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第一章 帰ってきた幼馴染
唐突なキスと告白
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「どうしたの、真白? さっきから、なにか変だよ」
「……」
変って。こんな壁ドンみたいなことされたら変にもなっちゃうよ……。
もう、何も言えない。
こんな密室で至近距離で、そんな言葉をかけられたりしたら。目まいがしそう。
心臓がさっきから死にそうなほどドキドキしている。
その音が、青司くんに聞こえてしまうんじゃないかってくらい。
「さっきの質問だけど……真白だったら、どうしてた? 好きな人を忘れるために、他の人を好きになれる? あと……そういう誰かと、恋人になれる?」
なんで。どうして今そんなこと訊くの?
って言いたかったけどやはり声は出なかった。だって、青司くんのわたしを見つめる目がとても真剣で……吸い込まれそうだったから。
黄太郎とのこと。
それは、まだ言えない。
もし知られたらどうなってしまうんだろう。
嫌われる?
そう思ったら、体が小刻みに震えてきた。
「もし、真白もそうなら俺は……」
そう言いながら、青司くんがさらに近づいてくる。
え?
これって……。
キス、されようとしてる?
「青……」
しゃべろうとすると青司くんの唇に触れてしまいそうだったので、思わず息を、止めた。
ーーーーーー。
「……すいませーん」
どこかから、急に女性の声がした。
わたしたちはハッとなって体を離す。
たぶんキッチンの方だ。
「……ごめん、誰か来たみたいだ。ちょっと見てくる」
「う、うん……」
そう言って足早に青司くんは納戸を出て行った。
「た、助かった……」
ホッとして、わたしはその場にしゃがみこむ。床には埃が積もってたのでへたりこみはしなかったけど。
でも……。
青司くん今、わたしにキスしようとしてた? 嘘でしょ……。
わたしは自分の唇に手を当てる。
「だって、青司くんは……紫織さんが好きだったんじゃ?」
それとも今はもう何とも思ってないんだろうか。
結婚したって聞いたから、すぱっと諦められたのだろうか。うーん。わたしが勝手にそう思い込んでるだけかな? 紫織さんと青司くんの間には絶対、特別な何かがあったと思うけど……。
わからない。
でも、それより。わたしに青司くんがキスしようとした、その事実の方が問題だった。
「どうして……?」
なんで、わたしにさっきあんなことを訊いてきたんだろう。
好きだった人と違う人を好きに、さらに恋人になれるか、だなんて。
付き合ったことは……あるよ。
一週間だけだったけど。
でも、青司くんは? イギリスで、誰かと付き合った? だとしたら、その人は紫織さんより特別な人になった?
それなのにわたしにキスしようとしたなら。
それは……ちょっと軽薄すぎだよ。
ああ……わたしったら、何を考えてるんだろう。
そんな事実あるかもわからないのに。
わたしだって青司くんがいない間に黄太郎と付き合ってたのに。
青司くんが何を訊きたいのか、何をしたいのかがよくわからなくて、かなり混乱していた。
しばらく待っていたけれど、青司くんがなかなか戻ってこないので、そっとキッチンの方へ戻ってみた。
すると、そこには「紫織さん」がいた。
(えっ!?)
噂をすればなんとやら、だ。
なんてタイミングだろう。
というか……なんで? なんで紫織さんが今ここにいるの? 東京にいるんじゃ……。
わたしは物陰からそっと様子を伺った。
青司くんはこちらに背を向けていて、紫織さんは青司くんと向かい合うようにして話し合っている。
「そう、でしたか……。紫織さんにはたしか、もうお子さんがいらっしゃるんですよね?」
「そうなの。菫って言ってね、もう四歳になるわ。今は疲れて隣の家で寝てる。ずっと長い間タクシーに乗ってたから疲れたのね。こっちだとおばあちゃんが見ててくれるから、助かるわ。うちの両親はね、びっくりするくらい何もしてくれないのよ」
二人はちょうど玄関前のスペースで話をしている。
紫織さんはハーフアップの巻髪に薄いベージュのパンツスーツという出で立ちだった。ザ・できる女という感じだ。
大貫のおばあさんの話だと、たしか東京に引っ越して行った後、めったに来なくなっちゃったんじゃなかったっけ。
今は紫織さんの娘さんと一緒に帰郷してるみたいだけど……。でも今日は平日だ。おかしい。
旦那さんは?
