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前倒しで、クリスマスの話
じんぐーべーじんぐべー♪
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「じんぐーべー、じんぐべー、じんぐーおーざうべー」
今日は12月24日!!
ここ、八鬼の部屋に、薫君とヒロト君、それに真十郎君が集まってくれた。
大きなこたつの上にはクリスマスっぽい飾り付けをされた様々なごちそうが並び、横ではクリスマスツリーのイルミネーションが点滅して、僕のテンションは上がりっぱなしだった!!!
「夏樹ちゃんって歌も下手だったのね」
「『も』!?」
「ジングルベルが神宮塀に聞こえる」
「うべーって何ですか? 歌が上手そうな顔してるのになんか意外です」
歌が上手そうな顔ってどんな顔だろう?
でも、そう言ってもらえる嬉しいな。頬が熱くなってしまう。
「何照れてるのよ。歌が上手そうな顔なんて褒め言葉じゃないわよ」
「英語の発音は綺麗なのにな。歌になったら大変なことになるなんてむしろ不思議だ」
大変なこと?
僕の歌の何が大変なんだろうか。
おかずをレンジで温めながら「おーうえっつふぁーい、みにっしゅうらーい」と続きを口ずさむ。
「ミニ襲来って何ですか?」
「あんたがこんなに機嫌良いの見るの始めてかもしれないわ」
コタツに足を突っ込んだまま薫君が感心した。
「クリスマスパーティーするの初めてなんだ! お父さんがクリスマス嫌いで、今まで一回もやったことなかったから! でも……、八鬼が居ないのが残念だよ……」
この部屋は飾りつけもご馳走までも揃っているのに、肝心の八鬼が居なかった。
実家に帰ってしまったのだ。
後二時間もすれば帰ってくるんだけど、正直、凄く、物凄く、ものすごーく寂しい。
「もうすぐ帰ってくるじゃないですか。そんなに落ち込まないでくださいよ」
「そうだね……。あ、そだ、このクラッカー、八鬼が帰ってきた時用に半分残してていいかな? 皆で迎えようよ!」
ヒロト君がクラッカーを20個も買ってきてくれたのだ!
「絶対嫌よ」
「俺も嫌だよ。八鬼をクラッカーで出迎えるなんてサムイ真似できねーわ」
「え」
薫君とヒロト君に冷たく断られてしまった……。
「オレはやりますからそんなに落ち込まないでくださいよ」
「ありがとう真十郎君!」
薫君が買ってきてくれたケンタッキーのチキンをお皿に盛り付けなおし、こたつの中央に置く。
「今日も、飯、食わないんですか?」
「果物を貰うよ。それと……、八鬼がカレーを作ってくれたんだ」
「え!? マジっすか。オレもちょっと貰っていいですか? 八鬼さんの手料理を食ったら強くなれそう」
おぉ! 確かに強くなれそう。
八鬼のご飯を春から食べさせてもらっている。
知らない間に強くなれたかも!
腕に力を入れて力瘤を作る。
「……」
真十郎君が僕の二の腕に触った。
ふにふに揉んで、首を振る。
「やっぱ、食うだけで強くなるなんてウマイ話は無いですよね」
どういう意味?
温まったカレーもコタツ置いて――!
「メリークリスマス!!」
バババババン!!!
真十郎君とヒロト君がお互いの顔に向かってクラッカーを鳴らしあう。
その数、合計八個。
音がまるで銃声みたいだった。
クラッカーを鳴らすのも初めてだ。
熱くなったりしないかな。
四つ一気に鳴らしても平気そうなんだから大丈夫だよね。
料理にかからないように気をつけながら、紐を引っ張る。
ぱん!
「わ」
掌に伝わる衝撃は想像よりずっと少なかった。
小さな紙吹雪とテープがくるくると宙を舞う。
クラッカーって楽しい……。
「気に入った? 残りは全部夏樹ちゃんにあげるよ」
「あ、ありがとう……! あ、そだ! 実は八鬼に内緒でケーキも作ったんだ!」
冷蔵庫を開いて、昼に焼いたホールケーキを取り出す。
「え!? マジで!?」
「ちょっと早く出しなさいよ!」
「ケーキ作れるなんてすげーっすね!」
三人は喜んでくれたものの。
冷蔵庫から出したケーキを見た途端、一気に顔が険しくなった。
「何これ。ケーキじゃないじゃない。剣山?」
「いや待てホウライ山かもしれねえ。仙人が住むって言う中国の山」
「鍾乳洞の中ににょきにょきしてる岩にも見えますね」
「ケーキだよ。八鬼に食べてもらいたかったけど、こんなことになっちゃったから……。良かったら食べてほしいな」
「お腹を壊したら病院代請求するわよ」
「ちゃんとレシピどおりに作ったから大丈夫だよ」
多分。
「うわ!? 中から血が!?」
「血じゃないよ! いちごソース!」
ナイフを入れて切り分けた途端、大げさに騒ぐヒロト君を睨む。
「夏樹さんって顔は超可愛いのに残りのスペックが全部残念ですよね」
「ひどい」
切り分けたケーキを小皿に乗せる。
「どうぞ、召し上がってください」
三人は恐る恐るケーキを口に入れ――――――。
今日は12月24日!!
