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赤坂家の日常
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幼稚園の頃から続けていたピアノを辞めた。高校1年生のときの転機だった。
自分の祖父、父は指揮者、母は世界的に有名なヴァイオリン奏者で、かつてはドイツにあるベルリンフィルハーモニーで演奏していた実績を持つ。つまりは、音楽一家である。
我が家は父と母は公演で忙しく、あまり家にいない。執事のクラウスが小さいころから常に自分たちの面倒を見てくれている。
先週から自分、父、祖母、母、爺や、妹の奏の全員を巻き込んでの大げんかが勃発、泥沼化していた。
「兄さん、本当にヴァイオリンをお辞めになるのですか?」
妹の奏は、少しうつむき加減で恐る恐る聞いてきた。彼女は普段からこのように控えめでおとなしい。そして家族に対してさえものすごく恥ずかしがりやである。
華奢だが背は低くなく、ちょうどモデル体型と言えるのではないだろうか。髪は黒髪ストレート、美人と自称する母に似てか、やはり目が大きく、端正な顔立ちである。クールな美人顔のほうがあどけないかわいらしい顔よりもたとえとしては当を得ているだろう。浴衣を着せればとても似合いそうだ。
「ああ、奏。ところでカチューシャかわいいな?似合ってるよ?」
「っつもう、はぐらかさんといて!!兄さんはいつも私がシャイなことに漬け込んでいじわるばっかり」
まずいな。長年の付き合いだからわかる。字面だけ見ればアクセをほめられて、可愛く赤面してデれている奏を想像してしまうかもしれない。しかし今の奏の表情は、言葉と裏腹に焦りや恥ずかしげの全くない、純粋な笑み。そして普段は絶対崩れないのに、自然と崩れる敬語。
つまり翻訳すると、「お前面倒くさいんだよ、そろそろキレるよ?」という意味である。
確かに今日も朝から同じことを何度か聞かれたがすべて適当にはぐらかしてしまった。不満がたまりにたまっているのだろうか。たしか女にはクラウスが前「女は定期的に不満になる」とかいってたがもしかしてそれかな。いやいや、とりあえずシスターが「ヤンデレのデレ抜きモード」に突入するのを防ぐために、今回ばかりは正直に答えるしかなさそうだ。
「兄さま、まさか今何か失礼なこと考えてらっしゃいませんでしたか?」
「いや、考えてない、よ。というより、やめるんだよ。やめるったらやめる。」
「だからどうして…せっかく幼稚園から続けてきたじゃないですか!!」
「いや、だからさ、ほかにやりたいことが見つかったのさ。」
「なんなんですか?それにもちろん高校の部活は吹奏楽部ですよね?」
「だー、もううるせーな、少林寺け」
ぼごっと頬骨が砕かれる感覚がした。
奏の愛のフィストが確実に顔面を捉えたのだ。
「うるさい?そんな口の利き方をするなんて、やっぱり兄さん、どこか変です。変だったら矯正しないといけませんね?」
すでに遅かったようだ。どうやらたまりにたまった不満が爆発したらしい。廊下を数メートル吹っ飛んで、たくさんの家具や置物を巻き込んでどさっと倒れた。ヒットポイントはもう残っていない。
自分の祖父、父は指揮者、母は世界的に有名なヴァイオリン奏者で、かつてはドイツにあるベルリンフィルハーモニーで演奏していた実績を持つ。つまりは、音楽一家である。
我が家は父と母は公演で忙しく、あまり家にいない。執事のクラウスが小さいころから常に自分たちの面倒を見てくれている。
先週から自分、父、祖母、母、爺や、妹の奏の全員を巻き込んでの大げんかが勃発、泥沼化していた。
「兄さん、本当にヴァイオリンをお辞めになるのですか?」
妹の奏は、少しうつむき加減で恐る恐る聞いてきた。彼女は普段からこのように控えめでおとなしい。そして家族に対してさえものすごく恥ずかしがりやである。
華奢だが背は低くなく、ちょうどモデル体型と言えるのではないだろうか。髪は黒髪ストレート、美人と自称する母に似てか、やはり目が大きく、端正な顔立ちである。クールな美人顔のほうがあどけないかわいらしい顔よりもたとえとしては当を得ているだろう。浴衣を着せればとても似合いそうだ。
「ああ、奏。ところでカチューシャかわいいな?似合ってるよ?」
「っつもう、はぐらかさんといて!!兄さんはいつも私がシャイなことに漬け込んでいじわるばっかり」
まずいな。長年の付き合いだからわかる。字面だけ見ればアクセをほめられて、可愛く赤面してデれている奏を想像してしまうかもしれない。しかし今の奏の表情は、言葉と裏腹に焦りや恥ずかしげの全くない、純粋な笑み。そして普段は絶対崩れないのに、自然と崩れる敬語。
つまり翻訳すると、「お前面倒くさいんだよ、そろそろキレるよ?」という意味である。
確かに今日も朝から同じことを何度か聞かれたがすべて適当にはぐらかしてしまった。不満がたまりにたまっているのだろうか。たしか女にはクラウスが前「女は定期的に不満になる」とかいってたがもしかしてそれかな。いやいや、とりあえずシスターが「ヤンデレのデレ抜きモード」に突入するのを防ぐために、今回ばかりは正直に答えるしかなさそうだ。
「兄さま、まさか今何か失礼なこと考えてらっしゃいませんでしたか?」
「いや、考えてない、よ。というより、やめるんだよ。やめるったらやめる。」
「だからどうして…せっかく幼稚園から続けてきたじゃないですか!!」
「いや、だからさ、ほかにやりたいことが見つかったのさ。」
「なんなんですか?それにもちろん高校の部活は吹奏楽部ですよね?」
「だー、もううるせーな、少林寺け」
ぼごっと頬骨が砕かれる感覚がした。
奏の愛のフィストが確実に顔面を捉えたのだ。
「うるさい?そんな口の利き方をするなんて、やっぱり兄さん、どこか変です。変だったら矯正しないといけませんね?」
すでに遅かったようだ。どうやらたまりにたまった不満が爆発したらしい。廊下を数メートル吹っ飛んで、たくさんの家具や置物を巻き込んでどさっと倒れた。ヒットポイントはもう残っていない。
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