紫織さんと……菫ちゃんだっけ? その二人でだけ、こっちに来てるの? どういうこと?
「でもほんと驚いたわ。おばあちゃんから連絡が来たと思ったら、あの青司くんが地元に帰ってきてるっていうんだもの。そういう嬉しいニュースでもなかったら、こっちに避難しようとは思わなかったわね……」
避難?
何から避難してきたんだろう。
「紫織さん。きっと旦那さん、心配してますよ。早く帰ってあげてください」
旦那さんが……心配?
ますますわけがわからない。
「いいのよ。私もあの人も、一回距離をとって頭を冷やさなきゃ。だからしばらくこっちにいるつもりよ。おばあちゃんさえ良ければ、だけど。仕事だって週に一回会社に行けばいいだけのノマドだし。ねえ、青司くん。そういえばここで喫茶店開くんだって? 良かったら私、何かお手伝いましょうか? 今、一応こういう仕事してるの」
紫織さんは満面の笑みで、名刺らしきものを青司くんに渡す。
「……」
紫織さんは夫婦げんかでもしたのだろうか。それでこっちに逃げてきたの?
大変だ……。
わたしはいろんな意味で危機を感じた。
「デザイン会社に、お勤めなんですか」
「そう。WEBデザインから印刷物、それから企業のゆるキャラと多方面にやってるわ。広告とか宣伝も引き受けてる」
「そうですか……。うちの店の宣伝は、まだちょっとわからないですけど、でももし頼むことがあったらお願いします」
「そう? こんな人口の少ない町でも、一応開店日くらいは周知させておいた方がいいと思うわよ。最初が肝心なんだから」
「はあ……」
「あ、そうそう。話は変わるけど、明日うちの菫をここに連れてきてもいい?」
「へっ?」
「ここが昔、お母さんが通ってたお絵かき教室なのよって、教えてあげたいの。あの子最近、絵を描くのが好きになってきてね。やっぱり血かしら。話の流れでここを見せてあげる、ってことになったのよ。でも、タクシーでこっちに来るまでに寝ちゃったから明日来たいなって」
「ええと……」
「ほんと? いいの? じゃあ明日よろしくね。バイバイ!」
そう言って、バタンと玄関扉が閉められた。
なんだか嵐が通過していったようだった。
紫織さんて、あんな人だったかなぁ……? 学生のころはもっとおっとりしていた気がするけど。結婚して子どもを産んだら、あんな風に変わっちゃうんだろうか。
青司くんもかなり面食らってるようだった。
ぼうっと突っ立ったまま、扉の外を見つめつづけている。
でもすぐにハッとなって、わたしがいる方に振り返った。
「ま、真白……!」
本棚の陰に隠れていたわたしに気付いて、青司くんが声をあげる。
わたしは気まずい気持ちのまま姿を現した。
「あ。ご、ごめん……。その、ちょっと立ち聞きしちゃった。さっきの紫織さん、だよね? 何、明日来るの?」
「うん。そうみたい」
「旦那さんと……ケンカでもしたのかな? それでこっちに……?」
「うん。そうみたい」
「そう……」
そこでわたしたちの会話は途切れる。
でも、青司くんはすぐにまたこっちに近づいてきた。
「えっ、えっ?」
距離の詰め方が急だ。
どうしたんだろうと驚いている間に、ぎゅっと抱きしめられる。
「へっ? んっ……!?」
突如、やわらかな感触が口に当たった。
これは……もしかして、今度こそキスをされてる?
ど、どうして。どうして。
パニックで何も考えることができない。
なんで?