ここ、八鬼の部屋に、薫君とヒロト君、それに真十郎君が集まってくれた。
大きなこたつの上にはクリスマスっぽい飾り付けをされた様々なごちそうが並び、横ではクリスマスツリーのイルミネーションが点滅して、僕のテンションは上がりっぱなしだった!!!
「夏樹ちゃんって歌も下手だったのね」
「『も』!?」
「ジングルベルが神宮塀に聞こえる」
「うべーって何ですか? 歌が上手そうな顔してるのになんか意外です」
歌が上手そうな顔ってどんな顔だろう?
でも、そう言ってもらえる嬉しいな。頬が熱くなってしまう。
「何照れてるのよ。歌が上手そうな顔なんて褒め言葉じゃないわよ」
「英語の発音は綺麗なのにな。歌になったら大変なことになるなんてむしろ不思議だ」
大変なこと?
僕の歌の何が大変なんだろうか。
おかずをレンジで温めながら「おーうえっつふぁーい、みにっしゅうらーい」と続きを口ずさむ。
「ミニ襲来って何ですか?」
「あんたがこんなに機嫌良いの見るの始めてかもしれないわ」
コタツに足を突っ込んだまま薫君が感心した。
「クリスマスパーティーするの初めてなんだ! お父さんがクリスマス嫌いで、今まで一回もやったことなかったから! でも……、八鬼が居ないのが残念だよ……」
この部屋は飾りつけもご馳走までも揃っているのに、肝心の八鬼が居なかった。
実家に帰ってしまったのだ。
後二時間もすれば帰ってくるんだけど、正直、凄く、物凄く、ものすごーく寂しい。
「もうすぐ帰ってくるじゃないですか。そんなに落ち込まないでくださいよ」
「そうだね……。あ、そだ、このクラッカー、八鬼が帰ってきた時用に半分残してていいかな? 皆で迎えようよ!」
ヒロト君がクラッカーを20個も買ってきてくれたのだ!
「絶対嫌よ」
「俺も嫌だよ。八鬼をクラッカーで出迎えるなんてサムイ真似できねーわ」
「え」
薫君とヒロト君に冷たく断られてしまった……。
「オレはやりますからそんなに落ち込まないでくださいよ」
「ありがとう真十郎君!」
薫君が買ってきてくれたケンタッキーのチキンをお皿に盛り付けなおし、こたつの中央に置く。
「今日も、飯、食わないんですか?」
「果物を貰うよ。それと……、八鬼がカレーを作ってくれたんだ」
「え!? マジっすか。オレもちょっと貰っていいですか? 八鬼さんの手料理を食ったら強くなれそう」
おぉ! 確かに強くなれそう。
八鬼のご飯を春から食べさせてもらっている。
知らない間に強くなれたかも!
腕に力を入れて力瘤を作る。
「……」
真十郎君が僕の二の腕に触った。
ふにふに揉んで、首を振る。
「やっぱ、食うだけで強くなるなんてウマイ話は無いですよね」
どういう意味?
温まったカレーもコタツ置いて――!
「メリークリスマス!!」
バババババン!!!
真十郎君とヒロト君がお互いの顔に向かってクラッカーを鳴らしあう。
その数、合計八個。
音がまるで銃声みたいだった。
クラッカーを鳴らすのも初めてだ。
熱くなったりしないかな。
四つ一気に鳴らしても平気そうなんだから大丈夫だよね。
料理にかからないように気をつけながら、紐を引っ張る。
ぱん!
「わ」
掌に伝わる衝撃は想像よりずっと少なかった。
小さな紙吹雪とテープがくるくると宙を舞う。
クラッカーって楽しい……。
「気に入った? 残りは全部夏樹ちゃんにあげるよ」
「あ、ありがとう……! あ、そだ! 実は八鬼に内緒でケーキも作ったんだ!」
冷蔵庫を開いて、昼に焼いたホールケーキを取り出す。
「え!? マジで!?」
「ちょっと早く出しなさいよ!」
「ケーキ作れるなんてすげーっすね!」
三人は喜んでくれたものの。
冷蔵庫から出したケーキを見た途端、一気に顔が険しくなった。
「何これ。ケーキじゃないじゃない。剣山?」
「いや待てホウライ山かもしれねえ。仙人が住むって言う中国の山」
「鍾乳洞の中ににょきにょきしてる岩にも見えますね」
「ケーキだよ。八鬼に食べてもらいたかったけど、こんなことになっちゃったから……。良かったら食べてほしいな」
「お腹を壊したら病院代請求するわよ」
「ちゃんとレシピどおりに作ったから大丈夫だよ」
多分。
「うわ!? 中から血が!?」
「血じゃないよ! いちごソース!」
ナイフを入れて切り分けた途端、大げさに騒ぐヒロト君を睨む。
「夏樹さんって顔は超可愛いのに残りのスペックが全部残念ですよね」
「ひどい」
切り分けたケーキを小皿に乗せる。
「どうぞ、召し上がってください」
三人は恐る恐るケーキを口に入れ――――――。
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