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第二部 未成熟なセカイ (中学生編)
第4話 かおりちゃんグラフィティ その④
しおりを挟む(なんだそれりゃ。根本かおりからの挑戦状か?)
みっちゃんは彰人の話に一瞬今にも吐き出しそうな気分の悪い表情を見せると、天を仰ぎ気分を変えてから今度は素知らぬ顔で彰人の方を向いては口を開いた。
「んー、だだの同じ小学校出身ってだけだよ。クラスも同じになった事ないし、顔見知りってだけ。だから彼女が何故そんな事を言ったのかはちょっと分からない。なんでだろうね? あ、でももしかしたら、こういう事を何処かで止めて貰いたいのかな」
「止めて貰いたい? そんな筈はない。さっき話しただろう。根本さんが自分の配信映像を嬉しそうに俺に見せたのを。だから俺はてっきりお前と根本さんは仲が悪くて、お前に自分の凄さを見せつける為にお前の名前を出したのかと思っていたんだけど」
ギクッ
木村彰人がなかなかに鋭い事を言うので、思わずみっちゃんは体が反応して背筋をピシッと伸ばした。
(あははは、なんだこいつ。言い当ててるじゃないか。まいったな。これじゃあしょうがない。本当はもうこれ以上面倒事に巻き込まれるのは嫌なんだけど、根本さんが吃る様になった原因はやっぱり私にあるのかも知れないし、それに彼女の事だ。調子に乗るとまた何処までもエスカレートし出す可能性もある。今の話だと根本さんの配信は、露出が上がると視聴者数も比例して上がるみたいだし…最後にはスッポンポン配信!)
「どうした急に頬を赤くして」
最後には根本の裸を想像していたみっちゃんは、彰人の言葉で慌てて我に返った。
「え? ああ、なんでもない。それよりその根本さんが使ってる配信アプリ、私にも教えてくれない。確かに木村君が言う様に大人が相手の配信だったら危ないかも知れないから、私も根本さんの配信をチェックする様にする。それで暫く様子を見て、それから彼女の言う様に拡散するかどうかは考えようよ」
しかしその意見には、彰人は少し不満そうな表情を見せた。
「でも、約束しちゃったんだよな」
「じゃあ木村君が見たような根本さんのパンツとか、それからもしかするともっとHな映像とか、そういうの学校の他の男子達にも見られてもいいの?」
「そ、それは! それに見えなかったし、配信映像ではパンツはギリギリ見えなかったし…」
「でも階段の所では見たんでしょ。根本さんが穿いているホカホカの生パンツ」
「お、お前ホントに女子か~! 良く言うな~そういう事」
流石に彰人はこのみっちゃんの言い様には驚きを隠せなかった。
しかしそんな事はお構いなしにみっちゃんは更に追及を続ける。
「女子だよ! てか今時の女子なんて集まればもっと凄い事言います~! 木村君の方こそ本当はパンツとか大好きな癖にちょっと隠そうとしたりしてむっつりなんじゃないの。で、兎に角その根本さんのパンツを君は他の男子にも見られてもいいの? 気にならないの? 嫌じゃないの?」
「パ、パンツとか好きじゃないし!」
みっちゃんの話に彰人は顔を真っ赤にすると、思わず大きな声で叫んだ。
そしてそれから小声で付け足す。
「でも、それはやっぱり嫌かも…」
この瞬間、みっちゃんの中で木村彰人が根本かおりを好きな事は確定した。
そしてそうなると事は簡単である。
みっちゃんだって伊達にここ数年水口と繋がっている訳ではない。
こういう部分は幾らか賢くなったのだ。
(つまり根本さんを餌にすれば木村君はたいていの事は言う事を聞くという事だな)
「じゃあさー、私も協力するから、やっぱり私の言う様に暫く様子を見ようよ。普通に話をしているだけの配信なら安心して他の人にも教えられるけど、変な事をしてる様なら逆にやめさせなくちゃいけないしね」
「変な事? さっき俺が言ったクルクル回ってスカートからパンツが見えそうだったって話みたいな」
「そうそう」
にこにこ笑いながらそう答えるみっちゃんに、彰人は少し訝し気な表情を見せた。
「なんかさ、やっぱりお前、根本さんと何か繋がりがあるんじゃねえ? 彼女の性格とか良く知っていそうじゃん。それにさっきの吃りの件も。根本さん、きっとみんなに隠していたんだろ。でもお前は知ってたし…」
全くもって彰人は勘が鋭い。
(これも恋の為せる技なのか?)
先程まで彰人を手玉にするくらい容易だと考えていたみっちゃんは、現実は水口程自分は上手くいかないと痛感すると、逃げるようにある事に気が付いた。
「あ、そう言えば木村君てさ、なんで私の事は『お前』って呼ぶの? 根本さんの事はちゃんと苗字で呼んでるのに、私の事はさっきからずっと『お前、お前』だよね。これって酷くない。木村君の事だって私はちゃんと『木村君』って呼んでるよね~」
「えっ? なんで今急にそんな事」
それには彰人も驚いた顔になった。
しかし気付いてしまってはムッとしたのか、みっちゃんの表情は険しい。
だから仕様がなく彰人は尋ねる。
「じゃあなんて呼べばいいのさ」
「ん~、そうだね~」
みっちゃん暫しの思案。
「じゃあみんなみたいにみっちゃんって呼んでよ。同じクラスなんだし。女子も男子も、私を呼ぶ時はみっちゃん」
「みっちゃんかぁ…」
これがみっちゃんに起こったゴールデンウィーク一週間前の出来事。
そしてやはり、中学になってもみっちゃんの名前は明かされなかったのである。
つづく
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