なんで青司くんが急にこんな……。
「ん……」
思わず目をつぶる。
そして、なんだか泣きそうになってきた。
嬉しいのか、突然すぎることにショックを受けてるのか、よくわからない。
キッチンの奥の、薄暗い半廊下みたいな場所でわたしは青司くんと、初めてのキスをした。
しばらくして、そっと唇が離れていく。
「……ご、ごめん、真白」
「……」
青司くんが顔を離しながら言う。
でもまだ体は抱きしめられたままだった。
わたしは動揺が隠せずに言った。
「あ、あの……なんで? なんで突然、こんな……」
「それは……」
じっと、青司くんがあのいつも眠そうな目で見つめてくる。
ドキドキして死にそうだったけど、わたしは思っていたことを言葉にした。
「青司くん。青司くんは……紫織さんが好きだったんじゃないの?」
「え……?」
わたしはついにこらえきれなくなって、涙を流した。
「だって……そうでしょ? 昔から青司くんは紫織さんを見てきた。それは、わたしがずっと側で青司くんを見てたから知ってるよ。なのに、なんで? なんでわたしにこんな……」
「それは、違う」
「え?」
青司くんはわたしの両肩を掴んで、まっすぐな瞳で言った。
「紫織さんは、たしかに俺の憧れだった。俺より二つしか違わないのに、すごく才能があって。絵描きとしてもすごく尊敬していたよ。でも……それだけだ。俺がずっと、ずっと好きだったのは真白だ。ずっと昔から真白のことが……可愛いって……」
「え……」
好き?
可愛いってのも言った? いま。
「嘘」
「嘘じゃないよ。ごめん、真白の気持ちも考えずに。でも、再会してからどんどんどんどん真白が可愛く見えてきちゃって……さっきとか。今も。俺、耐えられなくて……」
そう言って、また抱きしめてくる。
わたしも抵抗すればいいのに、なんだかできなくてそのままだった。
でも、心は混乱しきっていて、態度とは裏腹にネガティブな言葉が出てくる。
「嘘。嘘だ……。そんな、青司くんがわたしを、なんて……」
わたしは信じられなくてぶんぶんと首を振った。
この人は、本当に青司くんなんだろうか。
昔からわたしのことを可愛いって言うのは、いつもいつも冗談だと思ってた。でも、本当にそう思ってたってこと? でも……そんなのは、今は信じられない。
キスまでされたのに。
抱きしめられたのに。
それは、とっても嬉しいことだったはずなのに。
なぜだか違うと、心が拒否をしている。
「嘘じゃないよ。俺が……今まで黙ってたのは、お店の手伝いを断られたくなかったからだ。でも、本当に真白の事が……」
「そんな! そんなの……」
困る。
困るよ。
こういうとき、どう返事したらいいんだろう。
いろいろな考えが頭をよぎる。
わたしは大好きな人からの告白を無条件で受け入れるべき、なのか?
そもそもこれは青司くんにとってプラスになることなのか?
