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第一部 未成熟な想い (小学生編)
第44話
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「本当に思った事を言ってもいい?」
幸一はうんざりした顔から、何かに気付いた様に悪戯っ子の表情になって尋ねた。
「うん。いいよ」
紙夜里は何を言われても平気なのか、平然と返す。
「それじゃあ。ゴホン!」
幸一は冷静に相手を観察する様な目をして、思わせ振りに軽く咳をしてから話し出した。
「僕が思うには、橋本さん、紙夜里ちゃん。どっちがいい?」
相当芝居がかった幸一の態度に、紙夜里は鼻で笑った。
「どちらでも」
「じゃあ紙夜里ちゃんで。僕が思うには紙夜里ちゃんの人見知りは、芝居じゃないかなと思う。小動物が外敵から身を守る様な。愛嬌とか、可愛らしさとか。そういうもので自分の事を学校で守っているんじゃないのかなと」
幸一のあまりに唐突な話しに、紙夜里は思わずポカンと口を開けてしまった。
「凄い飛躍…で、根拠は?」
紙夜里のその言葉に幸一は、待っていましたとばかりにニヤリと笑いながら、話を続けた。
「根拠は、図書室の外で待っている子。本当に人見知りの気の弱い子が、友達を外で待たせたりするだろうか? 冷静に話している紙夜里ちゃんを見ると、君は相当周りを見て、分析している様に見えるよ。大勢の中では兎も角、一対一の対話なら、紙夜里ちゃんは男子とも問題なく普段から話せるんじゃないかい」
「呆れた! 幸一君てホームズかポワロ? なかなかの推理ね。でもみっちゃんは、あ、外にいる友達だけど。みっちゃんは頼んでもいないのに、勝手に自分で待っているのよ。私がさせている訳じゃない」
残念ね。っとでも言いたそうに微笑みながら、紙夜里は言った。
「もっとも論理的な推理という点では、エラリー・クィーンと言って貰いたいな。それにしても、紙夜里ちゃんも結構本とか読むんだね。咄嗟にそういう名前が飛び出すなんて。ちょっと楽しかった。それから補足。みっちゃんが自分の意志で君の事を待っていると錯覚する程に、紙夜里ちゃんは一人で置いて置けない様に普段からみっちゃんに見せているんじゃないの? 僕には君は、とても頭の良い子の様に見えるよ」
幸一もまた、微笑みながらそう話した。
「なんか、相当酷い事言われている気がして来た」
幸一の言葉に紙夜里は頬杖を付きながら、困った様な表情をした。
「ごめん。何でも思った事を言って良いと言われたから」
紙夜里の表情に幸一はそう言って頭を紙夜里の方に向けて下げた。
「いいんだけどね。半分くらい当たっている様な感じだし。美紗ちゃんと一緒だった三年生の頃は、本当に人見知りが激しくて、唯一の友達だった美紗ちゃんとだけは切れない様に、美紗ちゃんが好きだった本を、私も一所懸命色々読んで、話せる様に努力したの。幸一君だって、美紗ちゃんがあんまり可愛くなかったら、そんなに優しくはしなかったでしょ? 美紗ちゃんは私なんかとは違って、本当に可愛くて、優しくて、それはもう焦がれの対象で。ほら、可愛かったり、綺麗だったりする人とは、やっぱり友達になりたくなるでしょ。それだけで」
幸一は自分が美紗子と仲の良い友達でいる事の理由に、可愛いという事が入っているという指摘を、否定する事は出来なかった。
映画鑑賞が趣味の幸一にとって、美しいものへの憧れや執着は、自分も含めて殆ど全ての人間の心の中にあるものだと思っていたからだ。
つづく
幸一はうんざりした顔から、何かに気付いた様に悪戯っ子の表情になって尋ねた。
「うん。いいよ」
紙夜里は何を言われても平気なのか、平然と返す。
「それじゃあ。ゴホン!」
幸一は冷静に相手を観察する様な目をして、思わせ振りに軽く咳をしてから話し出した。
「僕が思うには、橋本さん、紙夜里ちゃん。どっちがいい?」
相当芝居がかった幸一の態度に、紙夜里は鼻で笑った。
「どちらでも」
「じゃあ紙夜里ちゃんで。僕が思うには紙夜里ちゃんの人見知りは、芝居じゃないかなと思う。小動物が外敵から身を守る様な。愛嬌とか、可愛らしさとか。そういうもので自分の事を学校で守っているんじゃないのかなと」
幸一のあまりに唐突な話しに、紙夜里は思わずポカンと口を開けてしまった。
「凄い飛躍…で、根拠は?」
紙夜里のその言葉に幸一は、待っていましたとばかりにニヤリと笑いながら、話を続けた。
「根拠は、図書室の外で待っている子。本当に人見知りの気の弱い子が、友達を外で待たせたりするだろうか? 冷静に話している紙夜里ちゃんを見ると、君は相当周りを見て、分析している様に見えるよ。大勢の中では兎も角、一対一の対話なら、紙夜里ちゃんは男子とも問題なく普段から話せるんじゃないかい」
「呆れた! 幸一君てホームズかポワロ? なかなかの推理ね。でもみっちゃんは、あ、外にいる友達だけど。みっちゃんは頼んでもいないのに、勝手に自分で待っているのよ。私がさせている訳じゃない」
残念ね。っとでも言いたそうに微笑みながら、紙夜里は言った。
「もっとも論理的な推理という点では、エラリー・クィーンと言って貰いたいな。それにしても、紙夜里ちゃんも結構本とか読むんだね。咄嗟にそういう名前が飛び出すなんて。ちょっと楽しかった。それから補足。みっちゃんが自分の意志で君の事を待っていると錯覚する程に、紙夜里ちゃんは一人で置いて置けない様に普段からみっちゃんに見せているんじゃないの? 僕には君は、とても頭の良い子の様に見えるよ」
幸一もまた、微笑みながらそう話した。
「なんか、相当酷い事言われている気がして来た」
幸一の言葉に紙夜里は頬杖を付きながら、困った様な表情をした。
「ごめん。何でも思った事を言って良いと言われたから」
紙夜里の表情に幸一はそう言って頭を紙夜里の方に向けて下げた。
「いいんだけどね。半分くらい当たっている様な感じだし。美紗ちゃんと一緒だった三年生の頃は、本当に人見知りが激しくて、唯一の友達だった美紗ちゃんとだけは切れない様に、美紗ちゃんが好きだった本を、私も一所懸命色々読んで、話せる様に努力したの。幸一君だって、美紗ちゃんがあんまり可愛くなかったら、そんなに優しくはしなかったでしょ? 美紗ちゃんは私なんかとは違って、本当に可愛くて、優しくて、それはもう焦がれの対象で。ほら、可愛かったり、綺麗だったりする人とは、やっぱり友達になりたくなるでしょ。それだけで」
幸一は自分が美紗子と仲の良い友達でいる事の理由に、可愛いという事が入っているという指摘を、否定する事は出来なかった。
映画鑑賞が趣味の幸一にとって、美しいものへの憧れや執着は、自分も含めて殆ど全ての人間の心の中にあるものだと思っていたからだ。
つづく
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