達するまで奉仕するのが当然だと思っているように見えた。
今は、、、どうだろう。わたしが「舐めて」と言ったから舐めてくれて、「愛して」と言ったから愛してくれるのだろうか。それとも自分の意思で行動しているんだろうか。
与えられた快楽で飛びそうになる頭をなんとか宥めながら、彼の気持ちを推し量ろうとセイの顔を見た。不躾な視線に気づいた彼が苦笑する。
「・・・・たんです。」
小声で言われて聞き取れず、「はい?」と聞き返す。
「本当は、あなたをずっと汚したかった。陛下よりも先に貫いて、私だけのものにしてしまいたかったんです。」
セイは、悲しいのかおかしいのかわからないような表情でぎこちなく笑った。
「そうしたらあなたは傷物として王家には嫁げない。監禁して二度と人目に触れないように閉じ込めてしまおう。そんな醜い欲を持っていたんです。なのに計画を実行できないまま、あなたは私の元から逃げてしまった。」
ぱた、ぱた、と彼の目から溢れる涙がわたしの頬を濡らす。
「皮肉にも、すべて失った後に・・・あなたを抱ける機会を得るなんて。今更そんなことをしても元には戻らないのに。」
そう言うと、そっと唇を重ねた。聖女に許しを請うごとく、縋るように何度も、何度も。
触れた唇からはアルコールの味がした。
ごめん。わたしは聖女じゃないからあなたを救ってあげられないよ。
だけどそんな顔はしてほしくない。どうしたらいい?
(ねえ、アナスタシア。あなたは抜け殻だけ置いて、何が望みだったの?)
隣国まで探して追いかけてきてほしかったのか。自分のことを忘れないでいてほしかったのか。いずれにしても残された側はいつまでも前を向くことができず、いたたまれない。
不器用でやさしいこの人が、愛しくて、そしてどうしようもなく悲しい。
がまんできなくなって、彼の両頬に手を添えて口づけを止める。そのままわたしからキスをした。角度を変えながら唇を舐め、強引に舌を侵入させて彼の舌を捕まえた。
目を閉じて、ぬるりとした厚みのある舌を味わう。押し返すように動く舌に自分のそれを押し当ててつつく。
静かな部屋に、くちゅ、と音が響く。いやに大きな音に聞こえた。
我に返ったように、セイは驚きの目でこちらを見つめた。それに構わずわたしは唾液を流し込み、問答無用で責め立てる。何度かそれを繰り返してから、ようやく唇を離した。
はあ、と息を吐いて真っ直ぐにセイを見つめる。もう「彼女のふり」はしないと思っていたけど仕方がない。
「相変わらずだめな犬ね。この行為は『汚す』ではなく、『愛し合う』というのよ。」
「――え?」
驚愕の目でセイがわたしを見た。気にせずに言葉を続ける。
「セイ、愛している、愛しているわ。私は貴方には相応しくないから、だけど自分から言い出せなくて・・・だから逃げたの。こんな評判が悪い女ではなく、貴方には然るべき相手と幸せになってほしかったのよ。」
「ナーシャッ!なんでっ・・・!」
右手を伸ばして彼の黒髪に触れると、セイはぼろぼろと泣きながらわたしを見た。微笑んで「愛してるわ」ともう一度告げる。
(わかって。これがアナスタシアの本心)
アナスタシアが口にしなかった言葉を、代わりに口にした。彼女の気持ちは間違っていないはず。いなくなってしまった彼女のふりをしてセイを騙していると言えなくもないけれど、一か八かの賭けみたいなものだった。
だって、このままじゃ、いつまでも彼女の呪縛から逃れられない気がして。
彼の欲望に満ちた懇願に対して、無言で肯定する。セイは躊躇いながらも、わたしの両肩に触れてやさしく押し倒した。そのまま覆いかぶさるように上に乗る。
大きめのソファーだけどそれほど幅が広いわけではないので、身動きすると2人とも落ちてしまいそうだ。
快楽に潤んだ目で彼を見上げると、セイは一瞬息を止めて、ごくりと唾を飲み込んだ。
セイは慎重にわたしの夜着を捲り上げてからゆっくりと指を差し入れる。痛くはない。既に期待に濡れたそこは、熱を持った異物を待ちかねたように呑み込んだ。
「ひゃあっん、ああっ。」
くちゃ、くちゃ、という卑猥な音と甘い嬌声が響く。
ナカを抉るように指が掻きまわされる。溢れる。キモチイイ。もっと欲しい。
無意識に指を締め付けると、セイはうれしそうな顔をして長い指で執拗に内壁を擦って刺激した。
びしょびしょに塗れているのが自分でもわかった。
「ああっ・・・。」
「こんなに蜜に濡れて・・・溢れてしまいましたね。」
うっとりと目を細めながら、濡れてしまった指でむき出しになった自身の陰茎を撫でる。それを時折わたしの太ももに擦り付けた。
気持ちいいのか、「はあ・・・」という艶めかしいため息が漏れる。
変態じみた行為にもかかわらず、けだるげに声を上げる様は恐ろしいほどの色気だった。
(あれ・・・こんな人だったっけ?)