いや、むしろ駄目なことなんじゃないか。
そうだ。「わたしなんか」が青司くんをひとり占めしちゃダメだ。彼は才能のある人で、もっといろいろなことができる人なんだから――。
桃花先生の気持ちが、少しわかった気がする。
そう、好きな人を支えられるだけの自信が力が、自分にないのだ。
仕事仲間としてならいい。幼馴染としてなら、友達なら、ご近所さんなら。何の心配もなく全力でお手伝いができる。
でも……恋人としてではまるっきり自信がない。
それどころか、開いても自分もダメにしてしまいそうな予感がある。
「嬉しい。でも……。怖いよ」
「怖い……?」
「うん。怖い」
見上げると、青司くんはその言葉に眉根を寄せていた。
わたしはきちんと説明した。
「また、無くしてしまったらって思うと……。今度こそなんにも、最初から全部、何もなかったみたいに無くなってしまったら……怖い。そうなったらわたし、もう生きていける自信がない!」
「そんな、そんなことはもう……しないよ」
「嘘」
「嘘じゃない」
「あのね。わたしずっと……青司くんのことが、好きだった。初めて会ったときから」
ああ、こんなふうに言いたくなんてなかったのに。
「会えなくなってからも何年も、ずっと……。わたしの中では、時が止まってた。昔のまま……。それが、ここ二・三日くらいで急に動き出して。この『今』は……嬉しいけど、幸せだけど、あり得ない奇跡なの」
「真白……」
わたしは、もうわたしの中の不安を洗いざらい青司くんにぶちまけることにした。
「これは、奇跡なんだよ。明日にはまた急に無くなってしまうかもしれない奇跡。だから、いまだにこの状況に慣れないの……。そんな中、さらにこんなこと言われたら、わたし……おかしくなる」
「うん、わかった。ごめん、急にこんなこと言って……」
「あ。いや、本当はすごく……すごく、嬉しかったんだよ? それだけは本当」
青司くんの申し訳なさそうな顔を見て、わたしはあわててフォローした。
だってこれは本心だ。
好きな人に好意を向けてもらえたのは「嬉しい」。
ただ、ありえないだけで。心が追いつかないだけで。
青司くんはちょっと驚いたようにわたしを見た。
「それ……本当? 本当にそうなの?」
「うん、本当だよ。本当に『嬉しい』。好きな人にそう言われて……。その、キスとかも。びっくりしたけど……『嬉しい』よ」
「そっか。真白がそう思ってくれたなら、良かっ――」
途中までそう言うと、突然、青司くんの顔がみるみるうちに赤くなっていった。
なんだかわたしの顔をじっと見たまま固まっている。
「いや……ちょっと待って。真白、やばい。やっぱ可愛すぎる……」
そう言うとスタスタと歩いて、キッチンの方にまた戻っていってしまった。
冷蔵庫から何かを取り出して、しきりに何かの作業をはじめる。
「せ、青司くん……? どうしたの?」
近くに行くと、青司くんは余ったフルーツタルトをケーキ用の白い箱に入れていた。そしてわたしを見るなり、またすぐにそっぽを向いて、箱だけこちらに渡してくる。
「……は、はい。これ」
「え?」
「だから、あの、またご家族で食べて」
「あ、うん……ありがとう」
わたしはおずおずとそれを受け取る。
「それから……別に、今すぐじゃなくていいから。その……俺に慣れたらもう一度、さっきの気持ち、俺の口から伝えるから。それからもう一回、考えてほしい」
青司くんはそれ以上何も言わず、顔を赤くさせたままでいた。
こういう青司くんは新鮮だ、と思う。
でもわたしも、あまり直視できなくてうつむいていた。
「えっと……うん。あの、わたし、明日バイトが休みだから。その……また朝から来るね……」
「うん。わかった」
なんだかものすごくぎこちない会話だったけど、これでいい、と思った。
わたしは青司くんの優しさに救われた。
たしかに青司くんは急にあんなことしてきたけど、ちゃんとわたしの話を聞いて、わたしの気持ちに合わせてくれた。
俺に慣れたら、って……。
なんだか変な言い回しだったけど。
とりあえず、わたしは一旦帰ることにした。
これ以上一緒にいたら、本当におかしくなりそうだ。どういう顔をして青司くんを見ていたらいいかわからない。
でもそれは、たぶん明日来ても同じことだろうなと思った。
「それじゃあ、また明日」
「うん……」
わたしは玄関の外に出る。
後ろからすぐ青司くんがついてきて、開けた戸を手で押さえられた。
そのしぐさが男っぽくて、ついドキッとする。
「ん?」
「あ、いや……なんでもない……!」
首をかしげられたけど、わたしは素知らぬふりをして、店の前に停めていた自転車に乗った。
あたりはもうすっかり日が暮れていた。
別れの挨拶はもう済ませたので、目だけで青司くんに挨拶する。
視線が合ったとき、強くまた引き寄せられたような気がした。
それは、ちょうど青司くんも同じだったようで。
すぐにお互い視線をそらす。
どきどきがまた止まらなくなる。
わたしは急いで家に帰ることにした。
わたしは……その時気が付いていなかった。
そんなわたしたちの様子を、見ていた人がいたことに。
「……」
変って。こんな壁ドンみたいなことされたら変にもなっちゃうよ……。
もう、何も言えない。
こんな密室で至近距離で、そんな言葉をかけられたりしたら。目まいがしそう。
心臓がさっきから死にそうなほどドキドキしている。
その音が、青司くんに聞こえてしまうんじゃないかってくらい。
「さっきの質問だけど……真白だったら、どうしてた? 好きな人を忘れるために、他の人を好きになれる? あと……そういう誰かと、恋人になれる?」
なんで。どうして今そんなこと訊くの?
