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本編
64 戦闘準備は空色のドレスで1
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「ルー、『よし』。」
アレクが「待て」をしている犬に許可を与えるみたいに言うと、ルーが小走りにこちらへ近寄った。椅子ごとぎゅーっとわたしを抱きしめる。思った以上に力強い。
「シアって呼んでいいのは僕だけなのに!」
心底悔しそうな表情を浮かべてゆっくり顔を近づけると、ルーは座ったままのわたしにキスをした。突然の暴挙に拒絶する間もなかった。ぬるり、といつもみたいに舌が咥内をかき回す。
「ん、ふっ、ちょっ・・みんな見てっ!」
慌てて静止するものの、まったく聞いてくれる気配はない。
「だいじょーぶ、気のせいだから。見てない、みんな見てないよ。だから僕のことだけ見て、ね?」
(いや、セイもアレクもばっちり見てるっ)
反論したいが問答無用で唇を塞がれており、これ以上言葉を発することができない。
眼前にはルーのきれいな顔があるので確認はできないが、息を呑む気配と共に、張り詰めたような沈黙が部屋に満ちる。視線が痛い。
いつのまにか椅子にルーが座り、その上に跨るような姿勢で座らされていた。貪るようにキスをされ続け、ぬちゃ、ぬちゃと朝に似つかわしくない淫靡な音が響く。服の上から胸を揉まれ、かりりと先端を引っかかれる。
「んあっ・・・やあっ・・。」
漏れる声は既に意味をなしていない。朝っぱらからなんてことだ。
おそろしいことに、こんな異常な状況下においてもわたしはちゃんと気持ちよくなってしまっていた。皆に見られている恥ずかしさ以上に、とろとろと溶けそうなキスに興奮する。それに今のわたしの視界に入るのはルビーのような紅い瞳だけ。魔力を使われたようにからだじゅうの力が抜け、だらりと腕が垂れた。
互いの指をしっかりと絡め、ルーが舌の動きに合わせてぎゅっぎゅっと握る。とろりと快感が落ち、理性が崩壊する。この時点で拒絶する意思は霧消していた。
「かわいい、シア、もっと。」
ルーが耳元で囁く。
甘く濃厚なキスはしばらく続き、ルーが満足して解放してくれた頃には、わたしは息も絶え絶えだった。
「相変わらずルーは堪え性がないねえ。」
心底呆れたような、変な笑顔でアレクがつぶやいた。何故止めてくれないのかと憤りを感じる。ひどい。セイなんてショックのあまり微動だにしない。
「ちょっと我慢すれば、あとは好きにしていいって言ったのはアレクじゃんか。」
「まさか突然あんな暴挙に出るとは思わないでしょ。うーん、他人のディープキス現場を目撃したのは初めてだけど、ものすごくエロいねえ。私も人前でやってみたいなあ。」
のんきにコーヒーを飲みながら、欲をたたえた瞳でちらりとわたしを見た。ぶんぶんと全力で頭を振って拒絶の意を伝える。人前でキスとかどんな羞恥プレイか。今だって決して見せたくて見せたわけじゃないから。残念そうな顔をされても困る。
「・・・陛下。この恥知らずは即刻追い出してもいいものでしょうか?」
カップの柄が折れそうなほど強く握りしめたまま、固まっていたはずのセイが地を這うような低い声で言った。
*****
3日間はあっという間だった。入り代わり立ち代わり、見たこともない人がやってきてはドレスの採寸やら装飾品の手配やら当日の希望やらを確認していく。正直よくわからないので「陛下のご意向に沿うようお願いします」と当たり障りなく答えて丸投げした。まあ専門家に任せたほうがいいだろうというのもある。
ドレスの試着時には、アレク付き侍女のマルガレーテさんまで心配して様子を見に来てくれた。お披露目っていっても顔を見せるくらいでは?と思っていたのだが、思っているよりも重要なイベントのようだ。
「マルガレーテさん、わざわざありがとうございます。」
「いよいよ今夜ですね。姫様も緊張されているかと思いますが、陛下に全てお任せすれば万事大丈夫ですから。」
最後のチェックをしてメイドさんに指示を出しながら、満面の笑みで私を頭のてっぺんから足のつまさきまで眺めると、大きく頷いた。
「完璧ですわ。当日は陛下が最後の仕上げをしてくださいます。・・・ようやくこの日がくるなんて、私もこれで一安心です。」
「え?」
マルガレーテさんにとって、今夜はとても大事みたいだ。まさかアレクの誕生日で何かあるとか、大きな発表があるとか、そういうのだろうか。