ほんの少しの違和感に眉を顰める。
いつも冷静な彼は、覚えている限りアナスタシアを気持ちよくさせることに専心して自ら乱れることはなかった。彼女が舐めろと言えば舐めるし、気持ちよくしてほしいと請われれば、達するまで奉仕するのが当然だと思っているように見えた。
今は、、、どうだろう。わたしが「舐めて」と言ったから舐めてくれて、「愛して」と言ったから愛してくれるのだろうか。それとも自分の意思で行動しているんだろうか。
与えられた快楽で飛びそうになる頭をなんとか宥めながら、彼の気持ちを推し量ろうとセイの顔を見た。不躾な視線に気づいた彼が苦笑する。
「・・・・たんです。」
小声で言われて聞き取れず、「はい?」と聞き返す。
「本当は、あなたをずっと汚したかった。陛下よりも先に貫いて、私だけのものにしてしまいたかったんです。」
セイは、悲しいのかおかしいのかわからないような表情でぎこちなく笑った。
「そうしたらあなたは傷物として王家には嫁げない。監禁して二度と人目に触れないように閉じ込めてしまおう。そんな醜い欲を持っていたんです。なのに計画を実行できないまま、あなたは私の元から逃げてしまった。」
ぱた、ぱた、と彼の目から溢れる涙がわたしの頬を濡らす。
「皮肉にも、すべて失った後に・・・あなたを抱ける機会を得るなんて。今更そんなことをしても元には戻らないのに。」
そう言うと、そっと唇を重ねた。聖女に許しを請うごとく、縋るように何度も、何度も。
触れた唇からはアルコールの味がした。
ごめん。わたしは聖女じゃないからあなたを救ってあげられないよ。
だけどそんな顔はしてほしくない。どうしたらいい?
(ねえ、アナスタシア。あなたは抜け殻だけ置いて、何が望みだったの?)
隣国まで探して追いかけてきてほしかったのか。自分のことを忘れないでいてほしかったのか。いずれにしても残された側はいつまでも前を向くことができず、いたたまれない。
不器用でやさしいこの人が、愛しくて、そしてどうしようもなく悲しい。
がまんできなくなって、彼の両頬に手を添えて口づけを止める。そのままわたしからキスをした。角度を変えながら唇を舐め、強引に舌を侵入させて彼の舌を捕まえた。
目を閉じて、ぬるりとした厚みのある舌を味わう。押し返すように動く舌に自分のそれを押し当ててつつく。
静かな部屋に、くちゅ、と音が響く。いやに大きな音に聞こえた。
我に返ったように、セイは驚きの目でこちらを見つめた。それに構わずわたしは唾液を流し込み、問答無用で責め立てる。何度かそれを繰り返してから、ようやく唇を離した。
はあ、と息を吐いて真っ直ぐにセイを見つめる。もう「彼女のふり」はしないと思っていたけど仕方がない。
「相変わらずだめな犬ね。この行為は『汚す』ではなく、『愛し合う』というのよ。」
「――え?」
驚愕の目でセイがわたしを見た。気にせずに言葉を続ける。
「セイ、愛している、愛しているわ。私は貴方には相応しくないから、だけど自分から言い出せなくて・・・だから逃げたの。こんな評判が悪い女ではなく、貴方には然るべき相手と幸せになってほしかったのよ。」
「ナーシャッ!なんでっ・・・!」
右手を伸ばして彼の黒髪に触れると、セイはぼろぼろと泣きながらわたしを見た。微笑んで「愛してるわ」ともう一度告げる。
(わかって。これがアナスタシアの本心)
アナスタシアが口にしなかった言葉を、代わりに口にした。彼女の気持ちは間違っていないはず。いなくなってしまった彼女のふりをしてセイを騙していると言えなくもないけれど、一か八かの賭けみたいなものだった。
だって、このままじゃ、いつまでも彼女の呪縛から逃れられない気がして。
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