って言いたかったけどやはり声は出なかった。だって、青司くんのわたしを見つめる目がとても真剣で……吸い込まれそうだったから。
黄太郎とのこと。
それは、まだ言えない。
もし知られたらどうなってしまうんだろう。
嫌われる?
そう思ったら、体が小刻みに震えてきた。
「もし、真白もそうなら俺は……」
そう言いながら、青司くんがさらに近づいてくる。
え?
これって……。
キス、されようとしてる?
「青……」
しゃべろうとすると青司くんの唇に触れてしまいそうだったので、思わず息を、止めた。
ーーーーーー。
「……すいませーん」
どこかから、急に女性の声がした。
わたしたちはハッとなって体を離す。
たぶんキッチンの方だ。
「……ごめん、誰か来たみたいだ。ちょっと見てくる」
「う、うん……」
そう言って足早に青司くんは納戸を出て行った。
「た、助かった……」
ホッとして、わたしはその場にしゃがみこむ。床には埃が積もってたのでへたりこみはしなかったけど。
でも……。
青司くん今、わたしにキスしようとしてた? 嘘でしょ……。
わたしは自分の唇に手を当てる。
「だって、青司くんは……紫織さんが好きだったんじゃ?」
それとも今はもう何とも思ってないんだろうか。
結婚したって聞いたから、すぱっと諦められたのだろうか。うーん。わたしが勝手にそう思い込んでるだけかな? 紫織さんと青司くんの間には絶対、特別な何かがあったと思うけど……。
わからない。
でも、それより。わたしに青司くんがキスしようとした、その事実の方が問題だった。
「どうして……?」
なんで、わたしにさっきあんなことを訊いてきたんだろう。
好きだった人と違う人を好きに、さらに恋人になれるか、だなんて。
付き合ったことは……あるよ。
一週間だけだったけど。
でも、青司くんは? イギリスで、誰かと付き合った? だとしたら、その人は紫織さんより特別な人になった?
それなのにわたしにキスしようとしたなら。
それは……ちょっと軽薄すぎだよ。
ああ……わたしったら、何を考えてるんだろう。
そんな事実あるかもわからないのに。
わたしだって青司くんがいない間に黄太郎と付き合ってたのに。
青司くんが何を訊きたいのか、何をしたいのかがよくわからなくて、かなり混乱していた。
しばらく待っていたけれど、青司くんがなかなか戻ってこないので、そっとキッチンの方へ戻ってみた。
すると、そこには「紫織さん」がいた。
(えっ!?)
噂をすればなんとやら、だ。
なんてタイミングだろう。
というか……なんで? なんで紫織さんが今ここにいるの? 東京にいるんじゃ……。
わたしは物陰からそっと様子を伺った。
青司くんはこちらに背を向けていて、紫織さんは青司くんと向かい合うようにして話し合っている。
「そう、でしたか……。紫織さんにはたしか、もうお子さんがいらっしゃるんですよね?」
「そうなの。菫って言ってね、もう四歳になるわ。今は疲れて隣の家で寝てる。ずっと長い間タクシーに乗ってたから疲れたのね。こっちだとおばあちゃんが見ててくれるから、助かるわ。うちの両親はね、びっくりするくらい何もしてくれないのよ」
二人はちょうど玄関前のスペースで話をしている。
紫織さんはハーフアップの巻髪に薄いベージュのパンツスーツという出で立ちだった。ザ・できる女という感じだ。
大貫のおばあさんの話だと、たしか東京に引っ越して行った後、めったに来なくなっちゃったんじゃなかったっけ。
今は紫織さんの娘さんと一緒に帰郷してるみたいだけど……。でも今日は平日だ。おかしい。
旦那さんは?