正直に聞いていいのか迷ったあげく、結局何も質問できなかった。
アレクが「待て」をしている犬に許可を与えるみたいに言うと、ルーが小走りにこちらへ近寄った。椅子ごとぎゅーっとわたしを抱きしめる。思った以上に力強い。
「シアって呼んでいいのは僕だけなのに!」
心底悔しそうな表情を浮かべてゆっくり顔を近づけると、ルーは座ったままのわたしにキスをした。突然の暴挙に拒絶する間もなかった。ぬるり、といつもみたいに舌が咥内をかき回す。
「ん、ふっ、ちょっ・・みんな見てっ!」
慌てて静止するものの、まったく聞いてくれる気配はない。
「だいじょーぶ、気のせいだから。見てない、みんな見てないよ。だから僕のことだけ見て、ね?」
(いや、セイもアレクもばっちり見てるっ)
反論したいが問答無用で唇を塞がれており、これ以上言葉を発することができない。
眼前にはルーのきれいな顔があるので確認はできないが、息を呑む気配と共に、張り詰めたような沈黙が部屋に満ちる。視線が痛い。
いつのまにか椅子にルーが座り、その上に跨るような姿勢で座らされていた。貪るようにキスをされ続け、ぬちゃ、ぬちゃと朝に似つかわしくない淫靡な音が響く。服の上から胸を揉まれ、かりりと先端を引っかかれる。
「んあっ・・・やあっ・・。」
漏れる声は既に意味をなしていない。朝っぱらからなんてことだ。
おそろしいことに、こんな異常な状況下においてもわたしはちゃんと気持ちよくなってしまっていた。皆に見られている恥ずかしさ以上に、とろとろと溶けそうなキスに興奮する。それに今のわたしの視界に入るのはルビーのような紅い瞳だけ。魔力を使われたようにからだじゅうの力が抜け、だらりと腕が垂れた。
互いの指をしっかりと絡め、ルーが舌の動きに合わせてぎゅっぎゅっと握る。とろりと快感が落ち、理性が崩壊する。この時点で拒絶する意思は霧消していた。
「かわいい、シア、もっと。」
ルーが耳元で囁く。
甘く濃厚なキスはしばらく続き、ルーが満足して解放してくれた頃には、わたしは息も絶え絶えだった。
「相変わらずルーは堪え性がないねえ。」
心底呆れたような、変な笑顔でアレクがつぶやいた。何故止めてくれないのかと憤りを感じる。ひどい。セイなんてショックのあまり微動だにしない。
「ちょっと我慢すれば、あとは好きにしていいって言ったのはアレクじゃんか。」
「まさか突然あんな暴挙に出るとは思わないでしょ。うーん、他人のディープキス現場を目撃したのは初めてだけど、ものすごくエロいねえ。私も人前でやってみたいなあ。」
のんきにコーヒーを飲みながら、欲をたたえた瞳でちらりとわたしを見た。ぶんぶんと全力で頭を振って拒絶の意を伝える。人前でキスとかどんな羞恥プレイか。今だって決して見せたくて見せたわけじゃないから。残念そうな顔をされても困る。
「・・・陛下。この恥知らずは即刻追い出してもいいものでしょうか?」
カップの柄が折れそうなほど強く握りしめたまま、固まっていたはずのセイが地を這うような低い声で言った。
*****
3日間はあっという間だった。入り代わり立ち代わり、見たこともない人がやってきてはドレスの採寸やら装飾品の手配やら当日の希望やらを確認していく。正直よくわからないので「陛下のご意向に沿うようお願いします」と当たり障りなく答えて丸投げした。まあ専門家に任せたほうがいいだろうというのもある。
ドレスの試着時には、アレク付き侍女のマルガレーテさんまで心配して様子を見に来てくれた。お披露目っていっても顔を見せるくらいでは?と思っていたのだが、思っているよりも重要なイベントのようだ。
「マルガレーテさん、わざわざありがとうございます。」
「いよいよ今夜ですね。姫様も緊張されているかと思いますが、陛下に全てお任せすれば万事大丈夫ですから。」
最後のチェックをしてメイドさんに指示を出しながら、満面の笑みで私を頭のてっぺんから足のつまさきまで眺めると、大きく頷いた。
「完璧ですわ。当日は陛下が最後の仕上げをしてくださいます。・・・ようやくこの日がくるなんて、私もこれで一安心です。」
「え?」
マルガレーテさんにとって、今夜はとても大事みたいだ。まさかアレクの誕生日で何かあるとか、大きな発表があるとか、そういうのだろうか。
正直に聞いていいのか迷ったあげく、結局何も質問できなかった。
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