ギャルゲーの悪役に転生したから、主人公とヒロイン達をくっつけるよう頑張ります。

寺蔵

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ヒロインが来ない???

誰も来ない…

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 ……。
 ……。
 ……?

 あれ?

 遅いな……?

 モモちゃんだけじゃなく幼馴染ブルーの葵ちゃんも現れるはずなんだけど……??

 昔は地味だったのに、絶世の美少女に成長した葵ちゃん。ハルチカ君が顔を見ても思い出せなかったせいで、葵ちゃんが泣き出しちゃって『ひょっとして 葵? 忘れてて ごめん。すごい美人 なってたから わからなかった』とノートに書くのだ。

 そして美人って書いてもらったのがすごく嬉しくて、貰ったノートの切れ端を大事に保存している……なんて可愛いエピソードが二章で明らかにされる。

 葵ちゃんとモモちゃんがハルチカ君を挟んで揉めちゃって、結局、ハルチカ君はお調子者の脇役、茂部 太朗(もぶ たろう)君と、美少女二人と一緒に校内案内をしてもらう……。

 の、はずなのに。

 おかしいぞ?

「モモちゃんこねーな」
「どうしたんだろうね?」

 それどころか、モブ君さえ動こうとしない……?

 思わず遠く離れた席に座るモブ君を見るんだけど、モブ君は怯えたように視線を伏せてしまった。
 そういえば、モブ君ってクラスの中心みたいな存在だったはずなのに、入学式からずっと一人で静かに行動してたっけ……。ひょっとして、モブ君も別人になっちゃってるのかな?

 どうしよう。ハルチカ君が完全放置状態になってるぞ。

 誰一人話しかけようとしないし。
 転校生に対してこれはあんまりだろ。

 ストーリーとは違うけど話掛けていいかな?

「名前言って無かったよね。オレ、白神って言うんだ」

 ハルチカ君は驚いたようにこちらを見た。

「校内を案内するよ。トイレの場所とか知らないと困るだろうし」
 こくんと頷いて立ち上がりながら、また、スマホをこちらに向けてくる。
『保健室 教えて欲しい。包帯 変えたい から』
「うん」

 校舎は男子と女子で分かれているけど、職員室や保健室は当然一か所しかない。

 あれこれ説明しながら無駄にだだっ広い廊下を歩く。
 すれ違う生徒たちがハルチカ君を見るたびに、ぎょっと息を飲むのがいたたまれない。
 そんなにびっくりしなくてもいいのにな。

「ここが保健室。失礼しまーす」

 小声で声をかけて室内に入る。中には保険医の先生が居た。まだ23歳で美人の先生だ。ギャルゲーに出てくる先生だけあって、下着ギリギリのミニスカートと体のラインが出るシャツを着て、上に白衣を羽織っている。

「あら、転校生の……。具合が悪いの?」
「包帯を変えたいんです。ベッドを貸してください」

 無人のベッドにハルチカ君が座る。カーテンを引いてから、「ハルチカ君、手伝うよ」と声をかけると、
『!!?』息を飲む小さな音とともにぶぶぶぶぶっと、残像が残りそうなぐらいに派手に首を振られた。

『一人で 大丈夫』
「気にすんなって。一人じゃ腕の包帯巻きにくいだろ。休み時間10分しかないから次の授業に遅れちゃうぞ」
「…………」

 ハルチカ君はしばし躊躇っていたけど、意を決したように制服を脱いだ。
 包帯が緩んだ部分から痛々しい傷が露わになる。

「ひどい傷だな……」
『見苦しい ごめん』
「謝るなってば。ハルチカ君は何も悪くないのに」
「薬は必要?」

 保険医の先生が突然カーテンを開いた。

「きゃ……!」
「!!!!」

 先生がハルチカ君の火傷を見て悲鳴を上げた。
 同時にハルチカ君も息を飲む。
 慌てて制服を着ると保健室を飛び出してしまう。
 せ、先生! いきなりカーテン開けるのはマナー違反だし、傷見て悲鳴上げるのはひどすぎるぞ!

 慌ててオレも保健室を出て遠ざかる背中を追った。
「お、おい! 包帯は?」
『いい』
「でも、巻きなおさなきゃ擦れて痛いだろ。こっち」

 腕を引いて階段を上がる。
「6階はほとんど空き教室になってるんだ。そっちに行こう」
「!」

 通常で使っている教室は4階までで、5階には各部の部室がある。6階の空き教室は無人のはずだ。
 オレが予想した通り、6階はシンと静まり返って人ひとり居なかった。

「あ、この教室開いてる。超ラッキー」

 机が二つあるだけの教室のドアが施錠されていなかった。清掃の人がカギをかけ忘れちゃったのかな?
 ハルチカ君を椅子に座らせ、緩んだ包帯を変えていく。

「よし、これでいいな」

 ちゃんと巻けたのを確認してから火傷の無い背中を軽く叩く。
 炎上した車の中から人を助ける勇気のある男の体は、ガッチリと頼もしかった。

『授業 間に合わなかった さぼらせて ごめん』
 ハルチカ君がしょんぼりとうなだれた。

「いいって。いちいち落ち込むなよ」
「………………」

 じっとオレの顔を見てからスマホに指を走らせた。
 文字を打ち込んだ後もしばらく躊躇い、間をあけて画面を向けてくる。

『本当は 喋れる ただ 声が 潰れてる』

 え? そうなの? 原作ゲームで声出したこと無かったんだけど。

『文字じゃなく ちゃんと 礼 言いたい 喋って いい?』
 こんなの許可取る必要ないのに。

「喋れるんだったら喋ってくれよ。そっちのが絶対いい」
 ハルチカ君は、二度、三度、口を空回りさせた。

 そして、ようやく、声を出す。

「ありがとう。助かった……」

 確かに、ひどくしゃがれていた。
 だけど、深い、優しい声だった。

「女みたいなオレの声より、ずっといい。かっけーよ」

「…………!」

 ハルチカ君には幸せになってほしいなぁ。

「予言してやる。この後さ、いいことが待ってるから期待しとけ」
『いい コト?』
「すっごい可愛い子達と仲良くなれんの。しかも4人同時! すっげーだろ」
『友達 紹介して くれんの? 楽しみ しとく』
「オレに女友達なんかいるわけないだろうが」
『泣くなよ』

「とにかく、楽しみにしとけよ!」

 顔の上半分と左側が包帯とガーゼで隠れているので、ハルチカ君の顔は右下部分と唇の周辺ぐらいしか露わになっていない。だけど、困ったように笑ってくれた。
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