紫織さんと……菫ちゃんだっけ? その二人でだけ、こっちに来てるの? どういうこと?
「でもほんと驚いたわ。おばあちゃんから連絡が来たと思ったら、あの青司くんが地元に帰ってきてるっていうんだもの。そういう嬉しいニュースでもなかったら、こっちに避難しようとは思わなかったわね……」
避難?
何から避難してきたんだろう。
「紫織さん。きっと旦那さん、心配してますよ。早く帰ってあげてください」
旦那さんが……心配?
ますますわけがわからない。
「いいのよ。私もあの人も、一回距離をとって頭を冷やさなきゃ。だからしばらくこっちにいるつもりよ。おばあちゃんさえ良ければ、だけど。仕事だって週に一回会社に行けばいいだけのノマドだし。ねえ、青司くん。そういえばここで喫茶店開くんだって? 良かったら私、何かお手伝いましょうか? 今、一応こういう仕事してるの」
紫織さんは満面の笑みで、名刺らしきものを青司くんに渡す。
「……」
紫織さんは夫婦げんかでもしたのだろうか。それでこっちに逃げてきたの?
大変だ……。
わたしはいろんな意味で危機を感じた。
「デザイン会社に、お勤めなんですか」
「そう。WEBデザインから印刷物、それから企業のゆるキャラと多方面にやってるわ。広告とか宣伝も引き受けてる」
「そうですか……。うちの店の宣伝は、まだちょっとわからないですけど、でももし頼むことがあったらお願いします」
「そう? こんな人口の少ない町でも、一応開店日くらいは周知させておいた方がいいと思うわよ。最初が肝心なんだから」
「はあ……」
「あ、そうそう。話は変わるけど、明日うちの菫をここに連れてきてもいい?」
「へっ?」
「ここが昔、お母さんが通ってたお絵かき教室なのよって、教えてあげたいの。あの子最近、絵を描くのが好きになってきてね。やっぱり血かしら。話の流れでここを見せてあげる、ってことになったのよ。でも、タクシーでこっちに来るまでに寝ちゃったから明日来たいなって」
「ええと……」
「ほんと? いいの? じゃあ明日よろしくね。バイバイ!」
そう言って、バタンと玄関扉が閉められた。
なんだか嵐が通過していったようだった。
紫織さんて、あんな人だったかなぁ……? 学生のころはもっとおっとりしていた気がするけど。結婚して子どもを産んだら、あんな風に変わっちゃうんだろうか。
青司くんもかなり面食らってるようだった。
ぼうっと突っ立ったまま、扉の外を見つめつづけている。
でもすぐにハッとなって、わたしがいる方に振り返った。
「ま、真白……!」
本棚の陰に隠れていたわたしに気付いて、青司くんが声をあげる。
わたしは気まずい気持ちのまま姿を現した。
「あ。ご、ごめん……。その、ちょっと立ち聞きしちゃった。さっきの紫織さん、だよね? 何、明日来るの?」
「うん。そうみたい」
「旦那さんと……ケンカでもしたのかな? それでこっちに……?」
「うん。そうみたい」
「そう……」
そこでわたしたちの会話は途切れる。
でも、青司くんはすぐにまたこっちに近づいてきた。
「えっ、えっ?」
距離の詰め方が急だ。
どうしたんだろうと驚いている間に、ぎゅっと抱きしめられる。
「へっ? んっ……!?」
突如、やわらかな感触が口に当たった。
これは……もしかして、今度こそキスをされてる?
ど、どうして。どうして。
パニックで何も考えることができない。
なんで?
