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本編
65 戦闘準備は空色のドレスで2
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あれこれ準備に追われているうち、舞踏会当日になってしまった。
いくら本日の主役とはいえ、女性ひとりの準備にこんなに人手をかけていいものか、というくらいすさまじい。
「湯あみをしてお体を温めた後にじっくりたっぷり肌のお手入れをさせていただきますね。万全のコンディションにするため、申し訳ありませんが本日炭水化物はお召し上がりにならないようお願いいたします。午前中は美容に良いハーブティをご用意いたしますので、できるだけこまめに飲んでいただけますようお願いいたします。」
一気に説明されて、浴室へと連行される。お風呂は好きですけど、、、こんなスケジュールどおりに入るのは落ち着かない。でも貴族のなかには侍女にからだを洗ってもらう人も少なくないと聞くので、自分ひとりで入れさせてもらえるだけありがたいと思おう。
いい香りのする泡いっぱいのバスタブに漬かりながら、午後の予定を反芻する。と言ってもわたしが何かするわけではなく、売られる子牛のごとくあちこち連れていかれてお手入れやら準備やらをするだけだ。大変なのは周りのみなさんでわたしではない。
(ルー、来てくれないかなあ)
ルーとは、あの日以来顔を合わせていない。「魂の定着」という大義名分で毎日キスしていたが、さすがにもう不要だと判断されたようだ。
でもそれ以上にルーのキスはあったかくて、気持ちよくて、人前じゃなければ大好きだ。急にそれがなくなってしまうと、なんだかひどく寂しい。
(ルーに会いたいし、キスしたいなあ)
ぱしゃん、とお湯が跳ねる。
さすがに人には言えないけど、そんな不埒なことを考える。今朝から侍女さんたちに慌ただしくからだじゅうを磨かれて、忙しくはあるのだけれど、考える時間はいっぱいあるので余計なことを考えてしまう。
皮膚がふやけるほどお湯に漬かった後は、いよいよ着付けの準備だ。まずは肌を整えましょうと次なる部屋へ連行された。
「ここ最近、姫様はますますお美しくなられましたわ。陛下のご寵愛の賜物だと思うと私どもも誇らしい気持ちです。」
オイルマッサージをしながら、そんなことを言われる。女性除けとして雇用されている身としてはなんとも複雑な気分だが、あえて否定することもないので曖昧に頷いた。
髪も毛先をカットしてもらいトリートメントもしてもらったので驚くほどつやつやだ。それを高い位置で夜会巻きにして幾か所も飾りピンを差す。爪もキラキラした飾りが施された。至れり尽くせりで、まるでお姫様みたいな扱いだ(一応お妃様だけど)。
ドレスの着付けもようやく終わり準備万端で待っていると、コンコンとノックの音がしてアレクが迎えに来た。
「入るよー、準備はできた?」
軽い口調で入ってきたアレクは、わたしの姿を一目見るなり、見覚えがないものを目にしたかのような変な顔をした。いつもの嘘くさい愛想笑いすらない。
ちく、ちく、ちく。沈黙が痛い。
黙って待っていても、アレクからの次の言葉はなかった。
「え・・・・?おかしい?」
ついに不安が口をついて出た。アナスタシアの容姿であれば完璧だと思ったのに、中身がわたしだと変なのかもしれない。
アレクは無言で首を振った後、わたしの手を取ってくるりと一回転させ、ふうと小さく溜息をついた。
今夜の装いは、上身頃が空色で裾に向かって黒に近い濃紺へとグラデーションになった生地で仕立てられた、ほっそりしたシルエットのドレスだ。お披露目に相応しく、金糸銀糸にスパンコール、キラキラする魔石まで使ってふんだんに刺繍が施され非常に華やかだ。
ホルターネックで前から見るとそうでもないが、後ろ姿は背中からおしりの辺りまで大胆に露出している。恥ずかしい気もするが「これくらいで標準です!」と断言され、自分では見えないからいいかと妥協した。
メイクは、華やかなドレスに対して少し控えめにしてもらった。アナスタシアの外見でフルメイクだと破壊力がすごいのです。フェースパウダーにアイライン、それと瑞々しいベリーカラーのグロスを選んだ。気持ち上目遣いでアレクを見上げる。