なんで青司くんが急にこんな……。
「ん……」
思わず目をつぶる。
そして、なんだか泣きそうになってきた。
嬉しいのか、突然すぎることにショックを受けてるのか、よくわからない。
キッチンの奥の、薄暗い半廊下みたいな場所でわたしは青司くんと、初めてのキスをした。
しばらくして、そっと唇が離れていく。
「……ご、ごめん、真白」
「……」
青司くんが顔を離しながら言う。
でもまだ体は抱きしめられたままだった。
わたしは動揺が隠せずに言った。
「あ、あの……なんで? なんで突然、こんな……」
「それは……」
じっと、青司くんがあのいつも眠そうな目で見つめてくる。
ドキドキして死にそうだったけど、わたしは思っていたことを言葉にした。
「青司くん。青司くんは……紫織さんが好きだったんじゃないの?」
「え……?」
わたしはついにこらえきれなくなって、涙を流した。
「だって……そうでしょ? 昔から青司くんは紫織さんを見てきた。それは、わたしがずっと側で青司くんを見てたから知ってるよ。なのに、なんで? なんでわたしにこんな……」
「それは、違う」
「え?」
青司くんはわたしの両肩を掴んで、まっすぐな瞳で言った。
「紫織さんは、たしかに俺の憧れだった。俺より二つしか違わないのに、すごく才能があって。絵描きとしてもすごく尊敬していたよ。でも……それだけだ。俺がずっと、ずっと好きだったのは真白だ。ずっと昔から真白のことが……可愛いって……」
「え……」
好き?
可愛いってのも言った? いま。
「嘘」
「嘘じゃないよ。ごめん、真白の気持ちも考えずに。でも、再会してからどんどんどんどん真白が可愛く見えてきちゃって……さっきとか。今も。俺、耐えられなくて……」
そう言って、また抱きしめてくる。
わたしも抵抗すればいいのに、なんだかできなくてそのままだった。
でも、心は混乱しきっていて、態度とは裏腹にネガティブな言葉が出てくる。
「嘘。嘘だ……。そんな、青司くんがわたしを、なんて……」
わたしは信じられなくてぶんぶんと首を振った。
この人は、本当に青司くんなんだろうか。
昔からわたしのことを可愛いって言うのは、いつもいつも冗談だと思ってた。でも、本当にそう思ってたってこと? でも……そんなのは、今は信じられない。
キスまでされたのに。
抱きしめられたのに。
それは、とっても嬉しいことだったはずなのに。
なぜだか違うと、心が拒否をしている。
「嘘じゃないよ。俺が……今まで黙ってたのは、お店の手伝いを断られたくなかったからだ。でも、本当に真白の事が……」
「そんな! そんなの……」
困る。
困るよ。
こういうとき、どう返事したらいいんだろう。
いろいろな考えが頭をよぎる。
わたしは大好きな人からの告白を無条件で受け入れるべき、なのか?
そもそもこれは青司くんにとってプラスになることなのか?
いや、むしろ駄目なことなんじゃないか。
そうだ。「わたしなんか」が青司くんをひとり占めしちゃダメだ。彼は才能のある人で、もっといろいろなことができる人なんだから――。
桃花先生の気持ちが、少しわかった気がする。
そう、好きな人を支えられるだけの自信が力が、自分にないのだ。
仕事仲間としてならいい。幼馴染としてなら、友達なら、ご近所さんなら。何の心配もなく全力でお手伝いができる。
でも……恋人としてではまるっきり自信がない。
それどころか、開いても自分もダメにしてしまいそうな予感がある。
「嬉しい。でも……。怖いよ」
「怖い……?」
「うん。怖い」
見上げると、青司くんはその言葉に眉根を寄せていた。
わたしはきちんと説明した。
「また、無くしてしまったらって思うと……。今度こそなんにも、最初から全部、何もなかったみたいに無くなってしまったら……怖い。そうなったらわたし、もう生きていける自信がない!」
「そんな、そんなことはもう……しないよ」
「嘘」
「嘘じゃない」
「あのね。わたしずっと……青司くんのことが、好きだった。初めて会ったときから」
ああ、こんなふうに言いたくなんてなかったのに。
「会えなくなってからも何年も、ずっと……。わたしの中では、時が止まってた。昔のまま……。それが、ここ二・三日くらいで急に動き出して。この『今』は……嬉しいけど、幸せだけど、あり得ない奇跡なの」
「真白……」
わたしは、もうわたしの中の不安を洗いざらい青司くんにぶちまけることにした。
「これは、奇跡なんだよ。明日にはまた急に無くなってしまうかもしれない奇跡。だから、いまだにこの状況に慣れないの……。そんな中、さらにこんなこと言われたら、わたし……おかしくなる」
「うん、わかった。ごめん、急にこんなこと言って……」
「あ。いや、本当はすごく……すごく、嬉しかったんだよ? それだけは本当」
青司くんの申し訳なさそうな顔を見て、わたしはあわててフォローした。
だってこれは本心だ。
好きな人に好意を向けてもらえたのは「嬉しい」。
ただ、ありえないだけで。心が追いつかないだけで。
青司くんはちょっと驚いたようにわたしを見た。
「それ……本当? 本当にそうなの?」
「うん、本当だよ。本当に『嬉しい』。好きな人にそう言われて……。その、キスとかも。びっくりしたけど……『嬉しい』よ」
「そっか。真白がそう思ってくれたなら、良かっ――」
途中までそう言うと、突然、青司くんの顔がみるみるうちに赤くなっていった。
なんだかわたしの顔をじっと見たまま固まっている。
「いや……ちょっと待って。真白、やばい。やっぱ可愛すぎる……」
そう言うとスタスタと歩いて、キッチンの方にまた戻っていってしまった。
冷蔵庫から何かを取り出して、しきりに何かの作業をはじめる。
「せ、青司くん……? どうしたの?」
近くに行くと、青司くんは余ったフルーツタルトをケーキ用の白い箱に入れていた。そしてわたしを見るなり、またすぐにそっぽを向いて、箱だけこちらに渡してくる。
「……は、はい。これ」
「え?」
「だから、あの、またご家族で食べて」
「あ、うん……ありがとう」
わたしはおずおずとそれを受け取る。
「それから……別に、今すぐじゃなくていいから。その……俺に慣れたらもう一度、さっきの気持ち、俺の口から伝えるから。それからもう一回、考えてほしい」
青司くんはそれ以上何も言わず、顔を赤くさせたままでいた。
こういう青司くんは新鮮だ、と思う。
でもわたしも、あまり直視できなくてうつむいていた。
「えっと……うん。あの、わたし、明日バイトが休みだから。その……また朝から来るね……」
「うん。わかった」
なんだかものすごくぎこちない会話だったけど、これでいい、と思った。
わたしは青司くんの優しさに救われた。
たしかに青司くんは急にあんなことしてきたけど、ちゃんとわたしの話を聞いて、わたしの気持ちに合わせてくれた。
俺に慣れたら、って……。
なんだか変な言い回しだったけど。
とりあえず、わたしは一旦帰ることにした。
これ以上一緒にいたら、本当におかしくなりそうだ。どういう顔をして青司くんを見ていたらいいかわからない。
でもそれは、たぶん明日来ても同じことだろうなと思った。
「それじゃあ、また明日」
「うん……」
わたしは玄関の外に出る。
後ろからすぐ青司くんがついてきて、開けた戸を手で押さえられた。
そのしぐさが男っぽくて、ついドキッとする。
「ん?」
「あ、いや……なんでもない……!」
首をかしげられたけど、わたしは素知らぬふりをして、店の前に停めていた自転車に乗った。
あたりはもうすっかり日が暮れていた。
別れの挨拶はもう済ませたので、目だけで青司くんに挨拶する。
視線が合ったとき、強くまた引き寄せられたような気がした。
それは、ちょうど青司くんも同じだったようで。
すぐにお互い視線をそらす。
どきどきがまた止まらなくなる。
わたしは急いで家に帰ることにした。
わたしは……その時気が付いていなかった。
そんなわたしたちの様子を、見ていた人がいたことに。
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