「はは・・・びっくりした。」
乾いた笑いを落として独り言みたいにアレクがつぶやいた。
いくら本日の主役とはいえ、女性ひとりの準備にこんなに人手をかけていいものか、というくらいすさまじい。
「湯あみをしてお体を温めた後にじっくりたっぷり肌のお手入れをさせていただきますね。万全のコンディションにするため、申し訳ありませんが本日炭水化物はお召し上がりにならないようお願いいたします。午前中は美容に良いハーブティをご用意いたしますので、できるだけこまめに飲んでいただけますようお願いいたします。」
一気に説明されて、浴室へと連行される。お風呂は好きですけど、、、こんなスケジュールどおりに入るのは落ち着かない。でも貴族のなかには侍女にからだを洗ってもらう人も少なくないと聞くので、自分ひとりで入れさせてもらえるだけありがたいと思おう。
いい香りのする泡いっぱいのバスタブに漬かりながら、午後の予定を反芻する。と言ってもわたしが何かするわけではなく、売られる子牛のごとくあちこち連れていかれてお手入れやら準備やらをするだけだ。大変なのは周りのみなさんでわたしではない。
(ルー、来てくれないかなあ)
ルーとは、あの日以来顔を合わせていない。「魂の定着」という大義名分で毎日キスしていたが、さすがにもう不要だと判断されたようだ。
でもそれ以上にルーのキスはあったかくて、気持ちよくて、人前じゃなければ大好きだ。急にそれがなくなってしまうと、なんだかひどく寂しい。
(ルーに会いたいし、キスしたいなあ)
ぱしゃん、とお湯が跳ねる。
さすがに人には言えないけど、そんな不埒なことを考える。今朝から侍女さんたちに慌ただしくからだじゅうを磨かれて、忙しくはあるのだけれど、考える時間はいっぱいあるので余計なことを考えてしまう。
皮膚がふやけるほどお湯に漬かった後は、いよいよ着付けの準備だ。まずは肌を整えましょうと次なる部屋へ連行された。
「ここ最近、姫様はますますお美しくなられましたわ。陛下のご寵愛の賜物だと思うと私どもも誇らしい気持ちです。」
オイルマッサージをしながら、そんなことを言われる。女性除けとして雇用されている身としてはなんとも複雑な気分だが、あえて否定することもないので曖昧に頷いた。
髪も毛先をカットしてもらいトリートメントもしてもらったので驚くほどつやつやだ。それを高い位置で夜会巻きにして幾か所も飾りピンを差す。爪もキラキラした飾りが施された。至れり尽くせりで、まるでお姫様みたいな扱いだ(一応お妃様だけど)。
ドレスの着付けもようやく終わり準備万端で待っていると、コンコンとノックの音がしてアレクが迎えに来た。
「入るよー、準備はできた?」
軽い口調で入ってきたアレクは、わたしの姿を一目見るなり、見覚えがないものを目にしたかのような変な顔をした。いつもの嘘くさい愛想笑いすらない。
ちく、ちく、ちく。沈黙が痛い。
黙って待っていても、アレクからの次の言葉はなかった。
「え・・・・?おかしい?」
ついに不安が口をついて出た。アナスタシアの容姿であれば完璧だと思ったのに、中身がわたしだと変なのかもしれない。
アレクは無言で首を振った後、わたしの手を取ってくるりと一回転させ、ふうと小さく溜息をついた。
今夜の装いは、上身頃が空色で裾に向かって黒に近い濃紺へとグラデーションになった生地で仕立てられた、ほっそりしたシルエットのドレスだ。お披露目に相応しく、金糸銀糸にスパンコール、キラキラする魔石まで使ってふんだんに刺繍が施され非常に華やかだ。
ホルターネックで前から見るとそうでもないが、後ろ姿は背中からおしりの辺りまで大胆に露出している。恥ずかしい気もするが「これくらいで標準です!」と断言され、自分では見えないからいいかと妥協した。
メイクは、華やかなドレスに対して少し控えめにしてもらった。アナスタシアの外見でフルメイクだと破壊力がすごいのです。フェースパウダーにアイライン、それと瑞々しいベリーカラーのグロスを選んだ。気持ち上目遣いでアレクを見上げる。
「はは・・・びっくりした。」
乾いた笑いを落として独り言みたいにアレクがつぶやいた。
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